第19回「浜風にのって」(2001年11月23日)

アンクルトリス

 横浜みなとみらいのマリタイムミュージアムで、柳原良平さん個展が開催された。
その記念に「私と船の絵」と題する柳原さんの講演があり、聴きに行った。

 

柳原良平といっても覚えている人は少ないかも知れないが、柳原さんは山口瞳、開高健さん達と昭和三〇年代に、サントリーの前身「寿屋」の宣伝で、一世を風靡した方である。

私と同年代の方なら、「トリスを飲んでハワイへ行こう」というコピーの記憶が残っているはずで、コピーは山口瞳さん、キャラクターのアンクルトリスは柳原良平さんの作であった。
その広告の絵に出てくる尖った鼻にはげた頭、首のない二頭身半のずっぐりむっくりがアンクルトリスである。

 

講演は子供の時から船が好きだった話、アンクルトリス誕生の頃の話や船の絵の話など、ホワイトボードに絵を描きながら話された。その絵がさすがプロと思わせるものがあって、私はホワイトボードの絵がすぐに消されてしまうのが惜しくてならなかった。

 

どの話も興味深く、話に聞き入っていたら、一時間半の話があっという間に終わった。

 

山口瞳、開高健の二人が亡くなり、柳原さんも相当な歳かと思ったら、まだ七〇歳だそうで、見た感じはずいぶんと若々しかった。

 

柳原さんのダークグリーンのブレザー姿に、私はアンクルトリスを思わずにはいられなかった。

 

もちろん、柳原さんはすらっとした体型で、髪もふさふさとしているが、そのかもし出されるものにアンクルトリスのモダンでお洒落な雰囲気が感じられるからである。

 

柳原さんの個展の方ものぞいてみた。

油絵や広告、挿絵、本の装幀、新聞漫画、アニメ、ポスターに船の模型など幅広い作品が展示されていて、その数の多さに驚いた。
そしてその大部分が何らか船に関係したものであった。切り絵で制作されたそのシャープな線と独特のフォルムがとても面白い。

 

 ポスターがたくさん展示されていて、その中で「シーロード八幡浜、7月20日、海の日にオープン」のポスターが目にとまった。

 

保存したいようなポスターで、柳原さんを起用するとは、シーロード関係者野中にセンスの良い方がいるものと感心した。

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