第29回「浜風にのって」(2002年2月3日)

「定年からの青春」てんまつ記(2)

 本を出すかどうかは別にして、とりあえず編集者に会って話を聞くことにした。編集者に電話すると4日後に面会のアポイントが取れた。

 この4日間に、私の中にエッセー出版の夢が次第に膨らんできて、もうすっかり本を出版する気なってしまった。
2刷、3刷と本が売れるようになるのではなかろうか、エッセーの依頼が来て、エッセー書きに忙しくなるのではなかろうか、などとバラ色の世界が頭の中に浮かんでくるのであった。

 編集者に会って、色々聞いてみて出版するかどうか決めようと思っていたが、女性の編集部次長という方に会うと、たいした質疑をすることもなく、その場で500部のBタイプ出版契約書に判を押してしまった。

 契約をすると、後は出版社のスケジュールにしたがって作業が進められるだけである。
本の製作期間は思っていたより長く、通常5ヶ月から6ヶ月かかるようで、契約したのが7月中旬で、発行は年明けになるとのことであった。

 本の製作は「装丁一任」で契約したので、私のやることはゲラの校正が主なものである。
校正は何度繰り返しても修正個所が見つかって充分とは思えなかったが、初校に続き再校も編集者の協力もあって無事終了した。

 表紙や帯のデザインも順調に進んで、予定より早く12月初めに製本が完了するので、発行日は12月15日とし、最終金の振り込みを確認後、著者受け取り分を送るとの連絡が来た。

 12月9日に中型のダンボール3個で本が送られてきた。500冊印刷して、その半量250冊の私のエッセー集「定年からの青春」である。
1冊を手にとって見ると、思ったより良い出来映えであった。装丁や帯のデザインがコピーで見たときよりすっきりして、タイトルの青春にふさわしいようである。

 プロの文筆家を除けば、誰も自分の本を出版することは一つの夢であろう。
その夢が実現し、この本を手にとって、表から裏から眺め、ページを繰って、何度も眺めた。

 親戚知人や会社の先輩同僚、友人達100人余りにこの本を贈ることとにし、12月中旬に全部発送した。

 それから年末年始にかけて、わが家は大賑わいになった。(続)

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