第93回「浜風にのって」(2003年5月3日)

食物考(3)食物繊維

子供のころ、次のような話を聞いた。

「日本人は穀類や芋ばかりたくさん食べているので、欧米人に比べて体が小さい。
その上、このような物ばかり食べていると、頭の働きまで悪くなる。肉や魚を食べ、牛乳を飲まないと、とても欧米人にはかなわない」

当時は戦争に負けた影響が強く残っていて、日本人は欧米人に対してコンプレックスを持っていた。

欧米流はすべてが善で、日本流はすべてが悪といった風潮からこのような事が言われたこともあるが、当時の日本人の食事が貧しかったことも事実である。

その後、経済成長とともに食事が豊かになり、若い人の身長も高くなって、足の長い欧米人の体型に少し近づいてきたようである。

現在の日本は、食物があふれ、食べ物の対する考え方もすっかり変わってしまった。

肉を主体とした欧米流の食事は高カロリーで肥満の原因となって不健康といわれるようになり、反対に日本食は低カロリーで健康的といわれるようになった。

最近は高カロリーのものは敬遠され、低カロリーのものがヘルシーといって好まれるようになっている。
「カロリーカット」「低カロリー」「甘さひかえめ」と低カロリーをアピールした食べ物や飲み物が売り出されている。

私が子供のころ、ゴボウやコンニャク、ヒジキなどは食べても消化されず、栄養にならないので食べても無駄と教えられたように思うが、最近はこれらのものもヘルシー食品として注目されている。

ゴボウやコンニャクなどは食物繊維を多く含み、この食物繊維は消化されないので、腸を通過する時、有害物質を体外へ排出する働きがある。
食物繊維をたくさん含む食べ物を食べると、食物繊維の働きによって生活習慣病や癌(がん)の予防、便秘の予防など多くの効能が認められている。

現在の日本人は食生活の欧米化によって食物繊維の摂取量が減り、アメリカやカナダなどよりやや多い程度で、ウガンダやケニアの1割だという。
そのためか、日本人の大腸がんが増えているそうで、もっと食物繊維を摂った方がよいようである。

私はそれほど洋風の食事をしているのではないが、戦後を思い出して、もっとイモや麦を食べた方が良いかも知れない。

(イラストは食物繊維の多い食品)

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