「弁当忘れても傘忘れるな」
これは北陸や新潟でよく言われる事で、この地方では天気が非常に変わりやすい。
晴れていると思っていたら、一転して雨になる事も珍しくない。
特に10月ごろからは秋雨が降り始め、天気の変化が激しく、晴天が続かない。
私のいた町では学校の運動会が5月に行われ、なぜかと思ったら、秋は雨が多いからとの事だった。
12月中旬ごろから雨はみぞれや雪に変わり、年末から1月にかけて雪になる。
最近は暖かくなって、1月でも雨になったり、積もった雪もすぐに溶けるようだが、私がいたころは1月から3月初めまでは雪であった。
外へ出るときは、いつもゴム長靴を履き、フードの付いたキルティングのコートを着るのが私のスタイルだった。
若い人はスノートレと称する防水したスニーカーのような靴を履く人が増えていたので、最近は長靴が減っているかもしれない。
この時期は、当然ながら洗濯物を外に干す事ができない。
その上、気温が低くて湿度が高く、洗濯物が乾かない。
廊下に物干しざおを通して干していたが、乾くのが遅く、家の中は洗濯物だらけになっていた。
当時は除湿器を使う人もいたが、最近は乾燥機付きの洗濯機があるので楽になったろうと思う。
新潟生まれの知人が東京で冬を過ごして、
「東京では冬でも布団が干せるのですねー」
と、感心して話したのに、こちらの方がビックリした事があった。
新潟では雪の期間は布団を干せない。
それだけでなく、太陽が出ていても、布団を干して家を空けるのは禁物である。
布団を干したまま、少しの時間だからと外出し、布団がびしょぬれになった人がいた。
晴天がにわかに雨になったのである。
3月になり、太陽の日差しが強くなって、昼間が長くなると、雪がどんどん溶けて、黒い土が見えてくる。
黒い土からふきのとうやツクシが顔を出し、タンポポの花が一斉に咲いて、雪国に春が訪れる。
山には白い雪が残っていても、平地では一斉に草木がもえ、小鳥たちがさえずり、人の足取りも軽くなって、春がやってくる。
雪国の春は一番活気があって、美しい季節である。
(写真は1984年2月の我が家)