思いつくまま*2008.7‐12*
2008.12.27 賓主互換
茶道ではよく《賓主互換》という言葉を聞きます。
「賓」はお客のこと、「主」は亭主のこと。
亭主を経験して初めて客の在り様が分かり、客を経験して初めて亭主の在り様が分かる。つまり、お互いの立場をそれぞれ経験してみれば、お互いに相手の在り様、気持ちが分かるということです。
茶事に招かれた客は、一期一会の気持ちで亭主を敬愛し、また亭主も客が茶の達人であろうとなかろうと、心のうちでは達人と敬う・・・これが亭主ぶり、客ぶりなのです。
つまり、相手の立場・気持ちになって接するということで、これはまさしく「思いやり」の精神に通じます。
この「賓主互換」は茶道に限らず、日常の友人関係、夫婦関係、親子関係など幅広く言えます。この精神があれば、相手にあまりきつい言葉をかけたり、不愉快な行動をとることはなくなると思います。
茶道は ただ点前手順を学んでいるようですが、知らず知らずの内に周囲に対する「思いやり」や「譲り合う心」を教えてくれます。この精神はつつましくおごらぬ様の侘びの精神でもあると思います。
茶道をかれこれ40年以上やっていて、ようやく見えてくるものがあります。
new2008.12.03 嬉しい一言
今日の稽古で、私にとって嬉しい一言を発してくださった方がいらっしゃいます。
稽古が終わって、ちょっとTea Breakをしていた時のこと。
今日お稽古に見えたその方は、リタイアされて趣味をいろいろ楽しんでいらっしゃる方です。琴、謡それに茶道等を。稽古日にはきちんと着物でみえ、急に「今日は○○のお点前をしましょう」と私が言っても、きちんと要所要所を押さえたお点前をされます。
そして今日こうおっしゃいました。「いろいろ趣味をしていますがそれぞれ皆一番。お茶も一番、謡も一番・・」と。趣味に優劣をつけずにそれぞれに一番という気持ちで取り組んでいらっしゃる姿を目の当たりにして、私は嬉しくなりました。同時にちょっと反省が。私も趣味に書道もしているのですが、私の中では「茶道が一番。書道は二番」と優劣をつけていたのです。書道の先生に今まで申し訳ないことをしてきたと大いに反省です。
ちなみに、今の若い方は、お勤めをされていらっしゃる方が多く、どうしてもお休みされたりすることがあります。私はそのような時には、《お仕事が一番、茶道は趣味のことだから無理されないでね》と言っていました。所詮趣味のことですから、忙しい時やゆっくり休養をとりたいときに無理にお稽古に来られなくても・・・という考えからです。
仕事と趣味では違うと思いますが、所詮趣味のことであっても今日のその方の一言が、私の茶道をお教えすることへの励みとなったことは事実です。
2008.11.16 正座
今日の朝刊(朝日新聞)に矢田部英正氏の《伝統文化=正坐じゃない》という記事がありました。
大名に茶道指南をしていた片桐石州が書いた指南書によると、当時の正式な坐り方が「立て膝」であると書かれているそうです。
石州の茶は千利休長男の道安から伝わったもので、「点前の姿勢は本来の形はあっても、形にとらわれて窮屈な姿勢で点前をするよりも自分の体に合った姿勢、つまり自然体で点前をすることのほうがむしろよいのである」と道安が言っていたそうです。
道安は大変立派な体型をしていて「立て膝」をしてお点前をすると、せり出たお腹が膝とぶつかってしまい、片膝を横に倒した「安坐あんざ」でお点前をしていたというのです。
大名相手のお茶では、大名に無理をさせてはいけないという配慮が必要であったという事情もあります。
室町時代の狩野秀頼「高雄観楓図」の写真も載っていて、その中で紅葉狩りをしている女性の坐り方は、戸外ということもありますが「立て膝」、「胡坐」等です。
記事は、伝統文化のものでも本来の自然な楽な形に戻ったほうがよいのではと結んでいます。
現在茶道の稽古は男女とも「正座」。この「正座」が最初に克服せねばならない関門です。初心者にとっては薄茶平点前をすることすら足がしびれたり痛くなります。だんだん稽古を重ねていく内に長く正座をすることができるようにはなりますが、辛い事です。
私のように何年も茶道をしていても、年を重ねるにつれて長く正座をすると足が吊ったり、痛くなります。
上級のお点前になると、ひとつのお点前に小一時間かかり、お点前する方もお客さまも足が痛くなります。それをこらえてお点前をすることも修行のひとつかもしれませんが、足の健康には良くないのでは?と思います。事実、ご年配で膝を痛められる方がいらっしゃいます。
坐忘斎考案の座礼棚は、特に男性が正座が辛く、茶道を敬遠することから考え出されたものではないでしょうか。
女性は我慢強いのでなんとか正座をしていますが、畳の部屋が少なくなっている現代の住宅事情からも、正座が辛くて茶道を諦める方が出てくるのではと危惧しています。
茶道は好きなのに正座が嫌い・・・・こんなことで茶道を諦めるのはもったいないことです。かといって「立て膝」でお点前をするわけにもいかず・・・やはり立礼式茶道のお点前をもっといろいろ家元に考えていただきたいものですね。
2008.10.25 お弟子さんの結婚式
お弟子さんのご結婚式に招かれました。場所は箱根の格式高いホテル。
私は茶道の先生として招かれているので着物で出席するのがスジかもしれませんが、小田急ロマンスカー・箱根登山電車に乗っていくので、洋服(ロングドレス)を持って軽装で出かけました。
今、箱根は紅葉狩りの観光客でいっぱいです。久し振りの小旅行で、心はウキウキしています。宮ノ下に下りたって 歩くこと3分ほどでそのユニークな造りのホテルが見えました。現在の建物は大正時代のもの、館内は古い中にも格式のあるものでアールデコ風です。
急いで着替えて披露宴会場のほうへ。知っている方は一人もいないので、控え室で飲み物をいただきながら静かに待ちました。そしていよいよ披露宴の会場に案内されました。
お弟子さんである新婦と、新郎の入場です。ウェディングドレス姿の新婦の何と可憐で美しいこと。新郎も頼りがいのある素敵な方。親しい友人と親族で祝う温かな披露宴です。私のテーブルには友人の方々がいらしていて、聞いてみると大阪や広島から新幹線でいらしたとのこと。素敵なお友達方と一緒に楽しく高校や大学生活を送られていた様子が分かります。美味しいお料理を頂いているうちに、女性の友人にエスコートされてお色直しにいかれました。友人のエスコートというのも珍しくやはり今風なのかしらと感じました。
新婦がお色直しされている間に、新郎新婦の小さい時から今までの写真が大きな画面で写しだされ、その中には去年のお茶会の時のものもありました。
そうこうしているうちに、着物姿にお色直しをした新婦の登場です。また着物姿もあでやかで可愛い花嫁。
皆様から溢れるような祝福を受け本当にお幸せなカップル。私も茶道のご縁で、こういう晴れがましいお席に加えていただいて、皆さまと祝福でき大変嬉しいことでした。
帰りはお土産を沢山頂き、お花まで頂いて、感動的な素晴らしかったご披露宴の余韻を楽しみながら、行楽客で賑わう箱根路を後にしました。
お弟子さんで組紐をされている方がいらっしゃったので、その方に今日の新婦のお祝いとして帯締めを作っていただきお祝に添えました。
本当におめでとうございました。末永くお幸せに!
2008.10.14 師をお招きした茶事
先日の稽古茶事に勢いがついて、わたしの茶道の先生を自宅に茶事にお招きしました。先生の他、社中の方3人も連客としてお招きしました。もちろん丁重なご案内のお手紙を書いて、皆様から素敵なお返事をいただきました。先生はもうすぐ87歳、皆さまも70歳以上の方々ですが お揃いでいらしていただけとても感激しました。季節は暑からず、寒からずの好季節です。
庭につくばいを見立でつくり、腰掛待合もつくりました。前席のお軸は淡交会入会10年記念で頂いた納屋宗淡先生のご染筆《無事是貴人》の扇を今日のお客さまT様が軸装してくださったものです。懐石は松花堂風のまとめたものに味噌仕立のお汁。頑張って作った蟹しんじょの煮物。それから小吸い物に略八寸。
それから初炭。下火もタップリ入れておいたので火の熾りも上々。香合拝見に出した後、縁高に《着せ綿》の主菓子をお出しして、中立ちとなります。
軸を巻き上げて秋草を沢山入れた花かごを中釘にかけました。行雲棚をしつらえて、後入り。紅白のフジバカマ・ホトトギス・ススキ・ミズヒキ・野紺菊がとても好評でした。
いよいよ茶事のメインのお濃茶です。お客さまは5人(お詰にはわが家のベテラン生徒さんにしていただきました)でしたので二碗に分けて点てました。普通では続きお薄なのですが、皆さまのおみ足に気をはらい、お薄は立礼にしました。
私が葛の墨絵を描いた茶箱で,和敬点。干菓子は和風の折り紙で作った箱に数種類入れ、お好きな箱を取っていただきました。開けたときに皆さま「うわーすてき」と歓声が・・・。
ソファーで楽に坐っていただいて皆さまにお薄を召し上がって頂いて、無事茶事は終了です。
先生をお茶事にお招きするという思い切ったことをしましたが、皆さま温かく気持ちよく見守っていただけ、私もとてもうれしく、忘れられない一期一会となりました。
用意周到で望んだ積りでしたが振り返るといろいろと行き届かない点があり、本当に茶事の亭主をすることの難しさを実感しました。今までに稽古茶事は何回もしましたが、今日のように外の方をお招きしての茶事は初めて・・・快い疲労感と満足感を味わいました。
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2008.10.10 小習教則本
大先輩の方から、古典ともいえる小習教則本を2種類頂きました。
1冊目は何と私が生れた年、昭和19年2月に発行されたもので初刷2000部とあります。価格は3円15銭。正式な題は「小習事十六ヶ條傳記」(一條書房発行)。 裏千家14代淡々斎が序文を書いていらっしゃいます。装丁はこれまた時代ものの和綴本、糸で綴じられています。挿絵も素朴な手書き、字も旧字体。
点前順序は概略ですがおさえるところはちゃんとおさえて、途中には《荘物に就きて心得》という項目もあります。序文には《是を以って完璧となすべきにあらず、詳細は筆紙の尽くし難ければ、実地に師に就きて教を受け反復稽古をつまれることを切望するものなり》とあります。
もう1冊は「小習傳詳解」(千宗室 指導・浜本宗俊 編)。(淡交社発行)これは初版が昭和27年、頂いた本は10版のもので、価格は250円。この教則本は白黒写真の点前の写真が結構沢山載っていて、旧字体ではありません。
この「小習傳詳解」を基本にしてできた本が私が学生時代に学んだ「小習事全伝」(淡交社)です。価格は500円でした。
現在の小習事の本は、お点前の順序が連続写真のように詳しく載っていて、全部で3冊になっているようです。
この貴重な教則本を下さった方は今80歳近いのです。茶道を60年以上もしていらっしゃり、かつては教えていらしたので、いつも私の点前で気がついたことを静かに注意してくださる有り難い先輩です。軸の表装もお得意で、淡交カレンダーを軸に仕立てて下さったこともありました。勉強熱心で、これらの教則本には鉛筆書きでその方のメモが沢山書き込まれており、それもとても参考になります。その方の茶道の歴史を引き継がせていただいたようで、私もこれからますます精進せねばと思います。
2008.10.1 稽古茶事
早朝まで雨だったので心配しましたが、雨も午前中で上がりホッとしました。
今日は稽古茶事の日。いつもは私が亭主役をしますが、今日はベテランの生徒さんが亭主役です。ちゃんと茶事の案内の手紙も出していただきました。道具の準備、懐石料理は私がして、亭主の方にはお菓子を用意していただきました。お客さまは3人。
いつもの稽古日の顔ぶれですが、今日は皆さま着物でいらっしゃり、稽古茶事とはいえ雰囲気は完璧?です
風炉の茶事は、懐石→初炭→中立ち→濃茶→続きお薄と進みます。初炭までに下火が絶えてしまっては大変なので下火は7個ほどしっかり入れました。
それが良かったのか、濃茶の頃にはお釜の煮えがとても良く、大変美味しいお濃茶を頂くことができました。茶事はお濃茶がメイン、美味しいお濃茶を差し上げるために懐石等するわけですから大成功です。皆さま慣れていらっしゃり、3時間ほどで終わりました。
亭主と正客の息もピッタリ、連客も素晴らしい客ぶりでとても良い「一座建立」となりました。
「賓主互換」という言葉がありますが、亭主をやってみたり、正客になってみたりしてお互いにお互いの気持ちが分かリ、思いやりの気持ちがでるということが良く分かったと思います。
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2008.9.23 茶道文化検定
世の中、何でも《検定》時代。TVでもクイズ番組が大流行です。
裏千家もこの秋から「茶道文化検定」を始めるようです。級があって初年度の今年は3,4級の試験を実施するとのこと。
普段の茶道の稽古は点前の稽古に終始して、理論・学問は自発的に勉強をしなければなかなか学ぶことができません。
しかし、点前をしていく内にいろいろと興味が広がるとともに、いろいろ疑問がわいてきて、《ここはどういうわけでこうするのだろうか》とか、《このお道具はいつ頃から使われるようになったのだろうか》等、調べてみたくなります。稽古場でいちいち先生にお尋ねすることは憚ります。
茶道にはいろいろと「しきたり」「きまり」があり、ある程度理論的な裏付けがないと恥をかくことになり、勉強が必要です。
また茶道をしていない方から茶道のことをいろいろ尋ねられて、答えに窮することもあり、己の無知を恥じ勉強せざるを得ないことになります。
と言っても茶道は総合芸術であるので守備範囲が広く、日々勉強しても尽きる事はありません。
そして近年 皆さま高学歴で知識欲旺盛の時代。茶道も点前の実践だけでは物足りなく感じられているのでは・・・という観点から今回の「茶道文化検定」が始まったのかしらと思います。
茶道文化検定の公式HPを見ると予想問題も出ています。3,4級はほんの初歩的な問題。多分全員が合格されるのでは・・と想像されます。
頭でっかちの茶道修業者ばかりになっても良くないですが、「道」「学」「実」バランスのとれた茶道修行者になりたいです。
2008.9.15 煎茶の飲み比べ
渋谷にある「たばこと塩の博物館」で開館30周年を記念して、「四大嗜好品にみる嗜みの文化史」展をしています。
四大嗜好品とは、《タバコ》《酒》《茶》《コーヒー》です。
《茶》の字には敏感に反応する私・・・ちょうど講演会も行われる日なので行ってきました。
「喫茶養生記」の展示から始まって、抹茶道具、煎茶道具などの茶器、明治時代、茶葉を輸出した時の梱包ラベル(これが植物、鳥、魚模様でとてもアート)、世界の茶の道具、酒瓶のラベル、酒器、コーヒー豆を挽く道具やカップ、タバコ盆など、また茶や酒をモチーフにした浮世絵も展示されていました。
講演会は「日本人とお茶」というテーマで、講師は入間博物館学芸員の工藤 宏氏。
以下は講演内容の一部。
茶を飲むという記述で古いのはなんとBC59年、中国の奴隷の労働契約書。この頃は《茶》という字が《荼》になっています。日本の記述では《日本後記》815年に近江梵釈寺で嵯峨天皇にお茶を差し上げたという記事です。また《吾妻鏡》の実朝の二日酔いで薬として茶を飲んだという記述もあります。
茶の木はヤブ椿、サザンカなどカメリア科。水はけの良い台地を好み、年間平均温度13℃以上で降水量1300o、冬の気温2.3℃以上のところがよいそうです。
日本の北限地帯のお茶は秋田県能代市の「桧山茶」、茨城県大子町の「奥久慈茶」、新潟県村上市の「村上茶」、埼玉県入間市の「狭山茶」。
そしてこの4種の煎茶を講師の方が自ら淹れてくださり、聴講者約60名ほどに試飲させていただきました。
飲んだ感想は「桧山茶」・・・・淡白な味、独特な香り、後で口に甘みが残る
「奥久慈茶」・・・・渋みがあり、コクもある
「村上茶」・・・・・苦味があるが香ばしい、産地正解率高いお茶だそうだ
「狭山茶」・・・・・緑色、口当たりはまろやかだがストロング、後に甘みがすごく残る
試飲もあったりでかれこれ3時間近い講演会でした。
2008.8.20 茶道の楽しみ方
ある生徒さんから暑中見舞を頂きました。この方は茶名も頂いて、長く茶道をされている方です。
その方が何気なく本文の余白のようなところに、『茶道はいかに楽しめば良いのか、私にとっては課題です』と書かれていました。
わたしはドキッとして、宿題を与えられたよう感じました。
長く茶道をされている方ならではの この課題。普段の稽古では今までの点前の繰り返し。点前は何種類もありますし、風炉・炉の季節によって違いますから復習も大切ですが、やはり物足りなくなってくるのだと思います。
許状を頂くまでの段階では、レールが敷かれてありますが、茶名まで頂くとレールはなくなります。そこからは自分なりの修行になります。
茶道は《もてなし》の文化で、茶事が基本。茶事はお客さまをいかにおもてなしをするか、テーマを決め、道具の取り合わせ、懐石、お菓子等について考えるのですが、これが亭主としては大変楽しいことです。しかし亭主となって茶事をするという機会は、日常ではあまりありません。稽古茶事で亭主役をすることはありますが、道具の取り合わせから掃除、準備すべてをするということまではなかなか・・・。
しかし日常で、お客さまをお招きする時はあれこれ考えます。その時に茶道からのヒント、心が入れば、個性的なおもてなしが発揮されるかもしれません。それも楽しいことでしょう。
小寄せのお茶会も楽しいです。たとえお薄のもてなしでも皆で役割分担をしてお客さまに一服さしあげるイベント。
また、七事式を勉強することも上級者にとっては楽しいことです。お互いに気心をあわせてルールに従って行う楽しいこと。これは修行というより、ゲーム感覚で楽しいです。
実践だけでなく、理論を勉強することも楽しいこと。これは自分なりの勉強になります。本を読んだり、講演を聞きにいったり、美術館へ出かけたり、よそのお茶会にいってお道具を拝見したり・・・。
《道》《学》《実》・・とよくいわれますが、この3つを自分なりにバランスよく習得することが、茶道を楽しむ鍵となるのではと・・・いうのが今の私の思いです。
2008.7.29 茶道は技術?学問?
「茶道は一体何なのかしら?」と時々思ってしまいます。
そもそも《道》とは何なのでしょうか?《道》が付くものは日本独特のもの。柔道・弓道・剣道・華道・香道・書道等々。
大辞泉で引いてみると「人としてふみ行う道・道理」とあります。何か精神的なもの、哲学的なことがあることは確かです。実際、茶道も禅の精神・哲学が入っています。
しかし普段の茶道の稽古は、抹茶を点てるためのいろいろな点前を習得することに尽きます。
点前を何回も何回も習得して体に覚えこませ、そうすることで《心》ができてくると・・・。その《心》と言うところに《道》の概念がでてくるのでしょうか。
《道》がつくもので、柔道、剣道、弓道、書道などは、競技にもなるものなので、技術の上達が重んじられます。確かにうまい人と下手な人の違い・勝ち負けがはっきり現れます。
茶道も技術でしょうか?
お点前の姿・形や、抹茶を点てたり、練ったりする技の上手・下手は多少はありますが、違いはそんなにはっきり現れません。しかもそれに点をつけたり、競うというものではありません。
しかし、点前は順序を学ぶほかに、形も細かく決まりがあり、いかに美しく点前をするか、うるさいほど細かく学びます。
5本指はそろえて小さくまとめるとか、ふくさの捌き方、器物の清め方、歩き方、道具の持ち方、柄杓の構え方等々・・”重箱の隅”のような細かいところまで、美しい動作をするよう要求されます。
このように細かいところまで気を配って、点前の稽古を繰り返すことで、道具の扱い方、優雅な身のこなし、集中力、お客さまに失礼のないようにする作法、相手に対する気配り、もてなしの心等・・・《心》が入るという事でしょうか。
この《心》は、茶道を稽古していない方でも持ち合わせている方が沢山いらっしゃいます。旅館の女将さん、ホテルマン、高級レストランの店員さん等、お客さま相手のご商売をされている方々・・・。
稽古をしていても、目に見えてすぐ変わってくるものではなく、さりとて作品が出来るわけでなく、踊りや楽器の稽古のような発表会もありません。”稽古をした証”"上達した証”がなかなか分かりにくいものです。
しかし長く茶道を稽古するうちに、いろいろなことを知りたくなります。お道具のこと、禅語のこと、茶花のこと、歴史、四季折々の行事、季節のこと、暦のこと、陰陽のこと、能のことなど・・・どんどん知識欲がでてきます。この意味では《学問》的な要素もあります。調べようと思えばいくらでもテーマは出てきて、調べればその分 教養がつきます。
このおかげで、私など何と40年近くも飽きずに、茶道に関わっているのです。しかも楽しく・・・。
結局、茶道は日常茶飯事のことを、茶道という枠組の中で仰々しく行う技術でもあり、哲学的なものでもあり、学問的なものでもあるということでしょうか。
茶道を40年近くしている私も「茶道は一体何なのかしら?」の答えは難しく、私には重た過ぎる永遠のテーマです。