病態生理
血漿は7.0mg/dL、すなわち0.41mmol/L(pH7.4;正常のナトリウム濃度、37℃)以上の尿酸で飽和する。30℃における尿酸塩の溶解度はわずかに4mg/dL(0.24mmol/L)であるために、尿酸一ナトリウム(MSU)針状結晶は、より冷たい遠位の末梢関節や、より冷たい組織(例、耳)の周りの無血管性組織(例、軟骨)または比較的に無血管性の組織(例、腱,靱帯)沈着する。重篤で長期にわたる疾患において、MSUの結晶は中心の大きな関節や腎臓のような器官の実質に沈着することがある。
痛風結節はMSU結晶の集合体である。痛風結節は十分に大きいので、最初に関節のX線像で打ち抜き病変として認められ、さらに後に皮下小結節として見つけられるかまたは感じられる。pH酸性の尿中では、尿酸そのものは小さな板状結晶として容易に沈殿し、凝集して尿砂や結石を形成し、閉塞性尿路疾患の原因の原因となることもある。
持続性の高尿酸血症は通常、尿酸の腎クリアランス低下によって起こり、特に慢性的に利尿剤療法を受けている患者やGFRを減少させる1次性腎疾患の患者に起こる。高尿酸血症が重篤になり期間が長くなるほど、結晶の沈着の機会は多くなり急性痛風発作も起こりやすくなる。しかし、高尿酸血症の患者の多くが痛風を全く発現しない。
プリン合成の増大は1次異常として起きるか、または血液学的な条件(例、リンパ腫、白血病、溶血性貧血)や細胞増殖や細胞死の速度が増大する条件(例、乾癬)で核蛋白の代謝回転の増大が原因で起きることがある。痛風のほとんどの症例で尿酸の新規合成が増加する理由は不明であるが、少数の症例でヒポキサンチンーホスフォリボシルトランスフェラーゼ欠乏またはホスフォリボシルピロリン酸合成酵素の過活性が原因とされている。前者の酵素異常は腎結石、腎障害、および年少時重い痛風と関連し、酵素を完全欠損している場合は、舞踏病アトテーゼ、けいれん、精神発達遅滞、強迫自己断節(レッシュ_ナイハン症候群)のような神経学的異常と関連する。食物中のプリン体も血清尿酸値に寄与する。尿酸値の顕著な上昇は、しばしばプリン体が豊富に含まれる食品を、特にアルコール飲料とともに摂取した後にみられる。エタノールは肝臓のヌクレオチドの異化を誘発し、尿酸生成を増加させるが、それは他の有機酸と同様、尿細管による尿酸排泄を妨げる。しかし、厳格な低プリン体食の食事療法を行っても、血清尿酸のベースラインをおよそ1mg/dL(0.06mmol/L)ほど下げるにすぎない。
血清尿酸は、細胞外の混和性尿酸プールの大きさを反映して通常は24時間毎に1度代謝回転し;尿酸の1/3は糞便中に排泄され、2/3は尿中に排泄される。24時間尿中の尿酸排泄量の正常値は、3日間の低プリン体食の摂取後では300〜600mgである。したがって、食物摂取により1日当たりおよそ450mgの尿酸が排泄されるとみなされる。高尿酸血症と痛風は、シクロスポリンを投与されている臓器移植患者によくみられる合併症である。閉経前の女性の平均尿酸値は、男性の平均尿酸値よりもおよそ1mg/dL(0.06mmol/L)低いが、閉経後は徐々に男性の平均尿酸値に近づく。
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