第39回「浜風にのって」(2002年4月13日)

富士山と桜

身延山久遠寺のしだれ桜を見に行った。

東名高速を西に30分ほど走ると富士山の頂上が見えかくれするようになり、突然、正面に富士山が迫って来るように現れた。一瞬、目が富士山に吸い寄せられ、ハンドルの手を忘れるほどであった。

 

御殿場に入ると富士山の全容が見えてきて、その美しい姿に見とれてしまった。

助手席の妻は「富士山を見ないで道路を見て」というが、つい富士山の方に目がいってしまう。

 

今までに何度も富士山を見ているが、この日の富士山はその中でも一番素晴らしい富士山であった。冠雪が多く、山容の上半分ぐらいが透明なスカイブルーの空に栄えて白く輝いていた。

 

昼過ぎ、日蓮宗総本山久遠寺に着いた。境内には大きな堂が並んでいて、桜は満開であった。

その中に樹齢400年といわれるしだれ桜があって、勢いが衰えることなく垂れた枝にびっしりと花を付けていた。

幹の大きさは直径60か70センチほどであまり大きくはないが、やはり樹皮には古色が出ていて、永年の風雪に耐えた強さのようなものが感じられた。

 境内周辺には数多くのしだれ桜の古木があり、うっそうとした杉木立と併せて、この寺の歴史が偲ばれる。

 

私たちはこの寺を早々に切り上げ、帰途についた。

浅間神社に寄って、そこから西日を浴びた富士山を見たいと思ったからである。

 

浅間神社方向に進んでいくと、富士山が正面に見えてきた。西日を浴びた富士山は雲一つない空にきつ立していて、圧倒的な迫力であった。

 

浅間神社に入ると桜が満開で、その向こうに薄い肌色のような雪を被った富士山が見えた。

この富士山を何と表現すればよいか言葉が浮かばない。美しいとか見事というより、神々しいと言えば近いであろうか。

富士山を眺めていると、「これが日本なんだ」との気持ちがこみ上げてきた。

 

私は「高度な工業製品や清潔な都市などが日本を代表するものだ」と思ってきた。この気持ちはこの日の富士山を見て変わってしまった。

桜の咲き誇る中での富士山は工業製品などとは比較にもならない。

 

 「富士山と桜」がなんといっても日本のシンボルである。                   

 

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