改定農薬取締法関係にもどる
t31601#農薬取締法改定が俎上に、(その5) 健康被害がでてからの農薬再評価制度でいいのか〜日本でなじみの有機リンなどはEUでは軒並み登録なし#17-12
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改定農薬取締法関係の記事一覧(2008年までは、こちら)
いままでの反農薬東京グループの主なパブコメ意見:
我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)についての意見(2009年7月)
農薬の登録申請時に提出する試験成績及び資料に係る関係通知の改正案に関する意見(2014/03)
【参考サイト】農水省:農薬コーナー、農薬資材審議会の頁と農業資材審議会農薬分科会
第17回分科会の議事録と資料5−1「再評価制度について
アグロサイエンス通信:Top Pageにあるトッピクス264(11/02)
新たな農薬管理行政の動向と方向性(東京農大総合研究所農薬部会の9月29日開催セミナー報告)
農水省は、農取法改定を提案した7月の農業資材審議会農薬分科会で、2021年度を目途に、有効成分ごとに再評価制度を導入する予定としました。まず、評価対象農薬の優先度を決めるとのことで、すでに実施されている欧米での制度を参考にするようです。そこで、分科会で配布された資料や説明をもとに、農水省に、いくつかの質問をしました。その中の2質問の回答を示します。
反農薬東京グループの17回農薬分科会資料の件に関する質問と回答
【質問1】資料5−1「再評価制度について」で、2.欧米での農薬の再評価制度の概要の項に、
欧州では、すべての既存登録剤について、EU指令Dir. 91/414/EECで、再登録審査を実施。
この際、毒性上の懸念の高いもの、及び使用の多いものを優先的に評価し、1993年〜2009年に
かけて再登録を完了、とあるが、下記について教えられたい。
(1)欧州での実施された指令91/414/EECによる再評価の項目はなにか。
【回答】EU指令91/414/EECは以下のウェブサイトにありますので、そちらでご確認ください。
Council Directive 91/414/EEC of15 July 1991 concerning the placing of plant protection products on the market
(2)欧州で、1993〜2009年にかけて、再評価が終了した農薬成分は、いくつあるか。
再評価農薬名及びその結果、登録が取消され、現在使用できなくなった農薬名を一覧表で示されたい。
【回答】欧州では、1993年時点で登録されていたすべての農薬を再評価しています。
具体的な結果は、以下のEUのサイトでご確認下さい。Search active substances
【質問2】資料5−1の3.導入する制度の、日本での再評価についての
概要の項にある別添には、『2017 年 4 月現在で対象となる既登録の有効成分は約 580』とし、
優先度を5段階にわけて、再評価を実施するとある。
議事録では、優先度Aについては、我が国で多く使われているものとして100剤程度、優先度Bに
ついては、毒性の懸念があるものとして、基本的に有機リン系化合物、カーバメート系であり、
大体150剤程度あるとされている。A,B それぞれについて、成分名のリストをあげられたい。
【回答】御指摘の、優先度Aで100剤程度、優先度Bで150剤程度との発言は、欧州での優先度Aと
優先度Bの剤数を回答したものです。欧州での各優先度の成分は、質問1-2のウェブサイトでご確認下さい。
★なんという不誠実な回答か
EUのHPを見て、英文で書かれた文書で調べろというわけで、国民を愚弄した回答としか思えません。特に、質問2の回答にあるEUの農薬データベースには、約1500の成分がでています。日本での登録成分を英文名で入力・検索して、登録の有無を確認しなさいとの、信じ難い返事です。
議事録には、『基本的に有機リン系化合物、カーバメート系であり、大体150剤程度あるとされています』と書かれていますが、分科会のメンバーには、どんな成分が該当するか知っているのでしょうか。
★約160成分が日本で使用可、EUで不可
仕方ないので、日本のFAMICのHPにある国内で登録されている有効成分約600とEUで登録のない成分約850を照合しました。その結果、EUでは登録がなく、日本では登録されている農薬成分は160程ありました。EUの場合、登録のない理由を調べるに到りませんでしたが、EU規則や指令により、人や環境への影響が懸念され、試験や調査データの追加提出を命ぜられたのに、できなかっために、登録失効した成分も含まれていることは、間違いありません。
表には、生物系農薬成分は除きましたが、太字で、有機リン、カーバメート系を示しました。ほかに、ピレスロイド系、抗生物質系もありますし、なじみのあるD-Dやクロルピクリンなどの土壌処理剤、CATやパラコート、トリフルラリンなどの除草剤、プロシミドンやベノミルなどの殺菌剤もEUでは使えません。斑点米カメムシ用のジノテフランやエチプロールも日本のように使用できません。該当する多くの農薬は、日本で2000年以前に登録された農薬です(表で*をつけた成分は2001年以後登録)。
わたしたちは、農薬再評価制度の導入を求めてはいますが、それには、毒性データなどの公開、一般・生活環境での汚染状況調査が不可欠です。
また、それ以上に重要なのは、農薬被害が発生する前に、登録・使用しないことをめざすことです。
表 日本で登録されているが、EUでは登録のない農薬成分 (2017年10月現在)
4-CPA アレスリン ジクロルプロップ プレチラクロール
BPMC イソウロン ジノテフラン* プロシミドン
BPPS イソキサチオン シフルトリン プロスルホカルブ*
CAT イソプロチオラン シペルメトリン プロチオホス
D-D イマザピル シラフルオフェン プロフェノホス
DBN イマゾスルフロン ストレプトマイシン ブロマシル
DCBN イミベンコナゾール ダイアジノン プロメトリン
DEP インダノファン チオジカルブ ヘキサコナゾール
DMTP エチプロール* テトラジホン ベノミル
EPN エチルチオメトン テブチウロン ペルメトリン
IBP エトキシスルフロン トリシクラゾール ベンチオカーブ
MCPPジメチルアミン オキシテトラサイクリン トリフルラリン ベンフラカブ
MEP カスガマイシン トルフェンピラド* ベンフレセート
MIPC カズサホス ニテンピラム マレイン酸ヒドラジド
メチルイソチオシアネート カルタップ パラコート マンネブ
MPP カルボスルファン パラフィン メフェナセット
NAC キノキサリン系 バリダマイシン メプロニル
PAP クマリン系 ビテルタノール モリネート
アイオキシニル クロメプロップ フィプロニル リニュロン
アシュラム クロルピクリン フェンバレレート 臭化メチル
アセフェート クロルフェナピル フェンプロパトリン 生石灰
アトラジン シアナジン ブタクロール 有機銅
アミトラズ シアナミド ブタミホス *2001年以後登録
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作成:2017-12-27