〈中山美穂さんがタラの芽のてんぷらをつまみながら、大喜びでビールを飲んでいる〉
これはビールのテレビCMで、だれでも観ているのではないかと思う。
山菜はこのCMのように若い人に人気があるのであろうか。
私には若い女性が、山菜の天ぷらを「おいしい!」と本当に思って食べているとは信じ難いのである。
私が新潟や群馬に住んでいたころ、いただき物の新鮮な山菜を天ぷらやおひたしにして食べていた。
山菜は季節感を楽しむものであって、そんなに味の良いものとは思わなかった。
天ぷらにするなら、タラの芽よりもえびや新鮮な魚の方が美味いと思うし、おひたしならコゴミよりもホウレンソウの方が美味いと思う。
雪深い地方では冬の間、青物などの新鮮な野菜が今のようには手に入らなかった。
人々は雪が来る前に野菜を漬物にして保存し、冬の間に食べるのが習わしであった。
このため、雪国では漬物が発達していて、おいしい漬物がたくさんある。
今では雪国も南国と同じように青い野菜が売られているけれども、家庭によっては今でもたくさんの漬物を用意する所も残っていて、その漬物がとてもおいしい。
冬の間、全く青物を見ない雪国の人たちは、雪の残った土から顔を出す新鮮なフキノトウに感激し、久しぶりの新鮮な野菜として口に運んだに違いない。
子供のころ、雪国に育って、この様な思いをした年配者なら、現在でも昔の故郷の事を思い出して、山菜を懐かしく味わうと思う。
小さいときから飽食の時代に育ってきて、子供のころに山菜など食べた事がない世代が、フキノトウやタラの芽をおいしいと言って喜ぶのが解せないのである。
私自身について言えば、子供の時から山菜など食べて事がなく、山菜を食べようとは思わない。
まして、スーパーで売られている栽培もののタラの芽やフキノトウを買って食べようとは思わない。
私の思いこみのある食べ物と言えば、今ではジャコテンと呼ばれているテンプラである。
テンプラは今もおいしいと思うし、テンプラを食べると子供のころを思い出す。
残念なのはジャコテンが上品な味になって、高級品になった事だ。
(写真はフキノトウが成長して花になったもの。こうなるともう食べられない)