第6回「浜風にのって」(2001年8月25日)

「大河の一滴」

 「大河の一滴」は五木寛之のエッセー集で、3年ほど前ベストセラーになった。
 そのエッセー集が映画化されたと新聞に出ていたとき、私は何となく違和感をぬぐえなかった。人生観を述べたエッセーが映画になるのだろうかと思ったからである。

 この映画の完成試写会の案内が新聞に出ていて、これに応募すると、招待状が届き、妻と試写会に行くことになった。

 試写会は東京国際フォーラムのCホールで行われ、会場ホールに入ると、テレビカメラなど報道陣の多いのに驚いた。
 さらに客席にはいると、ここも客席の前の方に報道陣が数十人も並んでおり、完成試写会とはこんなにもたくさん取材陣が来るのかと思ったが、その時はその理由を知らなかった。

 試写会は露木さんの司会で、出演者の三国連太郎、倍賞美津子、安田成美さんと神山監督の挨拶があり、露木さんが最後に明日のワイドショーの方も楽しみにと締めくくって終わった。

 映画は原案:五木寛之、脚本:新藤兼人で、新藤兼人氏に師事した神山征二郎氏が監督したものである。
 金沢を舞台とし、ロシアのトランペッターと若い女性の恋愛感情を絡ませた五木作品らしい設定である。

 2時間弱の上映中退屈することはなく、名作かどうかは分からないが、観て損しない映画とは言えよう。
 原作エッセーがどのように映画に取り入れられているか、興味深く観ていたが、これは水の情景が多いくらいで、期待外れであった。

 エッセー集「大河の一滴」は文庫本も含めて200万部以上も売れたそうで、この映画はこの本を利用して、映画で二匹目のどじょうをねらったもののようである。

 翌日、テレビのワイドショーで試写会がどのように紹介されるか見たいとチャンネルを廻して驚いた。
 今話題の小泉首相の長男小泉孝太郎さんがこの日、マスコミに初登場だったのである。小泉孝太郎さんが試写会に来て、そこで初めてマスコミのカメラに収まり、インタビューを受けたのであった。

 報道陣が多かった理由はこれだった。小泉孝太郎さんが試写会に登場し、記者会見をすればたくさんのマスコミが集まる。
 映画「大河の一滴」も大いに宣伝になるという筋書きだったのである。

エッセーへ戻る
トップへ戻る