■生活習慣病 痛風
 

特発性高尿酸血症


特発性高尿酸血症

 非痛風性無微候性高尿酸血性の特異的な治療に関するデータはほとんどない。24時間尿中尿酸排泄量が正常で、9mg/dL以上(0.53mmol/L以上)の持続的高尿酸血症の40歳未満の人へのプロベニシドまたはスルフィンピラゾンの毎日の投与は慎重に行う。尿酸排泄過多の患者は尿路結石症を起こす危険性が高いので、アロプリノールの投与を受けるべきである。

 ピロリンサン酸カルシウム(CPPD)結晶沈着性関節炎

〔偽痛風)

 急性関節炎の間欠性発作、しばしば重症であるが無症侯性のこともある変形性関節症、特徴的な部位に関節軟骨の石灰化(軟骨石灰化症)を示すX線像など、多様な症状発現をするピロリン酸カルシウム結晶の沈着による関節疾患。

病因と罹患率

 原因は不明である。例えば、外傷(手術を含む)、アミロイドーシス、粘液水腫、副甲状腺機能亢進症、痛風、ヘモクロマトーシスのようなその他の条件との関連が多いことは、ピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶の沈着が、患部の組織の変性または代謝性変化が2次性であることを示唆している。症侯性の疾患は通常、60歳以上の人に現れる。X線上で認められる軟骨石灰化症の発現率は70歳でおよそ3%であるが、90歳ではほぼ50%に達する。男女とも同様に罹患する。

症状と徴候

 関節炎の急性または亜急性発作は、通常膝、またはその他の大きな末梢関節で起こり、多くの他の形の関節炎に似ている。発作はときに痛風のパターンに似ているが、それほど重症ではない。発作と発作の間には完全な鎮静があるか、または苦痛が継続することもあるが、多関節の軽度の症状はRAと同様である。これらのパターンは一生続く傾向にある。無症侯性軟骨石灰化症は、X線上で膝関節、股関節、線維輪、仙腸関節、および恥骨結合で観察される。

診断

 1滴の骨液中の針状、杆状、または平行六面体状のCPPD結晶を確認することが診断に役立つ(49章「炎症性および非炎症性の関節疾患の鑑別」の項参照)。結晶は白血球や組織破片の中に取りこまれているか、または浮遊しているのがみられることがある。偏光顕微鏡下でのそれらの外観は表55_1に示す。関節軟膏の、特に線維軟骨中の線状石灰化のX線所見は診断を助ける。

予後と治療

 予後は通常良好であるが、神経病性(シャルコー)関節症に類似した重度の関節破壊が起こることがある。

 コルヒチン1mg(0.9%塩化ナトリウム溶液にて20mLに希釈)を2〜5分かけて静注し、痛みが持続する場合、続いて1mgを12時間静注すると効果的である。(前述の「痛風」も参照)急性に貯留した滑液は排出するべきであり、液中の結晶の有無を調べ、微晶質のコルチコステロイド懸濁液を関節内に注入する。インドメタシン75〜150mg/日または同用量の他のNSAIDでしばしば急性発作を迅速に抑えられることが多い。対照試験の結果、コルヒチン0.5〜1.5mg/日の経口投与が急性発作の予防に有効であることが示されている。

塩基性リン酸カルシウムおよびその他の結晶疾患

 体全体の病的カルシウム沈着の多くは、炭酸塩置換ヒドロキシアパタイトおよびリン酸オクタカルシウムの混合物を含んでいる。これらの顕微鏡的な結晶は非酸性リン酸カルシウムであるために、「アパタイト(りん灰石)」よりも正確な用語として「塩基性リン酸カルシウム(BCP)」を使用するように推奨されてきた。石灰沈着性腱炎、石灰沈着性関節周囲炎、または強皮症や皮膚筋炎を併発した限局性石灰沈着症および汎発性石灰沈着症のようなリウマチ性の疾患において、これらの結晶は雪玉状の塊の中に生じる。さらに結晶は変性関節症の患者の滑液の中にも見出される。最もよく研究された例は、ミルウォーキー肩症侯群、すなわち主として高齢女性にみられる、繊維性腱板の解体による上腕骨骨頭の上方への脱臼状態の例である。

 BCP結晶は、関節腔裏層の滑膜細胞が細胞内取りこみ(エンドサイトーシス)をしている間にプロスタグランジンを放出する。細胞内でBCP結晶は中性プロテアーゼの絶え間ない放出の原因となり、成長因子として作用し、細胞分裂を促進する。BCP結晶の特性は破壊性の関節と関連づけられている。BCP結晶が関節を破って侵入するか、または石灰沈着性関節周囲炎の場合には、BCP結晶は好中球を誘引し、しばしば重篤となるような急性炎症を引き起こす。残念ながらBCP結晶を臨床的に有効に調べられるような決定的な分析法がない。塊状の結晶は透化型電子顕微鏡でしか確認することができない。BCP結晶は偏光顕微鏡下では複屈折しない(表55_1参照)。X線上ではBCP結晶は関節周囲に雲のように不透明に認識されることがある。

 経口投与や静注によるコルヒチン、およびNSAIDによる治療や、大関節が侵されている場合はコルチコステロイドエステル結晶懸濁液の関節内注射による治療が有効である。治療については急性痛風の項で前述している。

 シュウ酸カルシウム結晶は、血液透析または腹膜透析による治療を行った患者の組織中に沈着する。シュウ酸カルシウム結晶は、急性痛風の発作時および亜急性関節炎において好中球内に複屈折の両錐体構造を示して現れる(表55_1参照)。先天性シュウ酸症では、シュウ酸カルシウム結晶は骨髄のマクロファージや巨細胞中にあるといわれてきた。X線上におけるシュウ酸カルシウム結晶の沈着は、BCPの関節周囲の石灰沈着やピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶の軟骨への沈着と見分けがつかない。シュウ酸カルシウム結晶は血管壁や、患者によっては皮膚にも沈着することがある。

 コレステロール結晶は角がギザギザになった薄板状か、ときに針状となって、慢性変性または炎症性条件の滑液に現れるといわれている。コレステロール結晶は、滑膜間隙に移行する細胞膜内のコレステロールに由来する。コレステロール結晶の生物活性は明確にされてはいない。

 


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