改定農薬取締法関係にもどる
t31501#農薬取締法改定が俎上に、(その4)農薬以外での使用も法規制が必要#17-11
【関連記事】記事t31201、記事t31301、記事t31401、改定農薬取締法関係の記事一覧(2008年までは、こちら)
【参考サイト】農水省:農薬コーナー、農薬資材審議会の頁と農業資材審議会農薬分科会
農薬登録制度に関する懇談会の頁
★失効・期限切れの農薬も使える
【参考サイト】農水省:農薬コーナーにある販売の頁、購入の頁
記事t31503で紹介したように、EUでは、殺虫剤フィプロニルの農薬登録は失効しましたが、すでに製造・販売された農薬については、使用が禁止されたり、回収が実施されるわけでなく、適用規制を守れば、まだ、使うことができるようです。
日本でも、この状況は同じで、一般に、ラベルの剥がれた製剤や農取法省令で販売禁止されている農薬を使うと罰せられますが、農水省のホームページにある販売と購入の頁では、「最終有効年月を過ぎた農薬の購入は避けてください」と指導されているだけで、登録失効したり、期限がきれた農薬でも、ラベル通りに使用すれば使ってもいいことになっています。
農取法の改定に際しては、この点を、あらため、さらに、メーカーや販売者に回収を義務づける必要があります。
★農薬以外での用途についての法規制を
【関連記事】記事t28605、t31506、室内汚染・シロアリ駆除剤関連記事一覧
【参考サイト】アメリカ;FIFRA
EU:植物保護製品規則 No 1107/2009、バイオサイド製品規則 No 528/2012
日本貿易振興機構:殺虫剤の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出
EU 殺生物性製品規則の概要
日本:農薬取締法、薬機法、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律と基準概要
農薬が登録失効しても、農薬と同じ成分がそれ以外の用途で使うことについても厳しい規制が求められます。有機塩素系のBHC、クロルデンやディルドリンは登録失効後、シロアリ防除剤に転用され、その難分解性、蓄積性のため、地球規模の汚染拡大を惹き起こし、最終的に化審法で規制されました。一旦、環境中へ放出された農薬がその後も残っていることで、食品や人体汚染がつづいています(ディルドリンの残留基準違反は記事31507参照)。これらと同じ轍を踏むことは、許されません。
さらには、有害な農薬がこっそりと消えることもあります。EUのフィプロニルもそうですが、日本では、たとえば、神経毒性のある有機リン系のDDVPの農薬登録は失効しましたが、ゴキブリなど衛生害虫用殺虫剤としての用途はそのままです(記事t25306参照)。
アメリカでは、EPAが所管するFIFRA(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法)で農薬だけでなく、他の用途も含めた有効成分が一元的に法規制の対象になっています。
EUでは、農薬については、植物保護製品の認可と上市について規制があるほか、医薬品、化粧品、バイオサイド(殺生物剤)については別の規制があります。バイオサイド規制は、2013年に強化され、22製品分野(工業製品保存剤、木材保存剤、繊維皮革ゴム高分子材保存剤、建築材料保存剤ほか)において、薬剤そのものだけでなく、それらで処理された加工製品も対象とされますが、個別の運用が確立するには、まだ、時間がかかりそうです。
日本では、農薬以外の規制では、若干の薬剤と製品についての家庭用品規制法のほかに、医薬品や化粧品、動物薬用の承認については薬機法(旧薬事法)があるだけで、シロアリ防除剤、木材防腐剤、不快害虫殺虫剤、外来有害生物駆除剤、防汚剤、衣料防虫剤、非植栽用除草剤などの製造・販売・使用規制はありません。
わたしたちは、なんども、用途別の縦割り規制をやめるよう求めていますが、行政機関は、重い腰をあげません。
★農取法:罰則は食用作物での使用が偏重
【関連記事】記事t28006、記事t28405
農薬の使用について、農取法の問題は、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」(以下、遵守省令という)で、使用者の罰則が、食用作物での適用作物や使用条件違反に限られていることです。
有機リン剤のDEPは、食用作物への適用は2013年になくなりましたが(記事t25805)、樹木用には、相変わらず使用されており、埼玉県加須市の小学校での児童被害につながりましたが(記事t31402参照)、使用者には農取法による罰則は科せられません。
また、同じ活性成分でも、植物栽培に使用する農薬殺虫剤と蚊その他の感染症媒介昆虫や不快害虫用の殺虫剤は、環境中へ放出され、人や生態系に影響を与えることは変わらないのに、使用条件や注意要件などで、両者を区別して扱うことは、理解できません。
★農薬登録のいらない除草剤がある
【関連記事】記事t31004
【参考サイト】環境省:「平成18年度殺虫剤等に関する使用実態等調査業務」報告書
平成26年度調査報告書、H25年度調査報告
農水省:非農耕地専用と称する除草剤の販売等についてと通知文書
同じ草を枯らす枯殺剤でも、農作物や花卉、樹木などの植栽管理に使わない場合は、農取法が適用される除草剤の範疇にはいりません。運動場や駐車場、線路・道路の草を枯らす目的で使用する除草剤は、農薬と変わらない製剤でも、その製造・販売・使用を取締る法律はありません。このような除草剤は、植物を枯らすという目的も、人や環境に及ぼす影響も同じなのに、散布周知は不要です。農薬除草剤であろうが、非植栽用除草剤であろうが、両者を共通に取締れる法律にすべきです。
★空中散布や公園など公共施設での禁止を
【関連記事】記事t28605、記事t31004、t31505、街の農薬汚染関連記事一覧、空中散布・松枯れ関連記事一覧、
【参考サイト】環境省:公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル〜農薬飛散によるリスク軽減に向けて
公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル優良事例集vol.1、vol.2
EU:規則、2009/128/EC指令、EU議会・理事会報告:2017/10/10の報告書
前述の遵守省令では、住宅近接地での農薬散布や、土壌くん蒸処理、無人航空機散布の規制があまく、人の被害防止が努力規定にすぎないことも問題です。
EUでは、農薬についての規制は、規則(Regurations)と指令(Directives)があり、規則は、加盟国共通で、有効成分や製剤の許可や上市のルールで日本の農取法にあたるもの、指令は、人の健康・環境への悪影響や農薬への依存を減らすことを目的とした行動の枠組みです。
指令の条文には、以下のようなものがあり、日本でもみならうべきです。
・農家など職業的農薬散布者の訓練(第5条)
・散布者や散布地域の住民の健康被害情報の収集システム構築。(第7条)
・空中散布(航空機や有人ヘリによる)の禁止。ただし、厳しい条件下では許可。(第9条)。
・農薬飛散地の住民への情報周知。(第10条)
・公園や庭園、スポーツやリクリエーション施設、学校や子供の遊び場などでの
農薬使用の禁止又は削減。(第12条)
★地方条例による規制も視野に
【関連記事】11・30集会案内
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.7<農薬類の使用規制をめざす法律案>
散布者やその家族、散布地周辺で生活するひとたちは、食べ物から農薬を摂取するだけでなく、経気、経皮による摂取も無視できません。それなのに、食品安全委員会は、非食用作物にのみに使用する農薬の人の健康への影響評価を後回しに、ADIをなかなか設定しません。
以上のような農薬及び同じ成分を含む薬剤の農耕地、森林、一般環境、生活環境への放出を、同一レベルで総括的に規制する法律の制定が求められます。
とはいうものの、国の法規制が遅々として進まず、わたしたちは、地方自治体の条例による規制も視野にいれ、勉強会を企画しています。
なお、次号は、再評価制度をとりあげます。
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作成:2017-11-27