松枯れ・空中散布にもどる

t31810#天草だより (215)防除効果のない松枯れ空散は止めるべきです (植村振作)#18-02
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【参考サイト】林野庁:松くい虫被害の頁松くい虫被害対策について
            「平成28年度森林病害虫被害量」について
   森林総合研究所:Top Pageパンフ「松くい虫」の防除戦略(2006年3月発行 )
            航空写真とGISを活用した松くい虫ピンポイント防除法の開発防除マニュアル(2010年3月)

◆家の裏の土手に生えている梅の古木に1月の半ばに白い花が咲き始め、一月も経った今も咲いています。暖かい陽が待ち遠しい日々です。

◆今年も各地で松枯れ防除農薬空中散布(空散)が計画されているようです。ここ数日、4月に予定している松本での空散についての講演で使うパワーポイントの準備のために、もう使うこともないだろうと思って仕舞い込んでいた空散関係資料の入った段ボールを押し入れから引っ張り出して、捜し物をしています。空散現地で大阪府警に取り囲まれていた写真や空散の歴史を纏めたメモなどを入れていたつもりですが見つかりません。探すのは諦めました。

 その代わりというか、私も討論に参加した、1997年4月に九州大学農学部で開催された日本林学会(2005年「日本森林学会」に改称)の「マツ材線虫は日本の松林をどのように変えたか」という研究発表会についての纏めた資料を見つけました。

 ◆私たちは、松枯れ空散反対運動を始めた当初から、散布農薬のヒトや環境への影響と防除効果を問題にして来ました。地域住民は主に散布農薬の健康影響を心配して空散に反対します。それは当然のことです。
 それにしても、そもそも空散で松枯れを防げないのであれば、健康被害をもたらす恐れのある農薬を撒く必要はありません。
 空散は、1970年代初めに林業試験場九州支場が上天草市大矢野町の天草松島で試験的に始めました。その後も松島の景観保全のために空散が継続的に実施されました。しかし、今では松島というには恥ずかしいくらい松が少なくなり、以前の松島の面影は有りません。空散で松が守られたとは思えません。

◆1997年の林学会研究会参加メモによれば、九大教授矢原徹一さんが「農薬空中散布が効果的であるかどうかを統計学的に検討できるデータは見当たらない。林野庁は、散布地域と非散布地域でどれだけ松が残ったか統計を整備するべきだ」と討論を纏めています。しかし、現在に至るも「林野庁においては、松枯れに対する薬剤航空散布防除の有効性について、統計学的に検討したデータ等は持ち合わせておりません。」と私の問い合わせに対して林野庁は回答しています。
 岡山大学の津田敏秀さんは、著書「医学的根拠とは何か」(岩波新書)で「水俣病」が拡大し、認定業務や訴訟等で混乱しているのは、「水俣病」の原因が水俣湾内産魚介類と分かっていたのに、食中毒事件として食品衛生法に基づく疫学調査(悉皆調査)を行政がしていないからだという趣旨の指摘をしています。
 同じことが、松枯れ空散についても云えます。20年も前に林学会で指摘された、本来林野庁が行うべき空散効果があるかどうか統計学的に検討できる調査を林野庁は未だに行っていません。調査しない理由は、空散に否定的な結果が予想されるからでしょう。
 空散実施地域住民の間に無用な争いをもたらし、健康被害のおそれのある、効果も確認されていない空散は直ちに中止すべきです。


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作成:2017-12-27、更新:2018-03-02