第86回「浜風にのって」(2003年3月15日)

冬の北海道

現役のころ、北海道の関係会社から、 「仕事関係の客も北海道に来るのは観光シーズンばかり、冬にはだれも来ない。
冬に来れば北海道の事が良く分かるし、大歓迎しますよ」と言われた事があった。

これが頭に残っていて、冬の北海道には一度行きたいものと思っていた。
最近、冬の閑散期に北海道を安く巡るツアーが発表され、先日、ようやく2泊3日で冬の北海道に行き、念願がかなった。

ツアーは1日目、羽田から函館空港、函館観光、湯の川温泉泊。2日目、大沼公園、長万部を経て洞爺湖温泉泊。3日目、札幌を経て新千歳から羽田空港。

函館は夜景が素晴らしく、ナポリ、香港と並んで、世界の三大夜景に挙げられ、浅田次郎さんによると、中でも函館が一番だとあった。

函館の夜景が世界一だとしても、函館に灯火が特別に多いとも思えず、東京や横浜の夜景と大差ないものと想像していた。

ところが、函館の夜景は想像していたものよりはるかに素晴らしかった。
標高333bの函館山展望台に立つと、灯火の輝く市街地が暗い海に挟まれて女性のウエストのようにくびれて輝いていた(写真)。
見事な夜景に息をのみ、寒さを忘れてくぎ付けになってしまった。

ガイドの説明によると、この日は雪が残っており路面もぬれていて、灯火が一段と映えて見え、100万jの夜景が120万jにも見えるとの事だった。
函館の夜景を見ただけでも冬の北海道に来たかいがあった。

2日目は雪が降り、洞爺湖の展望台では目が開けられないほどの地吹雪もあったが、雪の中をバスは平気で走り、予定通り早めに洞爺湖温泉に着いた。
洞爺湖温泉は有珠山の噴火で大きな打撃を受け、再開して二年たつが、まだまだ以前のようなにぎわいには遠いとの事であった。

3日目は洞爺湖から札幌に向かい、前日に降った雪で、雪景色が素晴らしい。
北海道の広々とした大地が雪で覆われ、エゾマツはクリスマスツリーのように雪をかぶって、バスの車窓から目が離せなかった。

養老孟司さんによると、旅先で良い景色を眺めるとき、脳内には幸福感をもたらすエンドルフィンという物質が分泌されるという。
今回のツアーもエンドルフィンがたくさん出た旅であった。

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