空中散布・松枯れにもどる
t31001#2016年の農薬散布の無人航空機の事故統計〜農水省は62件、国土交通省は4件〜農薬飛散による人の被曝も増える#17-06
【関連記事】記事t30303、記事t30405
【参考サイト】農水省:通知平成29年度の無人航空機利用における安全対策の徹底について(28消安第5761号)
農薬危害防止運動についての通知発出の前日、4月25日に、農水省植物防疫課は、2016年度の無人航空機による事故概要を公表しました。16年は死亡・人身事故はありませんでしたが、総件数は15年と比べ、9件増え、62件を数えました。
★農薬空中散布事故報告
農水省の事故報告では、2016年4月から9月に発生62件ですが、無人航空機の機種−無人ヘリ型か、マルチ型(ドローン型)かについては、『小型無人航空機に事故はなかった』との記載があるだけです。
記事t30405で報告した国土交通省の事故情報では、同時期の農薬散布の無人航空機事故は、4件(無人ヘリ型3件、マルチ型1件)でした。これは農水省通知「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針(ガイドライン)」の第5項「事故発生時の対応」に基づき農水省関連部署に報告された事故でも、圃場墜落や架線事故は、軽微なものとみなされ、国土交通省の担当部署に通報する必要がないとされているからです。
航空法の改定で、無人航空機の飛行については、農水省、国土交通省両局長通知で、許可・承認が義務付けられ、農薬散布についても適用されることになったため、農薬空散に伴う無人航空機事故の発生も減少するのではないかと期待したのですが、両省に届けられる事故情報数も62件と4件と15倍以上の違いがあり、結局、航空法は、事故防止には全く役立たず、農水省とその外郭団体農林水産航空協会が機種からオペレーター、農薬散布計画、事故調査をすべて取り扱ういままでの状況は。航空法規制で、なんら変わらなかったわけです。
表にH28年=2016年に発生した事故の一覧を示します。事例は、次頁の表に挙げたとおりですが、発生年月日と大まかな事故状況、被害状況が開示されているだけで、私たちが開示要求している発生場所は明らかになっていません。
★事故状況
水稲防除での事故が54件、麦4件、大豆防除が3件で、松が1件でした。発生月は8月が一番多く38、ついで7月14、4月と9月が4件でした。
物損事故は前年3件増の52件。延べ件数で一番多い被害は、機体破損で52件(うち全損・大破・中破:16)、炎上1件、水路墜落2件もありました。次ぎに多かったのは、電線、電話、光ケーブル等の架線接触・切断被害で47件でした。建物や看板の破損が4件、農作物では、イネの倒伏や作物損害が8件あったほか、2016年には、前年になかった農薬のドリフト飛散による人の被曝(園児が農薬を浴びた事例あり)が3件、他の作物にかかり、生育遅れなど3件ありました。
★原因追究が不十分
事故原因別の件数は以下のようです。()は2015年の数値です。なお、表にある原因の項の○番号は、下記と同じです。
@事前の確認不足による障害物の見落とし:23件(27)
Aオペレーターとナビゲーターの連携不足:42件(36)
Bオペレーターの操作ミス、目測誤り:39件(31)
C飛行の高度、方向等が不適切:20件(26)
Dその他(通信機器の故障等):8件(7)
オペレーターとナビゲーターの連携不足(情報共有不足、不適切な配置、指示の遅れ等)やオペレーターの操作ミスなどが前年より増えています。
事故原因の解明は、すべて、散布関係者の報告によるもので、第三者が機体やコントローラーの整備不良の有無をきちんと調査することもなく、操作ミスとしてオペレーター等に責任を押し付けるケースが多いと思われます。また、事故を起こした当事者に認定証の取消しなどのペナルティーを科する制度もありません。
★農水省の2016年通知では
事故調査で架線接触事故が最も多いことを踏まえ、農水省は本年度の植防課長の通知で、事故防止ポイントとして、@空散実施前の実地確認すること。A散布中に、ナビゲーターは、オペレーターに対して障害物等に関する情報を正確に伝えること。B実施区域に隣接していないほ場又は飛行経路上に家屋、架線等がある隣接したほ場に移動させる場合は、無人航空機を着陸させ、陸上で運搬することなどを挙げています。また、ドローン型については、風の影響を受けやすいことから、周辺に農薬が飛散しないよう十分注意することや機体が小さいことから、機体とオペレーターの距離が、水平距離で50mを超えないこと、地上デジタル放送電波や携帯基地局電波等の干渉を受けやすいことに十分注意すること、としています。
しかし、私たちが求めている住宅地周辺での空中散布禁止、緩衝地帯の設置は、一向に実現しないどころか、散布計画のHPによる周知も努力規定があるだけで、無人航空機による事故が増加の一途をたどっています。公的機関による機体の認定、オペレーターの免許制度の導入、人やミツバチ、有機圃場などへの飛散や大気汚染による被害防止のため、住宅地通知の遵守、住民や養蜂者への周知を義務化し、100万haを超える無人航空機による農薬散布に歯止めをかけねばなりません。
表 2016年の無人航空機事故状況(農水省公表資料より) −省略−
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作成:2017-06-29