残留農薬・食品汚染にもどる
n00104#東京都健康安全研究センターの2015年度農作物残留農薬調査報告 (4)輸入農作物 (その3)熱帯果実類、ほか#18-04
【関連記事】2014年度:記事t30605(輸入野菜)、記事t30706(輸入柑橘類)、記事t30807(ベリー類とイチゴ)、記事30905(輸入熱帯果実類、ほか)
2015年度:記事t31704(国産)。記事t31804(輸入野菜)、記事t31904(輸入柑橘類、イチゴ・ベリー類)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 67号(2016)
相澤正樹他の輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成27年度)-果実類(67号p211)
東京都健康安全研究センターの2015年度残留分析結果(同センター年報67号)からの続報で、熱帯果実類、その他果実など11種86検体について、残留農薬の検出されたものを表1、と表2にまとめました。特に記載のないのは、果皮を含む全果で、果肉のみの場合は表中で()に記しました。なお、すべての検体で、基準違反はありませんでした。
86検体中、56%の48検体に何らかの農薬が検出され、これらの検出範囲は、痕跡〜650ppb(チリ産チェリーのテブコナゾール)でした。
【熱帯果実類】
3検体以上の分析で、検出率が高いのは、バナナ全果で、フィリピン産が94%、エクアドル産が83%、特に、有機リン系のクロルピリホスがフィリピン産から68.4%、痕跡〜50ppb見出されたのが注目されます。また、クロチアニジンとチアメトキサムのバナナ果肉への移行も確認されました。
マンゴーでは、複合残留が目立ち、台湾産では、有機リンMPPとその代謝物3種(うちスルホン体300ppb)及びアゾキシストロビン60、イプロジオン90、イミダクロプリド120各ppbとジフェノコナゾール痕跡が検出され、フィリピン産やメキシコ産でもアゾキシストロビン2農薬が見出されました。
ライチでは、中国産3検体に11種の農薬(有機リン4種、ピレスロイド系3種ほか)が、ベトナム産1検体に6種の農薬が検出されました。
表1 熱帯果実中の残留農薬検出状況
作物名 産地 検出数 農薬名 最大値
/検体数 ppb
パイナップル フィリピン 1/13 OPP 10
1/13 トリアジメホン 70
1/13 トリアジメノール 90
2/13 トリフルミゾ−ル 30
1/13 プロクロラズ Tr
バナナ エクアドル 3/ 5 クロルピリホス 10
4/ 5 ビフェントリン Tr
バナナ フィリピン 1/18 アゾキシストロビン Tr
1/18 イマザリル 10
1/18 クロルフェナピル 20
13/18 クロルピリホス 50
1(1)/18(18)クロチアニジン 10(10)
1/18 シペルメトリン Tr
1(2)/18(18)チアメトキサム Tr(Tr)
1/18 デルタメトリン Tr
2/18 ビフェントリン Tr
パパイア アメリカ 1(1)/1(1) イミダクロプリド 30(20)
1/ 1 ブプロフェジン 10
マンゴー 台湾 (1)/1(1) MPP 30
1(1)/1(1)1 MPPオキソンスルホキシド 50(20)
1(1)/1(1) MPPスルホン 330(20)
1(1)/1(1) MPPスルホキシド120(20)
1(1)/1(1) アゾキシストロビン 60(10)
1(1)/1(1) イプロジオン 90(20)
1(1)/1(1) イミダクロプリド 120(110)
1/ 1 ジフェノコナゾール Tr
マンゴー パキスタン 1/ 2 アゾキシストロビン Tr
マンゴー フィリピン 1/ 1 MEP 10
1/ 1 アゾキシストロビン200
マンゴー ベトナム (1)/(5) アセフェート Tr
マンゴー ペルー (1)/(1) TBZ Tr
マンゴー メキシコ 2/ 2 アゾキシストロビン610
1(1)/2(2) トリフロキシストロビン20(Tr)
ライチ 中国 1(1)/3(4) アセフェート Tr(Tr)
(2)/(4) ジメトエート (60)
(1)/(4) オメトエート (Tr)
1/ 3 エンドスルファンサルフェートTr
1/ 3 2,4,6−トリクロロフェノール* Tr
*:有機塩素系殺菌剤プロクロラズの代謝物
2/ 3 クロルピリホス 140
1/ 3 シハロトリン 20
2/ 3 シペルメトリン 370
1/ 3 ジメトエート 220
1/ 3 フェンプロパトリンTr
1/ 3 プロフェノホス 30
1/ 3 プロピコナゾール 40
1/ 3 メタラキシル 10
ライチ ベトナム 1/ 1 アゾキシストロビン 50
1/ 1 キナルホス 60
1/ 1 クロルピリホス 110
1/ 1 ジフェノコナゾール260
1/ 1 プロピコナゾール 50
1/ 1 ヘキサコナゾール Tr
【その他の果実】
複合汚染は、熱帯果実類だけでなく、他の輸入果実でも、さながら、農薬のオンパレードでした。
チェリーでは、アメリカン産にNAC20、イミダクロプリド130、トリフルミゾール80、ピラクロストロビン痕跡、ボスカリド30ppbの5農薬が、同じくチリ産にアセタミプリド30、イプロジオン530、ボスカリド痕跡、テブコナゾール650ppbの4農薬が、メロンでもアメリカ産とメキシコ産に3農薬が検出されました。
そのほか、ブドウの4検体すべてに農薬が検出され、うちアメリカ産2検体から11種の、チリ産2検体から8種の農薬が見出されています。また、ザクロでは、アメリカ産2検体に3種の農薬が残留していました。
研究者は、『ブドウやチェリーは生のまま皮ごと摂取する可能性が高い。個々の農薬の残留量は基準値を超える濃度ではなかったが、今後も継続的に残留実態を観察していく必要がある』としていますが、複合汚染の影響も気懸りです。
表2 その他の果実中の残留農薬検出状況
作物名 産地 検出数 農薬名 最大値
/検体数 ppb
キウイ ニュージーランド 1/ 9 イプロジオン 50
ザクロ アメリカ 1/ 2 イミダクロプリド Tr
1/ 2 イマザリル 10
1/ 2 クロチアニジン 20
チェリー アメリカ 1/ 1 NAC 20
1/ 1 イミダクロプリド 130
1/ 1 トリフルミゾール 80
1/ 1 ピラクロストロビン Tr
1/ 1 ボスカリド 30
チェリー チリ 1/ 1 アセタミプリド 30
1/ 1 イプロジオン 530
1/ 1 ボスカリド Tr
1/ 1 テブコナゾール 650
ブドウ アメリカ 1/ 2 アセタミプリド 140
1/ 2 キノキシフェン 20
1/ 2 クロチアニジン 50
1/ 2 シフルトリン 10
2/ 2 シプロジニル 140
1/ 2 テブコナゾール 30
1/ 2 トリフロキシストロビンTr
2/ 2 ピラクロストロビン 70
1/ 2 ブプロフェジン Tr
2/ 2 ボスカリド 120
1/ 2 メトキシフェノジド 20
ブドウ チリ 1/ 2 アゾキシストロビン 20
2/ 2 イプロジオン 80
1/ 2 イミダクロプリド Tr
1/ 2 キノキシフェン Tr
1/ 2 ジフェノコナゾール 20
1/ 2 テブコナゾール 10
1/ 2 ミクロブタニル 10
2/ 2 ボスカリド 40 100
メロン アメリカ 1(1)/1(1) イミダクロプリド Tr(Tr)
(1)/(1) ビフェントリン (Tr)
1/ 1 ボスカリド Tr
メロン メキシコ 1/ 1 TPN 30
1(1)/1(1) イミダクロプリド 20(20)
1/ 1 ペリメトリン 10
★果実類の残留状況は問題だ
記事t31904では、輸入柑橘類、イチゴ・ベリー類の残留実態を紹介しましたが、今回の報告を合わせ、輸入果実類の残留状況をまとめると、果実類19種154検体のうち、16種109検体に、検出率71%で、殺虫剤,殺菌剤,除草剤合わせて62種類の農薬が痕跡(10ppb未満)〜3800ppb検出されていました。
農薬の種類別の検出状況は、表3のようでした。
表3 果実類等の分析対象となった農薬の種類別の検出状況
農薬の種類 分析対象 検出された 検出範囲 検出された 延べ
農薬数 農薬の種類 ppb 作物の種類 検出数
有機リン系農薬 92 14 Tr〜330 8 71
最大残留値は台湾産マンゴーのMPPスルホン
有機塩素系農薬 39 5 Tr〜530 9 23
最大残留値はチリ産チェリーのイプロジオン
カーバメート系農薬 26 3 Tr〜20 3 3
最大残留値はアメリカ産ブドウのメトキシフェノジドとチェリーのNAC
ピレスロイド系農薬 16 8 Tr〜370 8 33
最大残留値は中国産ライチのシペルメトリン
含窒素系農薬ほか* 122 33(5) Tr〜3800 15(11) 237(25)
最大残留値はオーストラリア産オレンジのイマザリル。()はネオニコチノイド系農薬で内数
作成:2018-04-30