20年近くも前のこと、四川料理の店でマーボ豆腐が辛(から)すぎて食べられなかった事がある。
10数年前に東南アジアを旅行した時は、バンコックのレストランで出た料理にトウガラシがふんだんに使われていて、到底食べることはできなかった。
今思えば、その当時はトウガラシに慣れなくて、少しのトウガラシでも舌が敏感に感じたのではなかろうか。
辛くて食べられなかった料理でも、今なら食べることができるのではなかろうかと思っている。
中国料理の料理長に聞いた話によると、日本でイタリア料理がブームになった10数年前から、日本人の舌はニンニクとトウガラシになじんできたという。
それまでは中国料理でニンニクやトウガラシを多く入れると食べ残しが多かったのに、最近は少しぐらいニンニクやトウガラシを多くしても食べ残しは出ないという。
私は特別にイタリア料理や辛い料理を食べたのではないけれど、世間の流れのなかで、私の舌も少しずつトウガラシやニンニクに慣れてきたようである。
最近はニンニクがきいて、辛味のある方がおいしく感じるようになった。
我が家でもトウガラシとニンニクを切らしたことはなく、いろいろな料理にトウガラシやニンニクを使っている。
カレーやギョーザにはたっぷりとニンニクを入れるし、いため物には油にニンニクやトウガラシの風味を含ませて調理することが多く、きんぴらのような煮物にもトウガラシを入れている。
トウガラシの代わりに、トウバンジャン、コチジャンのような辛味調味料やチリペッパー、カイエンペッパーを使うこともあり、ニンニクやトウガラシの入っていない肉料理などは物足りないと感じるようになった。
元来、日本の料理は素材の風味を生かし、しょう油、みそ、塩、砂糖、酢ぐらいで味付けして調理するもので、ワサビや七味、サンショウなどの香辛料は料理にそえて出すていどであった。
このような味に慣れていた私の舌が刺激の強いニンニクやトウガラシを好むようになったのは舌が鈍くなったのであろうか、進化したのであろうか。
いずれにしても 、私はニンニクのきいたピリ辛料理を食べないではすまされない。