食品汚染・残留農薬にもどる
n00203#農水省による国産農作物の2015、6年度農薬使用状況 (2)残留農薬調査#18-05
記事n00103につづいて、農水省が先に発表した資料(農薬の残留状況調査)から、2015、16年度の国産農産物の農薬別及び農産物別の結果を紹介します(14年度は記事t29804参照)。
★2年間の対象作物10種706検体で、農薬検出数は延べ482件
生産農家から得た作物の農薬残留調査では、農作物は14年より大幅に減り15、16年で、10種706検体でした。
表1に作物別の分析農薬数、検出農薬数などを示しました。2015年度は4作物240検体、2016年度は8作物468検体が分析に供されましたが、作物ごとに、分析対象となった農薬数は異なります。いずれの農作物も、なんらかの農薬が検出され、作物数×分析農薬数)=延べ検体数は両年で3763件、検出検体は延べ482件でした。
作物の種類が少ないですが、シュンギク、ニラ、チンゲンサイ、カキでの検出数の多さが目立ちます。農薬別で最大残留値が高いのは、殺菌剤アゾキシストロビンや殺虫剤ジノテフランです。
このうち、基準を超えたのは、2015年度のニラでのプロチオホス2検体で0.2ppmと0.3ppmが残留していました。栽培した農家を調査したところ、両農家とも、ニラの株元に灌注したプロチオホス乳剤が、処理時の飛散等によりニラの新葉に付着したことが原因である可能性が高いと考えられたとのことです。
表1 2015、16年度の農作物別の検体数と分析対象農薬数、延べ検出数
作物名 年度 検体数 延べ検体数 延べ検出数 最大農薬と残留値 ppm
コメ 2015 60 48農薬345 7農薬31 トリシクラゾール 0.11
2016 60 38農薬275 5農薬24 ジノテフラン 0.23
シュンギク2015 60 12農薬143 8農薬66 アゾキシストロビン 11
2016 50 13農薬139 11農薬55 アゾキシストロビン 6.4
ニラ 2015 60 22農薬257 14農薬92 アゾキシストロビン 8.6
ブロッコリー2015 60 37農薬246 7農薬8 クロルフェナピル 0.27
ミカン 2016 60 32農薬404 1農薬21 ジノテフラン0.09
カキ 2016 60 39農薬544 18農薬78 ジノテフラン0.17
ニンジン 2016 60 35農薬326 5農薬7 イプロジオン及びボスカリド 0.13
チンゲンサイ2016 56 23農薬169 14農薬64 ジノテフラン 1.5
タマネギ 2016 60 42農薬497 2農薬2 メソミル 0.03
ナス 2016 60 56農薬418 15農薬34 プロシミドン 0.33
★作物別では葉もの野菜での残留が目立つ
表2に、農作物と農薬の組合せで、検出率が50%を超えるものと、検体数10以上で、検出率30〜59%のものを、検出範囲とともに示します。なお、1検体しか分析していないものは除きました。
シュンギクとクロチアニジンやジノテフランの組み合わせの検出率が高く、ニラ、チンゲンサイでもネオニコチノイド系が高いです。また、シュンギクのアゾキシストロビンの検出率77%も高いです。そのほか、検出数の多いのは、ジノテフランでカキ、コメ、ミカンなどでした。
表2 検出率30%以上の作物と農薬の組み合わせ
作物名(年度) 農薬名 検体数 検出数 検出率 検出範囲 ppm
シュンギク(2015) クロチアニジン 4 4 100% 0.02〜2.8
シュンギク(2015) ジノテフラン 16 16 100 0.02〜2.2
ニラ(2015) ペンチオピラド 3 3 100 0.02〜0.16
ナス(2016) ボスカリド 3 3 100 0.05〜0.12
シュンギク(2016) ジノテフラン 15 13 87 0.01〜4.9
カキ(2016) シラフルオフェン 7 6 86 0.03〜0.06
ミカン(2016) ジノテフラン 25 21 84 0.01〜0.09
チンゲンサイ(2016) ジノテフラン 21 17 81 0.01〜1.5
ニラ(2015) クロチアニジン 18 14 78 0.01〜2.9
シュンギク(2015) アゾキシストロビン 13 10 77 0.02〜11
チンゲンサイ(2016) ピリダリル 4 3 75 0.09〜1.2
カキ(2016) ジノテフラン 34 24 71 0.01〜0.17
シュンギク(2016) アゾキシストロビン 17 12 71 0.01 ― 6.4
ニラ(2015) ジノテフラン 13 9 69 0.03〜1.9
シュンギク(2015) フルフェノクスロン 29 20 69 0.02〜4.8
ニラ(2015) テブコナゾール 3 2 67 0.09〜3.8
チンゲンサイ(2016) オキソリニック酸 6 4 67 0.01〜0.41
ニラ(2015) クレソキシムメチル 32 20 63 0.02〜4.6
シュンギク(2016) クレソキシムメチル 8 5 63 0.29〜2.2
コメ(2015) ジノテフラン 39 21 54 0.01〜0.08
ニラ(2016) フルジオキソニル 18 9 50 0.08〜1.2
チンゲンサイ(2016) フルフェノクスロン 10 5 50 0.03〜0.43
チンゲンサイ(2016) メソミル 4 2 50 0.03〜0.1
シュンギク(2016) チアメトキサム 2 1 50 0.58
シュンギク(2015) ニテンピラム 15 7 47 0.01〜0.33
シュンギク(2016) フルフェノクスロン 15 7 47 0.05〜1.78
チンゲンサイ(2016) クロルフェナピル 20 9 45 0.04〜1.2
カキ(2016) フルベンジアミド 16 7 44 0.01〜0.02
コメ(2016) フェリムゾン 10 4 40 0.06〜0.12
チンゲンサイ(2016) シアゾファミド 10 4 40 0.06〜1.4
コメ(2016) ジノテフラン 36 13 36 0.01〜0.23
ニラ(2015) アセタミプリド 24 8 33 0.08〜3
カキ(2016) クロチアニジン 24 8 33 0.01〜0.03
シュンギク(2016) ニテンピラム 21 7 33 0.01〜0.23
カキ(2016) ジフェノコナゾール 34 11 32 0.01〜0.06
ニラ(2015) シペルメトリン 28 9 32 0.06〜2.2
チンゲンサイ(2016) アセタミプリド 25 8 32 0.02〜0.63
ニラ(2015) アゾキシストロビン 20 6 30 0.03〜8.6
★最も多いジノテフランは136検体で検出
表3には、農薬別の検出数(検出された作物の種類数と検出検体数)及び最大検出値を示した農作物のリストを示しました。
検出された農薬の種類は49種で、延べ482検体に農薬が0.01〜11ppm残留していました。
検出件数が多い農薬は、ネオニコチノイド系のジノテフラン136件、ついで、クロチアニジン33検体、IGR系殺虫剤フルフェノクスロンと殺菌剤アゾキシストロビン32検体、殺菌剤クレソキシムメチル30検体、殺虫剤アセタミプリド29検体と続きます。
検出値が高いのは、アゾキシストロビンのニラ11ppm、同ニラ8.6、ジノテフラン-シュンギク4.9ppm、フルフェノクスロン-シュンギク4.8ppm、クレソキシムメチル-ニラ4.6ppm、クロルフェナピル-シュンギク4.1ppm、テブコナゾール-ニラ3.8ppmなどでした。
なお、この調査では、複合残留の実態は、明らかになっていません。
表3 農薬別の検出数と最大検出作物(数値は検出値ppm)
農薬名 検出作物の 最大検出作物と
種類数と検出数 最大検出値ppm
アセタミプリド 5種:29 ニラ:3
アセフェート 1種:2 カキ:0.03
アゾキシストロビン 6種:32 シュンギク:11
イソキサチオン 1種:1 シュンギク;0.02
イソプロチオラン 1種:1 コメ:0.08
イプロジオン 2種:2 ナス:0.21
イミダクロプリド 1種:2 チンゲンサイ:0.03
エトフェンプロックス 1種:1 コメ:0.01
オキソリニック酸 2種:5 チンゲンサイ:0.41
キャプタン 1種:4 カキ:0.06
クレソキシムメチル 3種:30 ニラ:4.6
クロチアニジン 6種:33 ニラ:2.9
クロルフェナピル 4種:18 シュンギク:4.1
クロロタロニル 1種:4 ナス:0.11
シアゾファミド 1種:4 チンゲンサイ:1.4
シエノピラフェン 1種:1 ナス:0.01
ジノテフラン 8種:136 シュンギク:4.9
ジフェノコナゾール 1種:11 カキ:0.06
シペルメトリン 3種:13 ニラ:2.2
シラフルオフェン 1種:6 カキ:0.06
スピノサド 1種:3 ニラ:0.16
チアメトキサム 3種:4 チンゲンサイ:0.82
テブコナゾール 2種:3 ニラ:3.8
テフルベンズロン 1種:2 チンゲンサイ:0.04
トリシクラゾール 1種:4 コメ:0.11
トリフルミゾール 1種:1 ニラ:0.2
トリフロキシストロビン1種:1 カキ:0.02
トルフェンピラド 2種:5 ニラ:2
ニテンピラム 1種:14 シュンギク:0.33
ピリダリル 2種:10 チンゲンサイ:1.2
フェリムゾン 1種:8 コメ:0.12
フェンプロパトリン 2種:3 カキ:0.04
ブプロフェジン 1種:1 コメ:0.02
フルジオキソニル 1種:9 ニラ:1.2
フルトラニル 1種:1 コメ:0.08
フルフェノクスロン 2種:32 シュンギク:4.8
フルベンジアミド 3種:10 ブロッコリー:0.13
プロシミドン 1種:2 ナス:0.33
プロチオホス 1種:3 ニラ:0.3
ブロモブチド 1種:5 コメ:0.09
ペルメトリン 1種:1 シュンギク:0.04
ベンチオピラド 3種:6 ニラ:0.16
ペンディメタリン 1種:2 ニンジン:0.02
ボスカリド 4種:7 ニンジン:0.13
ホスチアゼート 1種:1 ニンジン:0.07
メソミル 3種:4 チンゲンサイ:0.1
メタミドホス 1種:2 カキ:0.02
メパニピリム 1種:2 ナス:0.04
作成:2018-04-30