生薬名 |
牛膝(ごしつ) |
基 原 |
ヒユ科 Amaranthaceae 牛膝 Achyranthes bidentata
Blume、川牛膝 Cyathula capitata Miq.
(イノコズチモドキ)の根を乾燥したもの |
性 味 |
懐牛膝:味は苦・酸、性は平。川牛膝:味は肝・微苦、性は平。(帰経:肝・腎経) |
主成分 |
懐牛膝は、saponin (加水分解すると oleanic
acid C30H48O3
・ glucuronic acid
様物質を生成する)・多量のカリウム塩を含む。川牛膝はアルカロイドを含む。 |
薬理作用 |
去オ止痛・活血通経・補益肝腎
鎮痛作用・子宮の興奮作用・利尿作用・鎮痙作用・降圧作用 |
臨床応用 |
古人は経験的に牛膝には下行する性質があるので一連の症状に効果があるとしている。“下行”とはだいたい以下のことを指している。
- 月経を順調にする・利尿する・排便を容易にするなど、“下方に”排出すること。
- 頭部や上半身の血液を“下方にみちびき”、身体上部の充血を軽減すること。
- 他の薬物の薬効を“下方”にみちびいて下半身に到達させ、下半身の疾患に効果を生じさせること。
以上の性質に基づいて、牛膝を以下の病症に用いる。 |
- 腰腿部の疼痛に用いる。腎虚・風湿・打撲捻挫などの原因を問わず腰腿痛には牛膝を使用する。
腎虚による腰痛には、牛膝の補益肝腎の効能を利用する。
風湿による腰腿痛には、牛膝は薬を“下行”させて去風・去湿・止痛の効果を強める。
打撲捻挫による腰腿痛には、牛膝に活血去オの力はあるが、他の活血薬・肝腎補益薬を加えるべきである。
- 淋証に使用する。古人は経験的に、“牛膝は淋証の要薬である。”といっている。ただし実際には、主として血尿や腰痛をともなう臨床、たとえば石淋(とくに腎結石)に適用する。それゆえ、腎石方には牛膝が補助薬として配合されている。熱淋(尿道炎など)で排尿痛・排尿困難があるときにも使用する。
- 気滞血オによる月経痛・無月経・稀発月経には、子宮収縮・鎮痛作用を利用して去オ通経する。
- 風湿による痺痛に用いる。
- 高血圧症で、頭痛・頭がふらつく・目がかすむなどの肝陽上行の症状があるときに用いる。
- 歯鹹の腫脹・疼痛に用いる。陰虚火旺による歯周炎などに適用する。古人は、“牛膝は血を下行するので、頭部の血熱を軽減する効果がある”としている。
|
|
用量 |
6〜15g、大量で30g |
使用上の注意 |
- 牛膝の性質は滑であるから、遺精・脾虚による泥状便・不正性器出血・妊婦などには使用しない。
- 生で使用すると破血去オの力が強く、熟用すると補益力が強い。
- 商品上、懐牛膝(主として河南省懐慶産)と川牛膝の区別がある。一般に懐牛膝は補益肝腎・舒筋健胃の力が強く、川牛膝は活血去オ・宣通関節の力が強いとされている。実際には両者の効能は大同小異で、使用上厳絡に区別する必要はない。
|