ハギ(写真)、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ
万葉の歌人、山上憶良がこの7種の花を歌に詠んだ事から、これらの花が秋の七草と言われるようになった。
1300年ほども前の人々は、秋になるとこれらの花を観て楽しんだということであろう。
現代の我々からみると、この秋の七草は実に地味な花ばかりである。
クズは今も土手や丘陵地などに自生し、地面を覆うか樹木に巻き付いて茂っているが、葉陰の赤紫の小さな花に気づく人は少ないであろう。
ハギ、オミナエシ、フジバカマは近寄ってみなければ花だと判らないほどで、ススキは色も形も花としての華やかさは感じられない。
わずかにナデシコとキキョウははっきりした花弁を持って花らしいが、それでもつつましく、控え目である。
考えてみれば、花屋の店頭や庭先を飾っている華やかな現代の花は、近年になって移入された外来種か品種改良された植物ばかりである。
このような植物が万葉の時代にあるはずもなく、山上憶良の時代にはハギやススキなど七草の花が秋を彩る数少ない花だったのであろう。
万葉の人々は自然に同化した野の花をめでて秋の風情を感じていたのである。
昭和になって、菊池寛や高浜虚子などの文人や学者の推薦によって、新聞社が新秋の七草を選んだ。
ハゲイトウ、コスモス、ヒガンバナ、アカマンマ(イヌタデ)、キク、オシロイバナ、シュウカイドウ
がその7種で、山上憶良の7種と比べると随分と色彩ゆたかで華やかである。
それでは平成にふさわしい秋の七草はどのようなものであろうか。
インターネットで秋の七草を投票した結果が出ていて、その得票の多いものから7種を挙げると次のようになる。
ハギ、キキョウ、コスモス、ススキ、リンドウ、ナデシコ、ヒガンバナ
万葉の秋の七草と同じものが4種もあった。
たくさんのカラフルな花が出回るようになっても、現代人は万葉人と同じように、ハギやススキに秋を感じるのだろうか。
私なら、公園や遊園地でじゅうたんを敷いたように咲いている赤いサルビアと黄色いマリーゴールドを秋の七草に選びたいと思う。