草丈30〜80cmになる多年草です。
北海道から九州にいたる全国の山中のやや湿った草地に稀に自生し、中国北東部、朝鮮半島、樺太、南千島、台湾などにも分布します。
五月〜七月に散房状の花序を頂生し、淡紅色の小花をつけます。
和名は、花序についた白い蕾と淡紅色の花が「鹿の子」模様に見えることに由来します。
根および根茎を乾燥したものが生薬「吉草根」で、浸剤またはチンキ剤として、ヒステリー、神経過敏症、精神不安、心悸亢進などに鎮静・鎮痙薬として用いられます。
精油 1〜8%を含み、主成分のイソキッソウ酸ボルニル(bornyl isovalerate)やボルニルアセテート(bornyl acetate)などには特有の強い臭気があります。
「吉草根」は、元来ヨーロッパ原産のセイヨウカノコソウを起源とする「ワレリアナ根」の代用品として日本薬局方の第一版から現在に至るまで収載されています。
しかし むしろ日本産のもののほうが、精油含量が高く、「ケッシルアルコール」など特有の成分も含んでいます。
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