ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

n00502#ネオニコチノイド農薬の水系汚染〜環境化学討論会の報告より (2)東京都と神奈川県の河川#18-07
 前号につづき、第27回環境化学討論会で報告された河川水汚染状況について、東京都と神奈川県の場合を紹介します。

【関連記事】記事n00402
【参考サイト】日本環境化学会:Top Page
               第27回環境化学討論会とプログラム(2018年5月、那覇市開催)

   追記:東京都環境科学研究所:Top Page年報2018年版もくじp-64の4-7の西野らの論文

★東京都河川水でもネオニコチノイドら検出
・ 東京都内河川におけるネオニコチノイド系農薬等の実態調査
      ○西野 貴裕,加藤 みか,下間 志正((公財)東京都環境公社東京都環境科学研究所)

 東京都環境科学研究所の西野さんらの調査では、採水は2017年4〜5月に、江戸川、荒川、隅田川、多摩川等で実施されました。分析対象はアセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサム、チアクロプリド、ニテンピラムのネオニコチノイドとフィプロニルです。
 表1には区部の、表2には多摩川水系の検出状況を示します。

【区部の河川】
 7種のネオニコチノイドのうち、アセタミプリド(最大値は中川・平和橋2.5ng/L)、イミダクロプリド(新河岸川・徳丸橋7.0ng/L)、クロチアニジン(新河岸川・志茂橋6.3ng/L)とジノテフラン(荒川・平井大橋16ng/L)の検出が目立ちました。
表1 区部の河川水のネオニコチノイドらの検出状況 (単位:ng/L。()は定量限界値未満を示す)

水採取点    アセタミ イミダク クロチア ジノテ チアクロ チアメ  ニテン フィプ
        プリド ロプリド  ニジン フラン プリド トキサム  ピラム ロニル
江戸川新葛飾橋 (0.90)     ND       1.4     (4.0)    (1.2)     ND     (1.6)      ND
荒川  扇大橋    1.2      4.6       4.3      11       4.2      ND       ND       ND
      堀切橋    1.7      4.7       4.2      12       3.8      ND       ND       ND
    平井大橋    1.3      4.1       2.7      16       3.3      ND       ND       ND
新河  芝宮橋    1.2      6.8       4.9      13       3.1      ND       ND       ND
  岸川徳丸橋    1.4      7.0       5.5      13       5.6      ND       ND      (5.6)
      志茂橋    1.0      4.2       6.3      13       7.9      ND     (1.3)      ND
隅田川両国橋    0.50     3.5       1.7      12       2.1      ND       ND       ND
中川  潮止橋    1.6      4.2       5.0       9.0     2.0      ND       ND       ND
      平和橋    2.5      5.1       4.7       9.3     3.3      0.50     ND       ND
【多摩川水系】
 多摩川水系については、支流や下水処理場を含め、表の記載順は、上流(本流永田橋)から下流(本流原橋)にかけてです。アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジンとジノテフランは区部同様、比較的多く検出されていますが、区部では検出されなかったフィプロニルがD下水処理場から最大138ng/L で、他の処理場や多摩川でも関戸橋から下流では検出されました。農薬以外の生活由来用途の影響もあると思われます。
 表2 多摩川水系でのネオニコチノイドらの検出状況   (単位:ng/L。()は定量限界値未満を示す)

水採取点    アセタミ イミダク クロチア ジノテ チアクロ チアメ   ニテン フィプ
        プリド  ロプリド  ニジン フラン  プリド トキサム  ピラム ロニル
                                                                        
多摩川永田橋    ND      ND     ND     ND    ND     ND     ND      ND
平井川多西橋    ND     (0.87)     47        6.2     ND      ND      ND       ND
秋川東秋川橋     ND      ND        2.5       ND       ND      ND      ND       ND
A処理場        (0.72)     2.2        1.9       6.0      ND       ND        ND       12
B処理場        (0.74)     1.9        2.1      10       (1.1)     ND        ND       15
残堀川立日橋下   ND      ND        4.3       7.2      ND      ND      ND       ND
谷地川新旭橋     ND     1.7        4.6       7.2      ND      ND      ND       ND
多摩川日野橋     ND     3.1        4.8       8.9     (1.5)    ND      ND       ND
浅川高幡橋       ND    (1.3)      (1.4)      5.0      ND      ND      ND       ND
C処理場        (1.2)      7.3        3.4      11       (0.87)    ND        ND       ND
D処理場        (1.4)       ND        4.8      17        5.5     (0.52)     ND      138
多摩川関戸橋   (0.84)     8.4        5.0      15        2.2      ND        ND       17
大栗川報恩橋     ND    (1.2)       3.4       8.5      3.7     ND        ND     (0.39)
E処理場         1.8        ND        5.1      17        2.5      ND        ND       19
F処理場         6.0        ND        6.5      12       12        ND        ND       38
多摩川原橋     (0.94)     5.3        5.8      12        3.7     (0.45)     ND       18

★神奈川県におけるフィプロニルらの検出状況
【関連記事】記事t24407(2011年12月号。鶴見川のネオニコチノイド)

・ 神奈川県内河川におけるフェニルピラゾール系殺虫剤とその分解物の存在実態
     ○鎌田素之1,久保明日香2,川嵜悦子2,中田俊芳2,須戸 幹3
            (1 関東学院大学,2 株式会社日吉,3 滋賀県立大学)
 埼玉県でも東京都でも、河川水や下水処理場放流水にフェニルピラゾール系のフィプロニルが検出されていますが、同剤は、ADIが低く、水道水監視項目にある目標値が 0.0005mg/L=0.5μg/Lと登録農薬の中で最も低い値であることに注目した関東学院大学の鎌田さんらは、神奈川県内の河川で、フィプロニルとその分解物(スルフォン体とスルフィド体=チオエーテル体ともいう)及び同系のエチプロールの調査を実施しました。  採水は、2016年5月〜12月と2017年5月〜10月に、相模川、鶴見川、金目川ほかの17地点で、概ね月一回(農村地域河川は5月〜8月週一回)行われました。  討論会要旨集記載されている都市河川である神奈川県北部の鶴見川と同県中南部金目川支流の水田地域の鈴川における2016年のの検出状況を図に示します。後者では、フィプロニルの検出濃度は調査対象河川の中で最も高く,検出頻度も高いでした。



【鈴川】フィプロニルの検出濃度は6月初旬〜中旬にかけて
 最も高い値を示し最高濃度は8.8ng/Lであった。分解解物
 であるスルフィド体濃度はフィプロニル検出濃度より高く,
 最高濃度は、15ng/Lであった。7月以降も高い値で、9月まで
 継続的に検出された。

【鶴見川】すべての試料からフィプロニルが検出されたが、
 2種の分解物は殆ど見出されなかった。農薬以外の家庭での
 使用で、下水処理水が流入しているせいかも知れない。

 なお、エチプロールは、両河川ともフィプロニルと同程度の検出
レベルであったが,検出時期は8月であり,検出期間もフィプロニル
より短かった。カメムシ対策として散布されたためと思われる.




 著者らは、河川水には、フィプロニルだけでなく、それより高い検出濃度で、分解物が継続的に検出されていることから、今後、フィプロニルの分解物、エチプロールの分解物の汚染状況についての知見を集積する必要があるとしていますが。農薬以外の汚染源がなにであるかの調査も必要です。


作成:2018-08-30