第38回「浜風に乗って」(2002年4月7日)

昼下がりの情事

 テレビで映画「昼下がりの情事」を観た。
 日曜日の夜、NHK教育テレビでこの映画が上映され、しばらく観ていると、そのまま映画に引き込まれた。映画が始まって2時間余り、久しぶりに、画面に釘付けにされた時間であった。

「昼下がりの情事」は映画全盛期、昭和32年のアメリカ映画で、ワイルダー監督、オードリー・ヘップバーン主演のラブコメディである。

 映画をよく観たのは昭和30年代までで、その後、ほとんど映画館に行かなくなった。
 10年ほど前、ビデオを買ってビデオで映画をよく観たことがあるが、これも1年ほどしか続かなかった。

 最近、映画が少し復活し、外国映画も日本映画も話題になることが多いが、私が映画館に足を運ぶのは、せいぜい年に1回か2回なので、最近の映画について知っているわけではない。
 それでも、テレビで時々放送される最近のアメリカ映画を観ると、なんだか違和感を禁じ得ないのである。

 それはコンピューター・グラフィックを使ったSFものであったり、大がかりな仕掛けを売り物にしたり、人が何人も殺されたりで、すべてが大仰過ぎるのである。
 その上、宣伝が大がかりで、かえって不信の念がして、映画館に行こうという気にならない。

 私が若い頃好きだった映画はヒチコックの映画と黒沢映画である。
 ヒチコックの「ハリーの災難」「裏窓」「鳥」「めまい」や、黒沢の「天国と地獄」「椿三十郎」はその後ビデオで観てもまったく飽きさせない。

 その面白味は何であろうか。
 私には映画評論をするほどの能力はないけれども、ヒチコックや黒沢映画に限らず、名作といわれた映画は人間の心理描写が素晴らしく、人間味豊かな作品ではないかと思っている。

 それにくらべ、最近のアメリカ映画は映像と音で観客に刺激を与えることばかりねらっているように感じる。

 アニメ映画「千と千尋の神隠」は国内で大ヒットし、ベルリン映画祭で大賞を獲得した。
 北野武監督の映画も外国で評価が高い。
 これらの映画は人間味豊かな作品のような気がするので、一度観なければと思っている。

(ワイルダー監督は3月27日、95歳で亡くなった)

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