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生薬名・・・・五味子 ごみし

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生薬名 五味子(ごみし)
基 原 モクレン科 Mognoliaceae 北五味子 Schizandra Chinensis Baill. (チョウセンゴミシ)の成熟果実を乾燥したもの。
性 味 味は酸、性は温。(帰経:肺・腎経)
主成分 精油(主として citral)・ schizandrin C23H32O6 ・ ビタミンA類物質・ビタミンC・有機酸など。有効成分についての意見はまだ一致しないが、最近の研究によるとエーテル抽出物には多種の薬理作用がある。
薬理作用 斂肺滋腎・生津斂汗・渋精止瀉
中性神経系の興奮作用・鎮咳去痰作用・子宮興奮作用・抗菌作用・トランスアミナーゼ降下作用
このほか、血圧降下・強心・感覚器(とくに視覚)の感受性増強などの実験報告もある。古人も経験的に、五味子には“補虚明目”の効能があるとしている。エーテル抽出物には副腎皮質の機能を促進する作用がある。
臨床応用 主として肺腎陽虚による咳嗽・遺精に用いる。
  1. 虚寒の呼吸困難・咳嗽に用いる。肺虚の呼吸困難・咳嗽で多量のうすい痰・舌苔が白いなどの寒痰・湿痰の症状があるとき(老人性慢性気管支炎・気管支拡張症など)には、乾姜を配合する。五味子は酸味で斂肺(鎮咳・消炎)し、乾姜は辛味で発散(血液循環促進)するので、収斂と発散が共同して鎮咳平喘の効果をあらわす。それゆえ古人は経験的に、“五味子は乾姜がなければ肺気を降し腎気を納めることはできない”といっているが、現代医学的にみると、これは薬物の共同作用により相互に効果を強め合うのである。ただし、この場合五味子は少量(3g以下)にすべきである。肺虚に外感をともなった咳嗽にも、五味子と乾姜あるいは生姜を配合する。
  2. 腎陽虚による慢性の下痢には、補骨脂を配合し、たとえば四神丸を用いる。
  3. 発汗過多で、身体がだるい・元気がないなどの症状をともなうときには、五味子を補益薬として使用し、麦門冬・党参を配合する。
  4. 神経衰弱に用いる。五味子の強壮作用と神経興奮作用を利用し、過度の疲労・思考力の低下・記憶力および注意力の減退などに適用する。アルコール浸出液や錠剤を投与すると効果がある。
  5. メニエール病に使用している。酸棗仁などを配合すると、一時的に耳鳴りおよび眩暈が軽減あるいは消失する。
  6. アレルギー性や掻痒生の皮膚疾患に用いる。五味子10gを80%アルコール100mlにつけて五味子チンキとし、1日3回5〜6mlを水で沖服すると、蕁麻疹や血管運動神経性疾患に効果がある。
  7. 慢性肝炎に用いる。単味の蜜丸あるいは茵ちん蒿・大棗を配合した蜜丸を投与すると、トランスアミナーゼ値を低下させ、有効率は約80%である。
用量 1.5〜9g。斂肺鎮咳には少量(1.5〜3g)を用いる。益気滋陰にはやや大量(6〜9g)を用いる。
使用上の注意
  1. 熱証の咳嗽・呼吸困難には禁忌である。また急性炎症や高血圧症・動脈硬化症には使用しない方がよい。
  2. 滋補には熟製したものを用い、虚火には生(なま)を用いる。
  3. 酸・渋の味がきついので、煎剤にはよくくだいて用い、丸剤の場合は蜜製すべきである。酸による上腹部不快感・胸やけには重曹を投与する。