ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

n00402#ネオニコチノイド農薬の水系汚染〜環境化学討論会の報告より (1)埼玉県の河川#18-07
 今年、那覇市で開催された第27回環境化学討論会では、ネオニコチノイド系農薬を中心とした河川水汚染状況に関する報告が目につきました。埼玉県、東京都、神奈川県、大阪府ほかの事例を、一部前年の26回討論会での発表を加え、逐次、紹介していきます。

【関連記事】記事t29903
【参考サイト】日本環境化学会:Top Page
第26回環境化学討論会プログラム(2017年6月、静岡市開催)
第27回環境化学討論会とプログラム(2018年5月、那覇市開催)

★埼玉県内下水処理施設から
 埼玉県環境科学国際センターの大塚宜寿さんらは、いままでにも、県内河川水中のネオニコチノイド類の汚染調査を実施してきました(記事t27704記事t29005)。  その続報ともいうべき、県内の下水処理場でのネオニコチノイドの検出結果とその除去方法の検討です。

【2017年の報告】
 ・下水処理施設からのネオニコチノイド系殺虫剤およびフィプロニルの排出実態
        ○大塚宜寿1,蓑毛康太郎1,川羽田圭介2,山崎宏史2,茂木守1,堀井 勇一1,竹峰 秀祐1
               (1埼玉県環境科学国際セ,2東洋大・理工)
 昨年の第26回環境化学討論会では、上記のような表題で、埼玉県内の8つの下水処理施設の放流水中のネオニコチノイド類(分解物も含む)とフィプロニルらの殺虫剤の分析が行なわれました。図1に、その結果の一部を示します。河川水も放流水もジノテフラン、イミダクロプリド、クロチアニジンの順で、濃度が高いことがわかります。


 そのほか、2016年の調査で、得られた主な知見は以下のようでした。
 ・すべての放流水試料から,ジノテフラン,クロチアニジン,イミダクロプリド,チアメトキサム,
  フィプロニル,IM-2-1(アセタミプリドの分解物デスメチル体)が検出された。
 ・県内出荷量の多いジノテフランの濃度が高く、チアクロプリド、ニテンピラム、未登録の
  スルホキサフロルは検出されなかった。
 ・濃度レベルは,概して河川水中濃度と同程度であったが,河川水に比べてイミダクロプリドと
  フィプロニルの濃度が高い特徴がみられた
 ・濃度構成比を河川水と比較すると,放流水では、イミダクロプリドとフィプロニルの占める割合が
  高い特徴がみられた。 
【2018年の報告】
 ・下水処理施設におけるネオニコチノイド系殺虫剤およびフィプロニルの除去効果
         ○大塚宜寿,蓑毛康太郎(埼玉県環境科学国際センター)

 前年の調査で、生活排水中にもネオニコチノイド系殺虫剤は含まれていると考えられ,下水処理施設で処理されなかったものが放流水中で検出されたと推察されることから、  これらの下水処理施設における流入水と放流水中のネオニコチノイド類を分析し、処理効果のより詳細な検討がなされました。結果は、図2に示したように、ジノテフラン、イミダクロプリド、フィプロニルの濃度がいずれも高く、9箇所の処理施設とも、全体の除去効果は低いことがわかりました。

 
★さいたま市内河川の残留実態
【2018年の報告】
 ・さいたま市内河川におけるネオニコチノイド系農薬の残留実態調査
         ○川合裕子 1 (1 さいたま市健康科学研究センター)


 川合さんは、2017年7月から18年3月に、市内の公共用水域常時監視地点のうち河川4個所−@荒川羽根倉橋(前記地点図では黄色の@)、A鴨川中土手橋(同図ピンクA)、B芝川境橋(同図ピンクD)、C芝川八丁橋(同図ピンクE)−で採水し、ネオニコチノイド類とフィプロニルの検出状況を調べました。
 左図のように、全般的にジノテフラン濃度が高く50ng/Lを超えた時もあり、イミダクロプリドやクロチアニジンでも10ng/Lを超えるケースがありました。概ね、上述の2016年の県の調査と同じ傾向がつづいていました。
 そのほか、以下のような考察がみられました。
・季節変動をみると、農薬使用量の多い夏場においては
 河川中にも高濃度で分布し、冬場になるにつれて濃度は
 低くなっている 
・@で 7月の検出濃度が高いのは 荒川を流れる河川の
 流域面積が広いため、広範囲の田畑等から流出した農薬が
 河川に集中したため。
・BとC は同じ芝川であるが、上流の B から下流の
 Cにかけて、河川の両岸に田畑が多く分布しているため、
 農薬の検出濃度はCで高値となっている。


作成:2018-04-30