冬虫夏草中医学解説

処方名    冬虫草・虫草・冬虫夏草。

基原      バッカクキン科 Clavicipitaceae 冬虫夏草菌 Cordyceps sinensis(Berk .)Sacc .(フユムシナツクサタケ)の子実体(子座)と寄生主の幼虫を乾燥したもの。この菌は鱗翹目の昆虫の幼虫体内に寄生する。冬期に虫体の養分を吸収を枯死させ、夏期に虫体の頭部から発芽して棒状の菌核(菌座)を形成して草になるため、この名がついた。

性味      味は甘、性は温。(帰経:肺・腎経。)

主成分     quinic acidの異性体のcordycepic acid C7H12O6・cordycepin。

薬理作用   補肺腎・止喘咳
(1)気管支の拡張:水浸液は遊離した動物の気管支をあきらかに拡張する。
(2)鎮静:マウスに対して鎮静と睡眠作用がある。
(3)抗菌:in vitroで、cordycepinはレンサ球菌・ブドウ球菌・炭菌・皮膚真菌などを抑制する。アルコール抽出液は1/10万以下の濃度でも結核を抑制する。冬虫夏草の肺結核に対する有効性がこのことに関係があるかどうかは研究に値する。
 このほか、動物の腸管・子宮・心臓などの筋肉を弛緩する。静脈内投与により血圧下降を生じる。

臨床応用   主として病後の身体の調整・補益に用いる。
(1)病後の衰弱で、頭がふらつく・食欲がない・自汗・貧血などの症状があるときに使用する。とくに呼吸器の抵抗力が弱く、風寒による感冒にかかりやすいときに、滋養性食品として食べると抵抗力が増強する。鴨・豚・鶏などの肉とともに炖服するが、生魚(中国南部でとれる台湾ドジョウににた魚)やスッポンと炖してもよい。
 臨床的な観察によると、吸収利用を促進することによって配合した補益薬の作用を強めるようである。
(2)インポテンツ・下半身がだるく力がない・遺精などの腎陽虚の症状に、杜仲・淫羊藿・肉蓯蓉あるいは枸杞子・山茱萸・山薬などを配合して使用する。海狗腎やアワビと頓服してもよい。
(3)肺結核など、肺腎虚による咳嗽・喀血・胸痛に用いる。杏仁・川貝母・麦門冬・阿膠などを配合し、たとえば冬虫草湯を用いる。側柏葉・人参葉・玄参などを配合して水煎服してもよい。
 このほか、慢性腎炎の患者に冬虫夏草を常用させると体質を強化する。

使用上の注意
(1)冬虫夏草は平補の薬物であるから、効果は緩慢で、長期間服用しなければ効果がない。
(2)肺熱による喀血には使用しない。

用量       9〜15g。他薬と煎服するか、他の栄養物質とともに炖服する。丸剤や散剤に入れてもよい。

方剤例     冬虫草湯:冬虫夏草12g 杏仁9g 川貝母9g 麦門冬9g 阿膠珠15g(溶解) 白芨9g 百部12g 水煎液。咳嗽がつよいときには蛤蚧末3g(沖服)を加え、喀血のひどいときには三七末3g(沖末)を加える。