:空中散布・松枯れにもどる

t30405#今年の無人航空機事故の一端が明らかに〜農薬散布事例7件#16-12
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【参考サイト】国土交通省:無人航空機の飛行ルールの頁にある「許可・承認を行った内容の公表」の項(H27年度、H28年度リストあり)
       ●無人航空機に係る事故等の一覧(国土交通省に報告のあったもの):2015年度2016年度

 記事t30303では、2015年度の無人航空機事故事例を農水省の報告から紹介しましたが、事故事例は1年以上前のもので、本年度のものはありませんでした。昨年12月の航空法の改定以後、国土交通省が無人航空機の飛行について、事故情報をどの程度把握しているか調べてみました。

★国交省の事例〜農薬散布事故は4件
 航空法を管轄する国土交通省へ報告のあった事故は、2016年10月半ばまでに、42件ありました。事例は、発生日/飛行させた者又は所属団体等/飛行場所/機体(種類、特徴等)/事案の概要/航空法上の許可・承認の要否/許可・承認の有無/当局の対応/報告された原因分析及び是正措置になっています。農水省の事故報告にない発生場所には、県名市町村名の記載がある点が注目されます。
 表には、機体別、月別件数を示しました。ドローンは、回転翼が複数あるマルチコプター型、飛行機は通常の翼のあるラジコン飛行機、無人ヘリは、大きな回転翼がひとつのいままでのヘリコプターです。
     表 無人航空機事故件数(国土交通省調べ)
   発生年月 合計 ドローン 飛行機 無人ヘリ
   2015/12  1    1  
   2016/ 1  4     3       1
       2  4      2       2
        3  3      2       1
       4  6   4        2
      5  2   2
      6  8   6    2
      7  2   2
      8  5   3        2
      9  3   3
      10  4    3    1
★ドローン型散布事故も1件
 事例の多くは、空撮目的や趣味の飛行、訓練や試験中によるものですが、農薬散布の無人航空機事故も4件(3件が無人ヘリ型、1件がドローン型)ありました。以下にその内容を示します。
 いずれも、航空法の危険物輸送や投下等に該当し、法条文に基づき申請がなされ、許可・承認を受けています。
  @2016/4/21; 農業関係団体 三重県伊賀市
   ヘリコプター全長約3.6m、ローター直径約3.1m、最大離陸重量約90kg
  ・農薬散布飛行により登園中の園児に農薬がかかった旨の連絡を受けた。
  ・園児は診断の結果特段異常はなかった。
   ※なお、操縦者の操縦経験は1800時間以上。
  ・第三者に影響を及ぼさぬよう安全飛行の徹底について指導した。
  【原因分析】・散布飛行中突風が吹いたため中止したが、因果関係は不明。
  【是正措置】・保育所学校等周辺での散布飛行は原則として行わない。なお、散布飛行が
    必要な場合は、周囲へ飛行内容や時間帯等の周知、天候や周囲の状況に配慮する。

  A2016/8/9 農業関係団体 三重県伊賀市
   ヘリコプター全長約3.6m、ローター直径約3.1m、最大離陸重量約90kg
  ・農薬散布のため、次の散布場所への移動飛行中、経路下の他の作物へのダウンウォッシュによる
   被害を回避するため、高度を上げすぎてしまい、電線に接触した。
  ・本件事案により電線を損傷させた。
   ※なお、操縦者の操縦経験は1200時間以上。
  ・第三者物件に接触した原因分析と再発防止策の検討を当該団体に指示した。
  【原因分析】・飛行経路上の作物に気をとられ、高度を上げすぎたためと思われる。
  【是正措置】・飛行前に飛行ルート上の物件等の確認を徹底する。
        ・付近に散布対象外圃場や電線、道路がある場合は機体を着陸させて移動する。

  B 2016/8/20 農業関係事業者 大分県臼杵市
   マルチコプタープロペラ除く直径約1.01m、最大離陸重量約14kg エンルート ZionAC940-D
  ・農薬散布飛行中に、Gohome機能が作動したが、帰還経路上に電線があったため、回避しようと
   マニュアル操縦に切り替えたものの、マニュアル操縦できず、電線に接触し墜落した。
  ・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
   ※なお、操縦者の操縦経験は1800時間以上。
  ・本件事案による人及び物件への被害はなかったが、墜落の原因分析と再発防止策の検討を
   当該事業者に指示した。
  【原因分析】・現在確認中
  【是正措置】・現在検討中

  C2016/8/25 農業関係団体 岩手県奥州市
   ヘリコプター全長約3.6m、ローター直径約3.1m、最大離陸重量約90kg
  ・農薬散布のため、飛行させていたところ、電柱の支線に接触し墜落した。
  ・本件事案による人の負傷及び物件の被害はなかった。
   ※なお、操縦者の操縦経験は500時間以上。
  ・本件事案による人及び物件への被害はなかったが、墜落の原因分析と再発防止策の検討を当該団体に指示
  【原因分析】・支線が周囲の物件と同化していて、操縦者及び補助者から見えなかった。
        ・飛行前の飛行範囲内の事前調査が不十分だった。
  【是正措置】・飛行時は補助者が先行して障害物の確認を行う。
   ・飛行前の事前調査を十分に行い、障害物を図面に記録の上、操縦者及び補助者双方で共有する。
★富山県砺波市:3件の事例
【参考サイト】砺波市:Top Page無人ヘリコプターでの農薬散布における安全対策の徹底について

 富山県砺波市はHPで「無人ヘリコプターでの農薬散布における安全対策の徹底について」という情報を発信しており、国交省の報告にない事例3件をあげています。
 @2016/7/21 発生場所:県西部
  事故内容:草刈り作業中の男性に無人ヘリコプターで散布された農薬が飛散した
  事故要因:農薬散布作業実施区域内への人の立入防止が徹底されていなかった

 A2016/8/6 発生場所:県西部
  事故内容:無人ヘリ2機の電波の混信により無人ヘリ1機が不時着し破損した
  事故要因:オペレーター間の事前の安全チェック等の基本的な始業点検がなされていなかった

 B2016/8/9 発生場所:県東部
  事故内容:無人ヘリの機体がケーブル線と電線に接触して墜落し大破した
  事故要因:オペレーターとナビゲーターの連携が不足していた
 市は、『防除実施主体であるオペレーター及びナビゲーター、作業補助者は農薬散布にあたり、下記のとおり安全対策を徹底してください。』として、
 1 実施区域周辺の住宅地へは、あらかじめ空中散布等の実施予定日、区域、薬剤の内容等について連絡し、事前周知の徹底を図るとともに、実施に際しての協力を得るように努めること。
 2 架線等の危険箇所、実施除外区域、飛行経路並びにオペレーター及びナビゲーターの経路を示した地図を作成し、実施区域と周辺の状況把握に努めること。など、6項目の一般的注意事項をあげているだけです。

★迅速に共有化すべき事故情報
【参考サイト】農水省:空中散布等における無人航空機利用技術指導指針(10/24改定版)

 農水省が、2015年12月発出した「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」では、事故を下記のように6つに分類して、発生時の対応指針を示しています。
  (1)人身事故 人の死亡、負傷等(操作中のオペレーターの転倒等の軽微な自損事故を除く。)
  (2)重大な物損事故 家屋、倉庫等の建物の損壊又は延焼
  (3)物損事故 架線、電柱、立木等への接触事故(機体の横転等の軽微な機体の損傷事故を除く。)
  (4)墜落事故 水田、道路等への墜落による自損事故
  (5)農薬事故
  (6)その他
     学校、病院等の公共施設の敷地内への不時着事例、
     操作中の機体が行方不明になった事例等、
     社会的影響等を勘案して対応が必要と考えられる事例
 【事故報告ルート】上記のように軽微な事例は事故と見なされない上、事故情報の伝達は、下記のように何段階にもなっています。
  ・実施主体は、事故報告書(右図にその様式を示す)を作成し、実施区域内の都道府県協議会に提出すること。
   なお、当該協議会の一覧は、植物防疫課において整理すること
  ・都道府県協議会は、事故報告書の提出があった場合は、記載に不備がないことを確認し、速やかに都道府県及び農政局を経由して、
   植物防疫課に当該事故報告書を提出すること。
    なお、都道府県協議会は、当該事故報告書を植物防疫課に提出した場合は、併せてその写しを農水協(農林水産航空協会)に提供すること。
  ・実施主体は、(1)、(2)及び(6)のいずれかに該当するような特に重大な事故が発生した場合は、直ちに運航安全課又は事故発生地を管轄する
   空港事務所にも事故報告書を提出すること。
    なお、実施主体は、運航安全課又は空港事務所に事故報告書の提出を行った場合は、速やかに植物防疫課にその旨を連絡すること。
  ・植物防疫課は、事故報告書の提出があった場合は、これを取りまとめ、都道府県、都道府県協議会及び農水協の協力を得て、
   事故原因を分析すること。
    また、当該機関との間で、当該分析結果に係る情報を共有するとともに、当該機関を通じ、
   実施主体に対し、再発防止を図るよう指示すること。
  ・植物防疫課は、事故原因の分析結果に係る情報を運航安全課に提供すること
   (注:太字で示した組織が関与する)
★このままでは事故防止につながらない
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 2016年10月24日に、農水省の技術指導指針は改訂され、あらたに農林水産航空協会により認定されドローン型の機種が2機増え、合計5機種となりました。
いまのところ、判明しているドローンの農薬散布事故事例は国交省報告にある1件だけです。
 事故報告書の提出については、農水省は、前述のようですが、国交省は、別途、『今後の無人航空機に関する制度の検討を行う上で参考となるものであることから、航空法等法令違反の有無にかかわらず、報告をお願いします。』として、農水省とは異なる記載様式を示し、本省又は各地航空事務所への届けを求めています。砺波市の事例が、国交省の報告にないのは、農水省との連携がうまくいっていないせいでしょうか。
 私たちは、無人航空機による農薬散布事故防止のためには、事故情報の届けを行政が一元共有化して、原因解明を行い、関係者処分を強化することが重要だと考えます。
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作成:2017-03-30