10年ほども前になるが、ファミリーレストランに入ったところ、メニューに「ポパイエッグ」と出ていた。
ウエイトレスに聞くと、ほうれん草の上に玉子を載せたものだという。
たのんでみると、ソテーしたほうれん草の上に半熟の目玉焼きが載っていて、玉子にしょう油をたらし、混ぜながら食べると、なかなかの味であった。
ポパイとはほうれん草をイメージしたもので、素晴らしいネーミングである。
「ほうれん草ソテーに半熟玉子添え」では印象に残らないが、「ポパイエッグ」なら一度聞けば忘れない。
最近は洋風の料理が多くなって、カタカナのメニューが増え、一度聞いただけではとても覚えきれない。
特にイタリア料理がブームになって、エスカベッシュ、カルパッチョ、ポアレ、フリットなどとメニューにあっても何の事やら分からない。
イタリア語だと全く語感がないので想像すら出来ない。
「リゾット」「パエリア」「クッパ」はそれぞれイタリア、スペイン、韓国の米料理で、「イタリア雑炊」「スペイン風炊き込み」「韓国おじや」といえば分かりやすいのにと思う。
これは年配者の考えることで、雑炊やおじやでは若いカップルなどは食べる気が起きないのだろうか。
料理の呼び名で面白いと思うのは丼(どんぶり)の名前である。
とり肉を玉子でとじたものを鶏玉子丼と呼ばないで、親子丼と呼ぶところが気が利いている。
とり肉を牛に代えると他人丼となり、かも肉にすると従兄弟(いとこ)丼となる。
かまぼこを玉子でとじたものは、かまぼこを木の葉に見立てて木の葉丼で、油揚げがご飯の上一面に載った丼はきつね丼である。
これらの丼はどれも関西が発祥のようで、関西人の遊び心がその名前に良く表れている。
学生のころ、大衆食堂でカツ丼を食べるのはぜい沢でご馳走であった。
食堂の壁に丼の名前と値段がずらりと並んでいて、財布を考えながら丼を選んで食べたころが懐かしい。
カタカナ名前のファーストフード店でセルフサービスのハンバーガーなどを食べるより、食堂でしょうゆ味の丼を食べたいと思う。