今年の7月は記録ずくめの暑さだった。
8月に入ると関東は急に涼しくなり、過ごしやすい夏となったが、西日本は相変わらずの猛暑が続いているようである。
心から残暑お見舞い申し上げます。
十数年前、シンガポールに住んでいる知人Nさんと夏の九州でゴルフをしたことがあった。
彼が言うには、
「九州の夏はシンガポールより暑い。この暑さのなかでのゴルフはまさに耐暑レースだね」
さらに続けて、
「しかし、この暑さもせいぜい8月一杯でしょう。9月になると涼しくなるという希望があるから我慢できるんです」
最高気温だけ比べると、日本の夏よりシンガポールの方が高いとは言えないが、シンガポールは年中暑く、涼しくなるという期待が持てない。
シンガポールで生活していると日本の秋口の涼しさがとてもうらやましくなるという。
シンガポールでは水道の水まで生ぬるくて、日本に帰ってひんやりした水道水で顔を洗うと日本を実感するともいう。
日本人は「厳しい残暑」も遅かれ早かれ涼しくなることを知っており、そのうち涼しくなるから残暑なのである。
ところがシンガポールに限らず熱帯地方では年中暑くて、日本で言うところの「残暑」の概念は無い。
シンガポールは庭園都市と言われるほど緑の多い都市で、公園や道路などとても樹木が豊富である。
この地では樹木の成長が早く、街路樹を植えると数年の内に立派な並木になり、都市全体が緑で覆われるようになった。
ところが熱帯の樹木は一年中成長を続けており、大きくなるのが早いが、とてももろいという。
熱帯の樹木は年輪がないからである。
考えてみれば当然のこと、成長期と成長休止期があって初めて年輪が生じるのであって、年中成長しておれば年輪はできない。
年輪のない熱帯の木はもろいのである。
シンガポールへ行ったとき、日本では木の切株に年輪があると話すと、若いガイドがそれを不思議がり、是非それを見たいと言ったのにはこちらの方が驚いてしまった。
残暑が厳しくても、我が国では必ず秋がやってきて、樹木は紅葉したり落葉したりしながら年輪を刻んでゆく。