第8回「浜風にのって」(2001年9月8日)

ラジカセ

 使っていたCDラジカセが不具合となり、安いものがあれば買いたいと電気店を覗いて驚いた。
 10年ほど前に買った現在のものは2万円ほどしたと思ったのに、同じようなものが数千円である。

 安すぎるようで不安がないでもなかったが、駄目でも大した損は無いと、やや小型のCDラジカセを消費税抜き3980円で買った。
 中国製で、CDプレーヤーとカセットレコーダーにFM、AMラジオがつき、今まで使っていたものに比べて全く遜色ない。
 早速、CDをかけてみたが音色も悪くない。
 おおいに儲かった気分になった。

 この数年、中国や東南アジア製の安い電気製品、衣類、雑貨などが出回っている。
 ユニクロの衣料品がその代表例で、その価格は従来の何分の一で、品質も悪くない。 私の下着類はほとんどユニクロ製で、ズボンや帽子、バッグもユニクロになった。
 百円ショップがあちこちに出現し、「どうしてこれが百円?」といった品物が百円で売られている。

 農産物も中国や諸外国からの安価な輸入品が増えており、中国産のねぎ、しいたけ、い草には輸入規制がかけられた。

 現在の中国の人件費は日本の25分の1といわれ、ベトナムやミャンマーだともっと安いようである。
 これらの国に日本はじめ先進国が技術と資本を持ち込んで工場を作り、これらの工場で安くて品質の良い製品が大量に作られるようになった。
 このことを知識として知っていても、実際にラジカセを買い、ユニクロのズボンを買ってみるとその安さに驚き、「価格破壊」の現実が実感される。

 経済学者や評論家は物価下落を「良い下落」と「悪い下落」とにわけ、「悪い物価下落」を防がなければならないと言っている。また、デフレ基調からインフレ基調に持ってゆかなければならないとも言っている。

 ばく大な借金をかかえる政府や企業はインフレになるとその負担が減り、銀行も土地の値段が上がると不良債権の負担が減る。
 為政者も経営者もインフレを期待する所以である。

 経済学者がなんと言おうとも、一般庶民にとって物価下落は何でも歓迎だし、物価上昇は緩やかなものであっても容認できない。

エッセーへ戻る
トップへ戻る