新聞社のシンポジウムで、五木寛之さんの講演を聴いた。
講演は「報道は表面的なデーターの報告だけでなく、その深層にある心を伝えなければならない」との主旨だったように思う。
ここでは本題から離れて、五木さんが話された「髪」の話を紹介したい。
その話は次のようであった。
「私は髪を年に2回しか洗いませんでした。最近は季節ごとには洗うように努めています。毛根を保護している皮脂を除くことは毛髪の生長に良くないのです。ホームレスで頭のはげた人を見たことがなく、大抵はぼさぼさでも、髪がいっぱいあるでしょう」
場内は驚きと溜め息と笑いの何とも言えないどよめきに包まれた。
五木さんの髪を見ると、白髪は混じっているが、70歳とは到底思えぬふさふさの髪である。
私はこの話をエッセーで読んだこともあって、大いに気になっていた。
この数年、私は週に4日か5日もプールに通うようになり、泳いだ後は必ず風呂に入り、リンス入りのシャンプーを使って髪を洗ってきた。
そのせいかどうか分からぬが、このところ前頭部の薄さが目立ってきたのである。
知人からはリンスも髪に大敵だとも聞いた。
リンスは髪の毛の表面に薄く皮膜をつけ、髪の毛を保護するもので、これが皮脂を取り除いた毛根にまで達すると髪に栄養が回らなくなり、髪が栄養失調状態になるというのである。
髪が栄養失調状態になると、当然、髪が細くなりその内に抜け落ちる。
半年ほど前からプールへ行ったときもお湯で頭を流すだけにして、シャンプーを使って洗うのは多くても週に1回程度に減らしている。
五木さんのように季節ごとに1回洗髪する、すなわち年4回の洗髪に比べれば多いが、少しでも貴重な髪を大事にしたいと気を使っているのである。
私の親の世代は今のように頭をあらうこともなく、ましてリンスなどはなかった。
それでもはげた人もおり、おやじも髪が薄かった。
シャンプーを止めても、親程度に髪が薄くなるのは避けられない事なのかも知れない。
そうであったとしても、シャンプーが頭髪に良くないと言われれば、シャンプーを減らして、頭髪を大事にする他はないのである。"