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n00103#農水省が2015、16年度の国産農作物の農薬使用状況を、調査数を削減して公表#18-04
農水省は、2年ぶりに、2015,16年度の「国産農作物における農薬の使用状況及び残留状況調査結果」をまとめて公表しました。今号では、使用状況の内容を報告します(2014年度は記事t29709、2013年度は記事t28502参照)。
★調査対象農作物、調査農家数は大幅削減
調査対象の作物は2014年度までの20数種から2年で9種へと大きく減っただけでなく、作物ごとに毎年100から500軒あった調査農家数も50から60軒、総数でいえば500軒以下
に激減し、農薬の延べ使用回数も5分の1以下となりました。
その結果を下表に示します。農薬使用における違反(適用作物、使用量又は希釈倍数、使用時期、使用回数など) は、ゼロでした。農水省は、これを日本での農薬使用が適正になされていることの証拠にするわけです。そもそも、この調査は、対象農家にあらかじめ調査票を配布しておき、書面で適合かどうかを調べるだけの話で、農薬使用者のすべてが、適正な使用をしているとはとてもいえません。農薬取締法に基づく、『農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令 』はザル法であり、最終有効年月を過ぎた農薬を使用しても、農薬使用履歴を帳簿に記載しなくても、農薬取締法の罰則を科せらることはありません。
表12015年度の使用状況調査の結果
対象農産物 | 調査農家数 | 農薬の総使用回数 | 不適正使用の
あった農家数 |
米 | 60(536) | 357(2662) | 0 (0) |
しゅんぎく | 60(129) | 200(340) | 0 (1) |
にら | 60(107) | 406(544) | 0 (0) |
ブロッコリー | 60(277) | 438(1325) | 0 (0) |
計 | 240(3948) | 1401(29172) | 0 (2) |
( )は2014年度の数値
表2 2016年度の使用状況調査の結果
対象農産物 | 調査農家数 | 農薬の総使用回数 | 不適正使用の
あった農家数 |
米 | 60(60、536*) | 260(357、2662*) | 0 (0) |
みかん | 60(-) | 1105(-) | 0 (-) |
かき | 60(-、108*) | 944(-、1524*) | 0 (-) |
にんじん | 60(-) | 549(-) | 0(-) |
チンゲンサイ | 56(-、103*) | 279(-、455*) | 0 (-) |
しゅんぎく | 50(60、129*) | 198(200、340*) | 0 (0) |
たまねぎ | 60(-、168*) | 1372(-、1639*) | 0 (-) |
なす | 60(-、294*) | 853(-、3588*) | 0 (-) |
計 | 466(240、3948*) | 5560(1401、29172*) | 0 (0、2*) |
( )は2015年度と*2014年度の数値
★ん?不適正な使用はないのに、農水省はGAP(農業生産工程管理)を推奨する
【参考サイト】農水省:農業生産工程管理(GAP)に関する情報の頁
2020年の東京オリンピック・パラリンピックで組織委員会は、食品提供について、グローバルGAPの認証(取扱いの衛生基準だけでなく、環境保全を柱とする持続可能な農業管理がもとめられており、農薬使用によりヒトや環境に被害を与えてはならない)に適合することが必要だとしており、国産食品では、とても供給できないと問題になっています。
農薬使用に関する限り、上記の農水省の調査では何ら不適切な使用はないのですが、これは、一体どういうことでしょうか。同省は今年の農薬危害防止運動でも、『GAPの実施が、農薬の適正使用に関しても有効な手段であることに鑑み、農業者に対しては、「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」やGAP認証の取得にあたって求められる農薬の適正使用に関連する事項等を参考として、具体的な取組を行うよう、積極的に指導を行うこと。』としています。このことは、国の使用基準を守るだけでは、国際レベルには達しないことの証しにほかなりません。
また、日本の残留残留基準が緩いことも、これに輪をかけており、国内で流通している食品を、そのまま、海外に輸出できないため、農水省は、「輸出相手国の残留農薬基準値に対応した病害虫防除マニュアル」を新たに作成しているのです。つまり、国内向けとと輸出向けの二つの使用基準をつくり、農薬使用の少ないものを輸出しようというわけです。
東京都の残留農薬調査では、国産品の農薬検出率は、野菜で55%、果実で94%でしたが(記事t31704)、次号では、農水省調査による農薬残留状況(農薬別と作物別)を報告する予定です。
作成:2018-04-30