思いつくまま 2013.07-12

new2013.12.21 稽古納め2013

 2013年も今日で稽古納めです。

この1年私も家族も元気に過ごせたおかげで、我が家の茶道教室も稽古を休むことなく無事終えること出来ホッとしました。

年末はこの1年どうであったかを振り返って、良かったことや反省することなど思いめぐらすのも良いと思います。

1年に1回は茶事をするという目標は達成しました。皆様の習熟度が上がってきたので、付き物花月もいろいろ出来るようになり、生徒さんも花月が楽しくなってきたように感じます。これらは良かったことです。

反省点としては《行の行台子》以上の許状をおとりになった方が増えたにもかかわらず、なかなか上級の稽古をする時間が取れなかったこと。来年の課題です。

今日の稽古納めは濃茶付花月と平花月をして、その後早めの年越しそばを頂きました。

 

2013.12.20 映画《利休にたずねよ》

 山本兼一氏の「利休にたずねよ」を 2008年刊行されてすぐに読みました。

 利休が70歳に切腹した日から、時系列的に遡って宗易、与四郎の時代まで戻るという構成の本。章ごとに利休、宗恩、秀吉、織部というように語り手が代ります。とても読みやすく一気に読み終えました。

 利休居士、千利休、宗易、与四郎と若返っていくにつれ、茶聖のイメージがだんだん希薄になり、「やはり利休も人間臭い一人の男だったのだ」とちょっとイメージが悪くなり、後味に問題がありました。

 今回映画化されたということで、今日観てきました。映画化するのは大変そうな本で、どのように作られているか興味津々でしたが、流れとしては良くできていると思いました。

 利休役は「市川海老蔵」、宗恩役は「中谷美紀」、織田信長役は「伊勢谷友介」、秀吉役は「大森南明」、そして武野紹鴎役は「市川団十郎」。

 切腹の日からスタート、その20年前、その10年前、そして与四郎時代など織り交ぜながらストーリが展開します。

 与四郎の時、朝鮮から連れてこられた若い女性に惹かれていましたが、その女性が持っていた小さな緑色の小壷(香合)!・・・この「小壷」がこの映画のポイント。

 宗恩は、昔の利休が愛した女性についてずっと気にしていて、利休が切腹した時にそのかたわらにその「小壷」が!!!…それを見た宗恩の複雑な心中は・・・

 観た後の感想としては、笑うことも、ジーンとくるところも、感動するところもなく時間が過ぎた映画でした。

 海老蔵には、利休を演じるシーンより、与四郎を演じるシーンの方がピッタリしていました。

 茶聖利休もちょっとイメージダウンした感じの映画でした。

 

2013.11.22 ケネディ暗殺から50年

 1963年11月22日ケネディ・アメリカ大統領が暗殺されるという衝撃的な事件がありました。

今年はちょうどそれから50年になります。折しも、ケネディ大統領の長女のキャロラリン・ケネディさんが駐日大使に就任したばかりで、何かとケネディの名前が新聞や、TVを賑やかしています。

 当時 私は大学1年生でした。そして11月22日は三田祭で、茶道部に入っていましたので、着物を着てお茶のお運びをしていました↓。私の記念すべきお茶会デビューの日だったわけです。

その最中にケネディ暗殺のニュースがどこからともなく入ってきて、皆で動揺したことを覚えています。

帰ってからTVの映像も見ましたが本当に衝撃的な事件でした。

お葬式では、小さかったキャロラインさんとその弟のジョン君の姿が痛々しかったです。特に3才くらいであったジョン君が棺に敬礼のしぐさをしているのがなんとも可哀そうで印象的でした。

その後ケネディ家には次々と不幸な事件が続きます。

 今回キャロラインさんをTVで拝見して、つくづくと時の流れを感じます。

かわいい女の子であったキャロラインさんは、50年後によもや駐日大使になろうとは・・・。

また当日にお茶会デビューをした私も、50年後によもや茶道の先生になろうとは・・・ その当時は思っても見ないことでした。

人生って予想もしないことになりますね

 

2013.11.10 「お稽古」?「稽古」?

 研究会では、舞台上でお点前のデモンストレーションをする方は業躰先生に、「○○のお稽古お願いいたします」と挨拶をします。

ある業躰先生が、「自分の稽古に《お》をつけるのはおかしい。○○の稽古お願いしますで良い」とおっしゃいました。

 我が家の稽古場でもお点前をする方は、「○○のお稽古お願いいたします」と挨拶をしてお点前を始めます。

そこで上記の業躰先生がおっしゃったことを生徒さんに伝えたところ、「この場合、お稽古と言う時の《お》は尊敬語ではなく丁寧語なのでは」という意見が出ました。

例えば女性は、茶碗、菓子等とはあまり言いません。お茶碗、お菓子、お水、お箸・・・・など《お》をつけて言うことが多いです。

《お》をつけて言うことは丁寧で、上品な表現です。ですからお稽古といってもおかしくはないのではとの意見です。なるほど、そうですね。

また別の方は「○○の稽古お願いいたします」と言った方が、ピシッとした緊張感があってよいのではと、述べられました。「○○のお稽古お願いいたします」は何か甘えのような感じもするとも言われます。確かにそういわれればそういう気もします。

真逆の意見が出て、それぞれにしっかりとした理由づけがあり、両者とも納得がいくものです。

両方の意見に黒白付けるべきではなく、ご自分で良い方をお使いになればと思いました。

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 ついでに、この頃巷で使われる日本語で気になることがあります。

それは「○○させていただく」と、へりくだった言い方です。しかもそれを連発で言われると、《そんなにへりくだらなくても良いのでは》と思ってしまいます。

例えば、自分のお茶碗なのに「使わせていただきました。」とか、「書かせていただきました」「軸を掛けさせていただきました」「送らせていただきました」「参加させていただきました」等々。

「○○させていただく」は、お陰様でという感謝の気持ちを表しているかも知れませんが、「そのお茶碗を使いました」「書きました」「軸を掛けました」」「お送りしました」「参加いたしました」・・で良いのでは?

敬語も、「させて」「させて」と連発では耳障りです。

日本語は難しい!です。

2013.10.26 風炉の最後の稽古

 早いもので、今年も風炉最後の稽古となりました。今日は台風27号の進路を気にしつつの稽古でした。今年は台風がいつまでもやってきます。

 風炉のしめくくりに土曜クラスで、《炭付花月》と《三友之式》の稽古をしました。

●下火を早くから入れてしまったので、初炭で炭を入れてもなかなか熾きず、《炭付花月》の薄茶はややぬるいものになってしまいました。《炭付花月》の時は下火を入れるタイミングに注意を…下火の下火を入れておくのも・・・次からの課題です。しかし、後の《三友之式》の頃には赤々と美しく燃え、美味しいお薄が点ちました。

●花月は何回かいろいろと稽古しているのですが、やはり足さばきがどうもうまくいきません。入室退室は完璧ですが、茶道口を入った半畳の畳、ここは下りにもなるし上りにもなる畳…ここで上手くいかないようです。すっきりとした歩数で点前座に行ったり、仮座・自分の席に帰ったり出来ると良いのですが。これもこれからの課題第2です。

 ここが上手くできないと「花月100回おぼろ月」となるのでしょう。

 《三友之式》では、それぞれに花を入れます。庭の花はホトトギス、木賊、小菊、水引、秋明菊・・足りないので、吾亦紅と、竜胆、紫の小菊は花やさんで買いました。

 この時期の花は地味で侘びたものが多く、名残りのこの季節にはちょうど良いです。

●花入れに合ったお花を皆さんそれぞれ考えて上手く入れられました。しかし茎が長かったものを、小刀で切るのは至難の業・・花台に用意するときにちゃんと花の長さを考えて載せておくべきでした…これが第3の課題

●香は香炭団をしっかり赤くなるまでにしておかないと、いざ香を入れる時に手をかざして確認した時に大変です。予め香炉に火を入れておいて灰を温めておくことと、炭団の上に灰を薄くかぶせ、空気穴をあけておくのがポイント。 とくに《三友之式》で花を入れるのに時間がかかってしまったりすると、炭団の火力が落ちてしまいます。これも第4の課題です。

 時々しか花月など七事式の稽古ができないので、次にするときはこれらの課題を思い出して稽古することにしましょう。

2013.10.16 縮小する茶道具店

 久しぶりにМ茶道具店に行きました。

いつもの入り口前には車が2台止まっていて《あれっ、今日はお休みかしら?》と思いつつ、向かいの倉庫のほうを見るとお店らしい雰囲気。早速入ってみると、М茶道具屋さんのお店でした。

しかし前のお店にくらべると全然品数が違います。来年のお正月用の茶道具が中心で、他は大したものがありません。

「ここは臨時のお店ですか? 向いは今日お休みなのですか?」と店員の方に尋ねると、「向うはもう閉めました。ここだけです」との返事。びっくりしました。

「お棚とかお軸などは?」とおたづねすると「カタログ販売でしています」との返事。店員さんも心なしかぶっきらぼうで愛想がありません。

茶筅だけ買って店を出ました。すると、後ろから先ほど店内にいらしたご婦人客が「淋しくなりますね」と声を掛けてこられました。「これからはデパートで買うしかないですかね。やはりカタログでなくこの目でしっかり見て、よいものを買いたいですものね」とおっしゃいました。

私が「どこのデパートですか」と聞くと「池袋のTデパートはけっこうありますよ」と。私も「日本橋のTデパートにもありますよ」とお互いに情報交換。

 確かに最近は茶道屋さんから季節ごとにカラフルのカタログが送られてきます。写真だけでは私も不安であまり利用したことがありません。値の張る茶道具を買うときはやはりカタログだけでは決められません。

 そういえば、246通りでお店をなさっていて私がよく利用するD茶道具店も、何年か前に古いビルの一室に移られました。

 先日裏千家と深い関係のY茶道具屋さんの「秋の新古茶道具展覧会」に行ってきました。このお店は上等なものばかり扱っています。家元の箱書きのある品々や、古い楽茶碗など・・・。茶道をしているものにとっては垂涎のお道具ばかりです。いろいろなお道具を鑑賞し、(お道具やさんにとっては嫌な客?)目を肥やし、それと広間でお菓子とお薄が頂けるのが魅力で季節ごとに友人を誘って行っています。

茶道をお稽古していても、教えていらっしゃる方は別として、自分からお道具を買ってまで稽古される方は少ないようです。茶道の稽古は何も自分でお道具を揃えなくても出来るものですし、良いお道具を見たければ、美術館や他のお茶会で行けば観賞できます。

私は茶道をお教えしているので、お稽古道具はいろいろと揃えねばなりませんが、数寄者ではありませんから買うお道具もそんなに素晴らしいものは必要ありません。

しかしこのように茶道関係のお店が縮小することは不安ですし、残念です。

2013.10.02 師の命日

 10月2日は去年90歳で亡くなられた師の命日です。私はふたりの師の他界を経験しました。

準教まで稽古を深めてきた私ですが、やはりいつまでも師のもとで稽古をしたかったです。

主人は「お茶ってのはいつまで習いに行くものなのだ?」「子供だって22歳まで勉強すれば立派に社会人になれるよ」と、よく言っています。

茶道をしていらっしゃる方は結構な年配者でも師について稽古に通われています。茶道の勉強はここで終わりということがないもので、仲間と稽古をするのが楽しい世界なのです。稽古を続けることが修業・・・。それゆえいつまでも稽古に通うことになるのでしょう。

しかし私くらいの年になると新たに師を探すことはちょっと難しいです。ですから私はもう師にはつかず若い方々にお教えすることに邁進しようと思います。

今までに師から教えを受けた通りに、若い方にそれを伝えていこうと思います。

我が家の水屋には、今まで私に茶道を教えてくださった師の写真を飾ってあります。一人は祖母、後はT先生と、S先生です。

今日はS先生のご命日として、茶室脇床に先生の写真に、薄茶・お菓子をお供えし、手を合わせました。

2013.09.29 飯後の茶事

 月の趣向で茶事をしました。今回は飯後の茶事。食事時間を外した茶事で、別名「お菓子の茶事」ともいうそうです。

今までは私が亭主で、生徒さんに部分的に練習として濃茶を練っていただいたりしていましたが、今回、私はお客。水曜クラス・土曜クラスそれぞれ亭主を生徒さんにしていただきました。

ですから亭主役の生徒さんにはお客の皆さんに茶事のご案内の手紙を出していただきました。何事も練習。今は便せんで手紙を書く機会もあまりなくなりましたが、綺麗な便箋で美しい字でちゃんとした案内状を頂きました。私もお客なのですぐにお返事を書きました。

そしてお菓子もご亭主役の方に用意していただくことにしました。お菓子を選ぶのも楽しいのでは…

水曜クラスはちょうど中秋の名月の頃に、土曜クラスは今日しました。どちらも秋晴れの爽やかな日に恵まれました。

亭主と客の挨拶の後、吸い物椀が出ます。次は八寸とお酒。それから初炭をして、お菓子を頂き中立ち。後入りをして濃茶、薄茶を頂き終了です。今回は《月》をテーマにした茶事なので、薄茶は茶箱の「月点前」にしました。柄杓扱いの茶箱点前です。

稽古茶事と云っても緊張感を以て「一期一会の」気持できちんとするよう皆様に云ってありましたので、亭主はもちろん、詰も正客もそれぞれ役割をきちんとと予習をしてきてくださってスムースに運びました。

私は3客目に坐って完全に客になり、口出しは慎みました。点前が多少滞っても、亭主は自力でやりぬかねばなりませんから。

飯後の茶事は、吸い物と八寸だけなので、用意する方も楽ですし、お客様のほうも短時間なので良いのではと大変気に入りました。《茶事は濃茶が主》ですから、濃茶の前にいろいろとご馳走を頂かなくても、すっきりとしたおもてなしで良かったと思います。

亭主をしたり、客になったりして、お互いの気持ちを理解して《賓主互換》のおもいやり精神が養われるのです。今年も茶事ができてホッとしました。

最後に勝手方を手伝ってくれた主人にも大感謝。主人の手伝いがあったらこそ、今回私は客になれたのです。

 

 

 

 

2013.09.20 中秋の名月

 今年の9月19日は旧暦の8月15日でしかも満月。7時過ぎ外に出てお月見をしました。台風18号が去ってこの2,3日すっきりとした秋空でした。

雲もない夜空にぽっかりと煌煌たる満月!

時間も早いので東の空に大きく低く見えました。近所の方も何人か道で携帯で写真を撮っていらっしゃいました。

旧暦では7月8月9月が秋。その真ん中の月の8月を仲秋と云い、その8月の真中の日、15日を中秋と云うとか…。

今年はその15日がちょうど満月に当ったそうで、珍しいそうです。

しかもこの数年、中秋の名月の日は曇ったり、雨だったりとしばらく見られませんでしたので今年はラッキーでした。

寝る時間の頃には月も大分高くなっていましたが、2階のベランダからしばらく眺めていました。電気を消すと月明かりが畳の部屋にさして結構明るかったです。

  ”  仲秋や  月明かに  人老いし  虚子 ”

今朝からは有明の月・・・。日の出の太陽と一緒に、西に沈む満月も見られる《有明の月》です。

 ” 有明の 月になりけり 母の影 其角 ”

今年の名月は本当にラッキー…私にはもう一つ良い日・・ン歳の誕生日でもありました。

2013.08.25 写経

 私は奈良の薬師寺に行った時に初めて写経をしました。かれこれ12年ほど前です。

その後、当時82歳であった亡き母と薬師寺東京分院で写経をしました。

 薬師寺は写経を納めると永久に保存していただけるのです。何となくロマンがあるではありませんか。

 稽古の某日、写経の話になって写経をしてみたいとおっしゃる生徒さんが何人かいらしたので、今日皆さんと東京分院に行ってきました。

建物は新しくなっており、お寺と云う雰囲気はあまりありません。そして、まず抹茶と薬師寺落雁を出して下さったのにはびっくりしました。石畳の坂を上ってきたのでお抹茶は大変美味しかったです。

お連れした方々は初めてでしたので、お坊様から写経の仕方・作法・心がけ等の説明がありました。

字の上手下手はあまり気にしなくて、心を込めて書くこと、「心の休息」のいう気持ちで肩の力を抜いて書くこと等など・・・。

そして吉野紙という上等な紙を頂いて、輪袈裟を首に掛けて、丁子を口に含み、写経場に入ります。香炉をまたいで(これも作法の一つ)席に着きます。

墨を静かに摺って、いよいよ写経。下に手本があってその上に紙を置いて書きます。般若心経267文字。集中して書くこと1時間余。

 ご仏壇の前に納経して、お参りをして終了。 

運よく特別な日だったようで、簡単な食事が用意されているとのこと。これにもびっくりです。お稲荷さんと、かんぴょう巻き、ほうじ茶のご接待を受け、大変有り難く美味しくいただきました。

そしてなんと私は《写経勧進納経集印帳一》を頂きました。これは納経を3巻目から頂けるものだそうです。まったく期待していなかっただけにとても嬉しくなりました。前に納経をしたことがちゃんと記録されていることにも驚きました。12巻納経するとさらに別の色の集印帳になるそうです。こういうものを頂くとまた写経を・・・・という気持ちに。これが薬師寺の勧進なのですね。

ご一緒した生徒さん方も、これを機に又いつか写経をされるかもしれません。

ゆったりとした時間で真剣に写経して、ご利益は期待しませんが、何かさわやかな自己充実感を味わいました。

 

 

2013.08.16 読書百篇自ずと通ず

 この夏の暑さは猛烈です。多分去年のこの時期の《思いつくまま》にも同じようなことを書いたと思いますが、今年はとうとう41℃になったところ(四万十市)も出てきました。

東京も連日35℃前後…最低気温も30℃という状態で、都内で熱中症で亡くなった方も大勢いらっしゃるのです。

 このところ外に出るのも、食料の買い物の時だけで、ほとんど家に引きこもりっぱなしです。幸い高校野球放送があるので、冷房をきかした部屋でTV観戦。

しかしTVばかり見ていても進歩がないので、今まで読んだ茶道に関する本、とくに各家元の茶道論を再読し始めました。裏千家、表千家、遠州流、武者小路千家、大日本茶道学会等、流派を超えて家元のお書きになったものはとても勉強になります。

 稽古をする心構えや、哲学論、コミュニケーション論、茶道の本質論など学ぶことが多いです。

 とかく一回読んだ本はそのまま本棚に置きっぱなしということが多いですが、再読してみるとすっかり内容を忘れています。「あーこんな良いことが書かれていたのだ」と改めて思うことばかりです。

読書も一回目より二回目、三回目のほうが熟読玩味でき、内容をゆっくり味わうことが出来ます。ちょっと難しい箇所も何回か読み直していくうちに理解できるようになります。

《読書百遍意自ずと通ず》とはよく言ったものです。

 我が家には茶道に関する本が沢山あるので、生徒さんにも読んでもらいたく、お貸ししています。岡倉天心の《茶の本》を持っていかれた方は「これはどうも難しく無理なのでお返しします」とおっしゃいました。素直に無理と感じられるのはおかしいことでも何でもありません。とにかく茶道に関した本に興味を持っていただきたいと思います。

 茶道の稽古体験の随筆は大人気です。

お貸しした本を返していただいた時に、何か良い香りが・・・・これも茶道を習っている方ならではの心くばりかしら?と思いました。

2013.0720 奥伝の稽古U 

  先月に続いて奥伝の特別稽古をしました。今回は「行の行台子」の稽古です。

このお点前は行台子を使い、唐物と和物のお道具を取り混ぜて設えるお点前です。お菓子はなんと5種類です。

 我が社中には「行の行台子」の稽古まで到達された生徒さんは5人いらっしゃいます。茶道を始めて5,6年の方々です。

茶道を全く初めての方々が、ここまで到達されたかと思うと感慨深いものがあります。くりかえし地道にお点前を稽古するうちに、しっかり体で所作・順序が身に着いてくるのです。まさに「継続は力」。

ところで、茶道の稽古は《道》《学》《実》が大切と大宗匠はおっしゃいます。

どうしても稽古場では《実》の点前稽古が中心となります。《学》は自分で積極的に学ばなければなりません。本を読んだり、美術館へ行ったり、講演会に出かけたりして茶道全体のことを広く知識として得るのです。

 茶道の歴史や、茶道具のこと、禅との関係、お菓子や花のこと、茶室のことなど、知識欲さえあれば無限に広がります。知識に裏付けされれば茶道について自信が持てます。

頭でっかちになって《実》のほうがおろそかではよくありませんが。何事もバランスが大切です。

 《道》は心持ちですから、稽古を研鑽していくうちに培われていくはずです。

 茶道検定が始まってはや6年、検定を受ける受けないはともかく、検定用のテキストを通読するのも確実に《学》の手助けになると思います。

 

2013.0715 名水点 

  今年の暑さは格別です。6月の末辺りから連日35℃… まだまだ夏は7月・8月と2か月もあるのにどうなることかと、先が思いやられます。

 利休七則のひとつに《夏は涼しく…》とあります。暑い時は、お客様に涼味を感じていただけるような工夫を心がけましょうとのことです。

暑中のお点前には平茶碗に水を張って茶巾を二つ折りにして入れ、点前時に茶巾を水からあげて爽やかに絞ってたたみ直すという「洗い茶巾」というお点前があります。

 たっぷりと水で湿らした釣瓶を使ったり、水がよく見える平水指を使ったりもします。玄々斎が考案された、露をふくんだ梶の葉を末広籠の受け筒に載せて、水指とした葉蓋の設えも涼味満点のものです。

 釣瓶の水指を使って「名水点」というお点前があります。由緒ある名水を用意して、お客様にその名水を召し上がっていただくのです。

名水を用意したことをお客様にお知らせするために、釣瓶の水指の周りに茅のしめ縄を巻き、そこに御幣を前後に二つ、側面に一つ付けます。濃茶を頂く前に、客は名水を所望して亭主の心入れをいただくのを心得とします。

この飾りつけは神聖で清らかな気分にさせてくれます。

 名水は古くから名水と称される井戸の水、神苑、高山の霊水、伏流水を使います。しかし現在、特に都会では実際に飲用できる井戸はめったにありません。

稽古ではペットボトルの谷川の天然水を使用しました。

 昔は日常的に井戸水を使っていたのでしょうが、生の井戸水はあまり飲まなかったのでは…。いわゆる名水と云われる美味しい井戸水や湧水は大変貴重だったのでしょう。ですから亭主がわざわざ早朝汲んできて、お客様にお出しする「名水点」というお点前が出来たのだと思います。

現在はペットボトル全盛時代・・・有り難いことに美味しい各地方のお水がいただけます。水道水だってそのまま飲めるありがたい国・時代です。

 私が30代の頃はペットボトルの水は存在していませんでした。ですから「名水点」を習ったときは、名水の由緒を訊ねられれば「明治神宮清正の井戸水です」等と答えていました。

今は由緒を訊ねられれば「谷川の天然水です」と答えるのでしょう。

 普段から名水を飲み馴れているわれわれ現代人には、安直に手に入るペットボトルの名水をわざわざ「名水点」として用意していただいても、亭主の心入れにはあまり感謝はされそうもありませんね。

しかし、実際に稽古をした時に「夏はのどが渇くので、濃茶の前に美味しいお水を頂くのは有り難いわね」と生徒さんがおっしゃいました。たしかに、暑い中歩いてきて、茶室に入ってすぐ美味しい名水でのどを潤したら、それこそ天国。

 この「名水点」は、昔は生で飲める美味しい水は大変貴重であったのだということを思い出させ、水のありがたさを感じていただくためのお点前のような気がします。

 

 

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