農薬の毒性・健康被害にもどる

反農薬東京グループの2018年度の農薬危害防止運動の頁


n00101#2018年度農薬危害防止運動〜住宅地通知遵守を強化したが#18-04
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【参考サイト】農水省;「平成30年度 農薬危害防止運動」の実施について実施要綱ポスター

 この数年、農水省、厚労省、環境省が、「農薬危害防止運動の実施について」を公表するのは、4月下旬が通例で、前年もしくは前々年度における農薬事故にある事例の再発防止対策が、実施要綱では、重視されています。

★学校での農薬散布事故で指導強化
 昨年秋の加須市内の小学校での生徒の受動被曝事故(記事t31402)を踏まえ、「住宅地通知」関連の指導が強化されました。
   『平成29年度には、公立小学校において児童が授業を受けている時間帯に
   敷地内樹木の害虫駆除を目的として農薬が散布され、それにより体調不良を
   訴えた児童が病院に搬送される事案が発生した。
    このような被害を防ぐために、特に、学校では、万が一にも子供が農薬を
   浴びることがないよう、学校の施設管理者及び作業を受託する防除業者等に
   対し、児童・生徒が在学し授業を受けている日・時間帯には農薬散布を実施
   しないなど、散布日・時間帯に最大限配慮するよう指導すること。』
   『講習会等への積極的な参加を促すなどして、本通知に記載されている指導
   内容の周知を徹底すること。』
 に加え、環境省が本年3月に改訂した「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」(これには、公園、街路樹等の害虫防除に係るフェロモントラップ(捕虫器)の使用に当たっての注意喚起について (2018年2月9日付け環水大土発第1802091号)が掲載されている)が示され、さらには、 防止対策に『学校敷地への農薬散布は、児童・生徒が在学し授業を受けている日・時間帯に実施しない。』と明記されました。

★無人航空機では、自動操縦もとりあげる
 無人航空機による空中散布についての指導は、前年と大差ありませんが、下記のように自動操縦に関する項が追加されました(関連する無人航空機の技術指導指針の改訂については、(記事n00102参照)、
 『自動操縦による空中散布については、設定した飛行経路による空中散布が安全かつ適正に実施できない周辺環境の変化があった場合には、飛行経路の再設定や遠隔操作への切替え等の安全対策を速やかに講ずること。』が追加されました。

★農薬販売で、ネット規制の指導強化
 わたしたちがいままで、申し入れて来た「インタネットによる販売規制」については、新たな項目が追加されました。
、
   『インターネットによる通信販売やオークション等の普及に伴い、
   農薬販売においても、販売の届出を行うことなく農薬を販売したり、
   小分けした農薬を販売したりする不適切な事例が確認されている。
   このため、国からインターネットによる通信販売やオークション等
   を主催している者に対し、農薬を販売する場合は届出が必要である
   こと、小分けした農薬を販売してはならないこと等を利用者に周知
   するよう働き掛けを行っているところであり、地方公共団体におい
   ても、農薬販売者の届出に関するwe bページに掲載する等、様々な
   メディアを通じて幅広く周知すること。
    さらに、毒劇物たる農薬については、その譲渡に当たっては、譲
   受人の身元並びに毒劇物の使用目的及び使用量が適切なものである
   かを十分確認するとともに、一般消費者への販売等を自粛するよう
   指導すること。』

★危被害が減らないのに、変わらぬ指導内容
 農水省の報告によれば、農薬被害で、一番多いのは人については土壌くん蒸剤クロルピクリンであり、ミツバチやポリネーターでは、ネオニコチノイドなどの殺虫剤であることは明確ですが、これらの防止策に共通なのは、原因農薬の使用を減らすことでなく、受動被曝する人畜が、散布場所から退避せよという、いままでと変わらない指導です。
 クロピクについては、『施用直後に適正な材質、厚さの資材を用いて被覆を完全に行う等の安全確保を徹底すること。』と表記の変更があったのみですし、ネオニコについては、実施要綱には、『ネ』の字もでてきません。
 EUでは、クロルピクリンの登録はすでになく、カナダでは、使用には免許がいります。ネオニコチノイドについても、EUでは、ミツバチやポリネーターへ悪影響を防ぐため、2018年末までに、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3種の屋外使用が禁止されることになりました。
 日本では、野生のポリネーターへの影響は無視された上、水稲のカメムシ駆除にはネオニコチノイドらの農薬使用は不可欠だとする農水省の態度は変わらないままです。記事n00105に示したような斑点米カメムシ駆除を促すコメの検査規格の見直し運動も必要です。
 生産者、養蜂家、消費者、環境保護団体らの合言葉は、農薬の使用削減が危害防止につながるということです。

★法規制がないことも問題すべきだ
 農薬の適正使用(ラベル通りに使用すること)に関する農水省の調査によれば、使用違反はゼロなのに、(記事n00103参照)、実施要綱では、以下のようになっています。
   『GAP( 農業生産工程管理) の実施が、農薬の適正使用に関しても有効な手段であることに鑑み、
   農業者に対しては、「農業生産工程管理( GAP)の共通基盤に関するガイドライン」やGAP認証の
   取得にあたって求められる農薬の適正使用に関連する事項等を参考として、具体的な取組を行うよう、
   積極的に指導を行うこと。』
 農薬の保管に関しては、毎年絶えることがない農薬の誤飲・誤食による中毒事故防止対策として、相変わらずで、移し替えをやめることや、保管管理の徹底を訴えるだけです。
 適正廃棄に関しては、『不要になった農薬やその希釈液等は、河川や水路等に投棄せず、適正に処分する。』との項目が追加されました。
 そもそも、最終有効年月を越えた農薬の不使用についても、努力規定にすぎず、法的に回収を義務付ける条文もないことが、一番の問題であることを忘れてもらっては困ります。

 いずれにせよ、実施要綱では、指導が中心で、しかも、法的な義務のない場合が多いので、毎年、おなじような文案がしめされるだけで、実効性がさだかでありません。そのせいか、今年の要綱には、以下が追加されました。
   『運動中に実施した活動や取組に係る検証の実施
   農薬による事故の防止、農薬の適正使用等に係る指導、普及啓発のために
   実施した活動、重点的に指導すべき項目として位置付けた事項への
   取組状況等について、実施の効果や成果を検証し、次回以降の運動の実効性
   を高めるよう努めること。』

作成:2018-04-30