松枯れ・空中散布にもどる

t31606#国交省の無人航空機の「許可・承認の審査要領」改定案では、事故はなくならない#17-12
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【参考サイト】国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールの頁にある
    許可・承認を行った内容の公表(2016年度:本省2015年分本省2016年度分空港事務所分
           2017年度:本省2016年度分本省2017年度分地方航空局
    事故情報等の一覧(国土交通省に報告のあったもの。2015年度2016年度2017年度
       農水省:無人航空機(無人ヘリコプター等)に関する情報の頁にある
           空中散布等における無人航空機利用技術指導指針
       農林水産航空協会:Top Page
               農林水産航空事業の頁(有人ヘリ無人航空機共通無人ヘリコプターマルチローター)

 無人航空機の飛行については、国土交通省に申請し、許可承認を受けることが必要ですが、2017年度(4月〜10月)の許可承認件数は1万2092件で、うち農薬散布は449件(危険物の輸送と物件投下を使用目的にした申請数。うち個人申請191件)でした。この中で、同省が公表している事故は、次節のようでした。これとは、別に農水省が報告を受ける事例がありますが、本年の件数はまだ、明らかになっていません。

★今年度の事故件数は30件台
【関連記事】記事t30405

 記事t30405にも、一部示しましたが、無人航空機の事故として、国交省へ届出があったのは、2015年度(14年12月〜15年3月)12件、16年度55件、2017年は4月〜10月の間に34件(内訳はマルチ型ドローン30件、不明3件、無人ヘリ1件。農薬散布関連の事故は2件)でした。
 11月に入って、マルチ型の重大事故が2件つづいています。ひとつは、4日に、岐阜県大垣市のイベント会場で、上空から菓子類を投下していた3kg級ドローン型機が、墜落したもので、6名が負傷しました。人が大勢いる場所での飛行は規制されてしかるべきで,さらに、菓子とはいえ、物の投下を認可した国土交通省の責任は看過できません。

この件に関連して、12月27日〜1月12日の期間、国交省は新たな審査要領の改定案のパブコメ意見募集をしています。

 21日には、埼玉県秩父市の東京大学演習林で、森林調査を実施していたドローンが墜落、火災が発生し、下草約4haを焼きました。ドローンは無人ヘリコプターのように、燃料油を積載していないので、墜落破損しても、火災は起こりにくいと考え勝ちですが、さにあらず、搭載されるリチウムイオン電池の電解液には炭酸ジメチルや炭酸プロピレン等の消防法で危険物第4類第2石油類が10〜20%入っています。墜落破損した機体から、漏洩した可燃物が発火、周辺に延焼すれば火災になるのは当然です。17年3月12日、京都市の宇治川河川敷で、無人ヘリが墜落・炎上し、葦原約23haが焼失した事故報告では、国交省は「原因不明」としているだけです。
【農薬散布事故は2件】
4月20日 三重県松阪市で、100kg級の無人ヘリコプターで農薬散布飛行中に、機体が家屋に接触、墜落、家屋の屋根と窓ガラスが破損しました。半年以上、飛行させておらず、事前練習の不足、気のゆるみがあり、操縦者の操作ミスにつながったのが原因とされました。
 6月23日の福島県喜多方市での事故では、15kg級のマルチ型を農薬散布の訓練のため、水を投下していたところ、姿勢の制御ができなくなり、左前方へ傾いて水田に墜落しました。

★審査要領の改定より、免許制度を
【参考サイト】国土交通省:審査要領改定のパブコメ意見募集新旧対照表
  反農薬東京グループのパブコメ意見

 国土交通省は、無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の改定案を提示し、11月17日〜12月16日にパブコメ意見を募集しました。国が操縦者の免許制度を作らず、事故原因の解明や罰則規定のないまま、単に、「飛行中の他の無人航空機との衝突を予防すること」等を追加する改定や、更新申請や変更申請の項を新設して、許可承認をやりやすくすることでは、事故防止には繋がりません。特に、農薬散布で、農林水産航空協会に、機種やオペレーター認定を任せたままなのは、問題です。

★国家戦略特区での議論:ドローン型適用農薬を増やす算段
【参考サイト】農薬インデックス:Top Page産業用無人航空機用農薬
       内閣府;国家戦略特区ワーキンググループの頁にある
         農水省の無人ヘリコプター用農薬の転用登録の緩和について(2015/09/17):
                 配布資料1配布資料2配布資料3
         同上(2015/10/09:配布資料1配布資料2

 内閣府の国家戦略特区ワーキンググループでは、ドローンの農林水産分野での活用が議論されており、2015年には、無人ヘリコプター用農薬の転用登録緩和の必要性が主張されています。すなはち、
 『無人ヘリコプター用登録薬剤は、水稲農薬においては登録が進み、水稲防除は全国で約40%、北海道においては約50%が無人ヘリコプター散布での実施に至っている。
 しかしながら、畑作・柑橘等の場面においては、登録薬剤が極めて少なく、無人ヘリコプター散布の普及の障害となっている。今後、無人ヘリコプター導入による水稲防除以外の散布普及の拡大を実現するためには、迅速な転用登録が必要となる。
 よって、「農薬メーカーの転用登録促進のために、登録費用の低減及び登録に至るまでの 期間短縮が不可欠」と考える。』と、いうわけです。
 同グループのヒアリングで、農水省は、無人ヘリコプターでの農薬散布について、地上散布との違いを考慮し、次の観点から効果や安全性に関する評価が必要であると説明しています。しかし、使用者への影響の項はあっても、散布地域で生活する人々の受動被曝防止には、ノーコメントです。
 【薬効・薬害】
  ・散布液中の農薬の濃度が高くなることから、作物に害を生じる可能性
  ・散布する液量が少なくなることから、薬効が十分に発揮できない可能性
 【使用する人への影響】
  ・散布液中の農薬の濃度が高くなることから、使用する人の健康に悪影響を与える可能性
 【作物への残留など】
  ・散布液量・濃度が異なることから、残留濃度が変化する可能性(必要な場合、食品の
   残留基準値を変更)
  ・地上散布より高い位置から散布するため、環境中への飛散が多くなり、魚などの
   環境中の生物に影響を再度評価する必要がある。
★試験データを示さずに、登録要件緩和
【関連記事】記事t29502記事t29801
 わたしたちは、いままでに、無人航空機散布地近郊へのドリフトによる人や環境への影響防止に加え、ドローンについては、無人ヘリコプターと比べ、低空で、散布幅も小さいし、吹き下ろし下流(ダウンウォッシュ)がなく、風の影響も受けやすいのに、無人ヘリと同じ希釈濃度で散布して、対象作物の残留基準は守られるのか、非対象作物や域外への飛散状況はどうかなどを知ろうと、「小型無人機による農薬散布調査委託事業」の報告の開示を求めました。しかし、農水省は、公募入札による調査にも拘わらず、『協力企業に対して企業名の公表の了解を得ておらず、協力企業名を明らかすことはできないとのことでした』との返事で、どのような試験をしたかを明らかにしませんでした。実際には、以下のように、試験の実施数を減らして、登録しやすくする画策をしていたのです。
『転用における実証試験には約2年、登録拡大申請には約1年、登録認可まで最短で約3年の期間が掛かっている、』とし、地上散布で登録のある農薬を無人ヘリでも使用可能にする場合については、すでに、次の軽減措置を実施するというわけです。
@薬効・薬害試験:6試験以上(複数年必要)→ 2試験以上(1年で可)
A作物残留試験:6試験以上(複数年必要) → 3試験以上(1年で可)

『欧米では、面積当たりの有効成分量で使用方法を規定している国もあるが、このような規制を行っている国でも、ヘリコプターでの散布、地上散布といった使用方法ごとに試験の実施、安全性等の評価、登録を行っている。』と、農水省は説明しているのに、日本では、試験数を減らして、ドローンに適用できる農薬を増やしていこうというのが、戦略特区での論議を踏まえた結果だったようです。
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作成:2017-12-27