店頭で食べたり、持ち帰ったりできるファストフードが全盛で、その代表的なものはマクドナルドのハンバーガーやケンタッキー・フライドチキンなどアメリカ生まれの食品である。
最近はこれらアメリカ生まれの食品にとどまらず、多くの食べ物がファストフード化するようになった。
コンビニをのぞいてみると、おにぎり、サンドイッチ、弁当にお茶まで、すぐ食べられるものが大きなコーナーを占めており、スーパーでは調理済みの総菜が並んでいる。
チェーンレストランでは調理済み食品が配送され、店では温めるだけといったメニューが増えている。
このような食品のファストフード化に反対する立場から、「スローフード」という言葉が生まれ、「スローフード運動」が展開されるようになった。
スローフード運動とは、食材や調理法、食べ方において、ファスト(速い)から、文字通りスロー(ゆっくり)に戻ろうという運動である。
島村菜津著「スローフードな人生」を読んだ。
この本はファストフードに立ち向かうスローフード運動の発祥地、イタリアからのレポートである。
ローマではマクドナルドが出店しようとした時、激しい反対運動が起きた。
その理由の一つはマクドナルドを受け入れると「手作りパスタのローマの味」が忘れられるのではないか、というものであった。
スローフード運動のねらいは、伝統的な食材や料理法を守り、地域に根ざした食文化を後々まで伝えようとするもののようである。
わかりやすく言えば、それぞれの土地に、その土地の特産品や名物料理を残してゆこうというのがこの運動である。
現在はローマでマクドナルドの店があちこちに見られるようになったが、それでもイタリア全体で147軒(96年)で、日本は4000軒(97年)だという。
私は外出先で軽い昼食をとるとき、ファストフード店でサンドイッチとコーヒーですませたり、コンビニでおにぎりや弁当を買って食べることがよくある。
手軽で、待ち時間もなく、安い値段で食事がとれて、とても助かっている。
スローフード運動の考え方には賛成だけれども、ファストフードの便利さから逃げることは到底できそうもない。