第22回「浜風にのって」(2001年12月16日)

山男のアトリエ

 畦地梅太郎が晩年を過ごしたアトリエが公開されていると聞き、早速訪ねてみた。
 案内書をたよりに探していくと、普通の住宅の門柱に30a四方ぐらいの看板がかかっていて、[畦地梅太郎 あとりえ(う)]と出ていた。

 まことにひかえめな看板で、気をつけないと見逃してしまう。さらにその下に「本日臨時休館日」との看板もかかっていた。

 そのまま帰るのも残念でたたずんでいると、中で工事をしていた人が「入れば見えますからどうぞ」と声をかけてくれた。
 アトリエを外からだけでも見てみたいと思い、住宅の脇を抜けて中庭に入ると、20坪に満たないぐらいの平屋の建物があり、入り口に「あとりえ(う)」の看板がかかっていた。
 側面のガラス窓から覗いてみると、6畳か8畳ほどの部屋に、版画がたくさん見えた。

 入り口のドアーが開いて
 「どうぞ中へお入り下さい。今日は所用があって休館にしておりましたが、少しの時間ならどうぞ」
と声がかかった。

 後でうかがった所、ここを管理されている畦地さんの娘さんであった。
 恐縮しながらアトリエに入ると、室内はまだ整理中の感じで、ハガキぐらいの大きさの作品が所狭しと飾ってあった。
 展覧会で観るような作品と違って、それぞれの作品が自由気ままといった感じで面白い。

 私も妻も八幡浜の出身で、先日の展覧会では「八幡浜の海」や「八幡浜劇場」が出ていて、大変懐かしかったと話した。
娘さんは
 「疎開していて、八幡浜駅のことをかすかに覚えています」
 「最近、八幡浜の景色を描いたものが五点ほど見つかったんですよ」
と話された。

 八幡浜の版画が新たに五点も発見されれば、これは大ニュースに違いない。是非早く観たいものである。

畦地さんが実際に版木を彫って作品を制作されていた所は隣の部屋で、見学できるように整備中とのことであった。
 所用があるとのことだったので、早々に辞したが、ふだんの日の三時以降だとゆっくり出来るので、またお出で下さいとの言葉を頂いた。

 畦地梅太郎のアトリエは作品の山男にふさわしく、素朴で温もりがあり、もう一度ゆっくり訪ねたいと思っている。

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