第27回「浜風にのって」(2002年1月20日)

冬の関東

 日本海側が雪になると、関東地方はたいてい晴天になる。
本年も正月2日まで関東の天気は悪かったが、3日になって日本海側が大雪となり、東京や横浜は雲一つない快晴となった。

 西高東低の冬型気圧配置になると、シベリヤ方面から日本海沿岸に向かって強い北風が吹く。この冷たい北風は日本海で水分をたっぷりと含んで雪雲を作り、この雲が陸地や山にぶつかって日本海側に大量の雪を降らせる。

 この風が関東北部山地を越えて関東平野に達する頃はすっかり雲が切れ、乾いた空気となってもう雪を降らせる力はない。この乾いた風は北関東で「空っ風」と呼ばれ、冬の名物である。 空っ風が吹くと、関東平野は晴れとなる。

 新潟に住んでいた頃、新幹線で吹雪の越後湯沢を通り、谷川岳の下をトンネルで抜けると、一変して快晴となってびっくりしたことが何度もあった。
 川端康成は「トンネルを抜けるとそこは雪国であった」と書いたが、雪国の人達は「トンネルを抜けると、そこは太陽がさんさんと輝いていた」となるのである。

 近くの高台に出ると、手前の丹沢山の向こうに富士山の頂上だけが見える。
この富士山の見える日を毎日記録している人がいて、その人によると、富士山が見える日の一番多いのが1月で、月に15日ほど富士山が見えるという。
次いで12月と2月が富士山が良く見え、月に10日前後富士山が見える。6月から8月は富士山の見える日がほとんどなく、8月はこの7年間で1日しか富士山が見えなかったそうだ。

 日本海から関東平野に達した空気は、その中に含んでいた細かい塵も雪の核として降らしてしまい、清浄で透明な空気となっている。
その上、湿度も低いので視界が良く、冬は富士山が良く見える。

 1、2月の関東平野は夜の冷え込みが激しく、四国や九州と比べると朝晩は寒いが、昼間は太陽が出て、日溜まりはぽかぽかと暖かい。
関東の冬は晴れた日が多く、太陽が照ると気持ちまで暖かくなる。

 今まで各地に住んでみて、冬は関東地区が一番気持ち良く過ごせるのではないかと思っている。
関東の冬は太陽と澄んだ空気、凛とした風情が心地よい。

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