治療
治療の目的は、(1)NSAIDにより急性発作を終止させること、(2)コルヒチンを毎日服用することにより反復性(頻回である場合)の急性発作を予防すること、(3)関節外体液の尿酸濃度を低下させることにより、新たなMSU結晶の沈着を防止し現存の痛風結節を消散させることである。予防プログラムは、骨および関節軟骨のびらんと腎障害の両方が原因である能力障害を避けることが目的である。病患の段階と重症度に従って特異的な治療が行われる。高血圧、高脂結症、および肥満症などが併存していれば治療するべきである。
急性発作の治療:コルヒチンの反応は通常劇的である。関節の痛みは一般に治療後12時間で軽減し始め、36〜48時間以内に消失する。コルヒチン用量は、反応が得られるかまたは嘔吐が起こるまでは経口で2時間毎に1mgである。重症では4〜7mg(平均5mg)の用量が必要なこともある。投与量は48時間内に7mgを超えるべきではない。この治療はしばしば下痢を起こす。消化管がコルヒチンの経口投与に耐えられない場合は静注する。コルヒチン1mgを0.9%塩下ナトリウム溶液20mLに希釈し、ゆっくり時間をかけて(2〜5分)注入するが;24時間以内に2mgを超えて投与してはならない。経口コルヒチンを予防的に投与させている患者がさらにコルヒチンを静注投与させると、重度の骨髄抑制を起こし死に至ることもある。特に高齢患者では、コルヒチンに誘発された下痢症状に伴って、重度の電解質不均衡を起こし致命的な結果になることもある。 NSAIDは、すでに確立した痛風の急性発作には有効である。日用量を食事とともに2〜5日間服用する。NSAIDは胃腸の不調、高カリウム結症(腎血流がプロスタグランジンE2依存性の患者)、および体液貯留などを含む多数の合併症を起こすことがある。高齢患者や脱水症状を示す患者で、特に腎疾患の病歴がある場合は危険性がきわめて高い。
痛風発作は侵された関節の吸引によっても治療し、続いてコルチコステロイドエステルの関節内注射を行う。用量は侵された関節の大きさによって、プレドニゾロンテブテート10〜50mgを使用できる。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)1回量80Uの筋注も非常に有効であり、コルヒチンの静注と同様に、経口治療できない術後患者の痛風発作の治療に特に有用できる。プレドニンを短期間使用することもあり、例えば、多関節の発作に対し20〜30mg/日を投与する。まれにはこれらの薬物の数種を組み合わせて使用しなければならない。
特異的療法に加えて、脱水を防ぎ、腎臓における尿酸結晶の析出を減らすために、安静と豊富な水分摂取が指示される。痛みをコントロールするためには麻薬(コデイン30〜60mg)が必要なこともある。炎症を起こしている関節の副子固定も有効である。血清尿酸濃度を下げる薬物療法は、急性症状が完全にコントロールされるまで延期すべきである。
慢性疾患の治療:急性発作の頻度はコルヒチン0.6mg錠の一日1〜3錠(忍容性と重症度による)の投与によって減少する。発作の前兆が最初に現れたときに1〜2mgのコルヒチン投与中に発症することがある。
コルヒチンは痛風結節によって引き起こされる進行性関節障害を遅延しない。しかし、そのような障害は防止でき、尿酸排泄薬で尿酸排泄を増加させるかもしくはアロプリソールで尿酸産生を止めるのどちらかか、または重症の結節性痛風においては両方のタイプの薬物を使って、尿酸の血清濃度を正常範囲に下げてずっと維持することにより多くの結節性沈着は分解される。尿酸値を低下させる治療は、結節を伴う痛風患者、血清尿酸値が持続的に9mg/dLを超える(0.53mmol/Lを超える)患者、尿酸値はさほど高くないが関節症状が持続する患者、腎機能に障害のある患者が適応となる。
急性発作は高尿酸血症の治療開始後、最初の数週間に進行する傾向があるので、高尿酸血症のコントロールは鎮静期の間に毎日のコルヒチンまたはNSAIDによる治療とともに開始するべきである。血清尿酸値の定期検査は、尿酸値低下のための薬物療法の効果を示す有効な指標となる。薬物の用量と選択は、血清尿酸値を有意に減少させるように調整するべきである。痛風結節の消散には数ヶ月または数年かかり、血清尿酸値を4.5mg/dL未満(0.26mmol/L未満)に維持する必要がある。
尿酸排泄療法では、500mg錠剤のプロベニシドかまたは100mg錠剤のスルフィンピラゾンのどちらかを投与し、用量を調整して血清尿酸値を正常範囲に維持する。開始用量は1/2錠を1日2回にするべきであり、徐々に1日4錠まで増やす。スルフィンピラゾンはプロペニシドよりも尿酸排泄への効果が大きいか、中毒性も高い。サリチル酢塩は両方の薬物の尿酸排泄効果に拮抗するので、使用を避けるべきである。アセトアミノフェンは、薬物の尿酸排泄作用への干渉がなく、相応の鎮痛性をもたらす。
アロプリノール、200〜600mg/日を数回に分けて投与すると、尿酸合成を抑制し、血清尿酸値をコントロールする。尿酸排泄薬としては、通常は開始用量を低くし、尿酸値がおよそ4.5mg/dL(0.26mmol/L)になるまで用量を増加する。尿酸形成の原因となる酵素(キサンチンオキシダーゼ)を抑制するのに加え、アロプリノールは新規のプリン合成の過剰を正す。それは、尿酸過剰やシュウ酸カルシウム腎結石を繰り返し経験する患者や重篤な腎不全の患者に特に有効である。既存の尿酸腎結石は、アロピリノールの副作用は、軽度の消化管の障害、潜在的危険をはらむ皮疹、肝炎、脈管炎、および白血球減少症である。
その他の治療的介入:全ての痛風患者、特に慢性的な尿酸過剰やシュウ酸カルシウム腎結石の患者は3L/日以上の水分摂取が望ましい。ときには炭酸水素ナトリウムまたはクエン酸三ナトリウムの5gを1日3回投与して尿をアルカリ化することも勧められる。アセタゾラミド500mgの就寝時の服用は、濃縮される夜間尿のアルカリ化には優れた方法である。あまり激しく尿をアルカリ化するとシュウ酸カルシウムの結晶の沈着が起こりやすくなるので注意が必要である。薬物は非常に効果的に血清尿酸値を低下させるので、プリン体を含む食品の厳格な制限はめったに必要としない。肥満患者には病気の鎮静期の間に減量を奨励すべきである。健康な皮膚の領域にある大きな結節は外科的に除去することもあるが;その他の場合は全て、血清尿酸値を低下させる適切な治療で徐々に消散させるべきである。腎結石を崩壊させるために体外衝撃波結石破砕術の使用を考慮することがある。
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