第96回「浜風にのって」(2003年5月24日)

メール碁

囲碁を覚えたのは大学に入ったころなので、もう半世紀近くも前のことである。

この間、濃淡はあったにせよ、私はずっと碁を打ってきた。
といっても、石を握って対局していたのは20年ほど前までで、その後は石を握ることは少なく、ここ10年ほどはほとんど石を握っていない。
石を握らなくて碁を打つというと不思議に思うかもしれないが、30年ほど前から「郵便碁」で碁を打ってきた。 

郵便碁とは葉書のやりとりで対局する碁で、葉書に着手を書いて相手に送り、相手もそれの応手を葉書に書いて返信する。
葉書は大体1週間前後で往復するので、2年ほど葉書をやりとりすると勝負がつく。

生活の1部になっていたこの郵便碁が、最近、少し雲行きが変わってきた。

葉書の代わりにインターネットのメールを交換する「メール碁」をする人が増えてきたのである。
葉書で対戦していた相手からも、郵便碁を減らしてメール碁を増やしていると書いてきた。

メールだと瞬時に返事が返ってきて、とても気ぜわしくなるのではないかと、私はメール碁を敬遠していたが、郵便碁の碁友の勧めもあり、私もメール碁を始めることにした。

葉書をメールに切り替え、5人とメール碁対局を開始した。
メール碁を始めてみると、確かに返事が早い。
同じ人から1日に3回の返事があった事もあるが、普通は1人当たり1日1回の返事で、この分だと3か月か4か月ほどで終局になりそうである。

 1日で返事が返ってきても、メール碁は葉書を書く時間が要らないので、始める前に懸念していた追っかけられるような気ぜわしさは全くない。
それよりもメールが待ち遠しい毎日である。

ただ、葉書のやりとりは、手書きの文字から人間味も温かみも感じられるのだが、メールではこれがないのは少しばかり残念なことではある。

若い人が碁や将棋をしなくなって久しい。碁も将棋も年齢に関係なく対戦できるゲームなのに、私の郵便碁やメール碁の相手は60歳以上の人ばかりである。

最近、テレビアニメの影響から、小学生に囲碁ブームだそうである。
近い将来、この人達ともメール碁を打ちたいものと思っている。

(図はパソコン上の棋譜画面)

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