食品汚染・残留農薬にもどる
n00604#厚労省の輸入食品監視調査結果2017年11月〜2018年4月の残留農薬基準違反#18-09
【関連記事】記事t31607(2017年5月-10月)
【参考サイト】厚労省:輸入食品監視業務の頁にある違反事例
記事t31607に続き、厚労省管轄の検疫所での輸入食品検疫検査で、残留農薬が基準を超えて検出された事例について、2017年11月〜18年4月の半年分をまとめました。
★違反件数は延べ45件
残留基準又は一律基準違反数は前の半期より3件減少し、延べ45件(うち一律基準0.01ppm違反は33件)で、月平均7件でした。多かった月は、2月10件、4月9件、12と3月8件でした。
この半年間に、17カ国、19品目の輸入食品(冷凍や加工食品も含む)から19種の農薬の食品衛生法違反がありました。
違反を摘発した検疫機関は12で、そのうち、横浜検疫所が一番多く13件、神戸二課が7件、東京が5件でした。違反が判明したのはモニタリング検査が24、命令検査が17、自主検査が4件ありました。次頁の表に、食品別、生産国別、農薬別の件数を違反の多い順に示します。
【食品別の違反】
表(a)の食品別違反で、ワースト一位は相変わらずカカオ豆で前半期5件増の16件、二位はトウガラシ類5件でした。
カカオ豆は、14件が2,4−Dの一律基準(0.01ppm)違反で、クロルピリホス(0.11ppm)、フェンバレレート(0.04ppm)、シペルメトリン(0.39ppm)が一件づづあり、産地ではベネズエラ産とガーナ産が増え、それぞれ9件と6件、前半期の6件のエクアドル産は1件に減りました。なお、ベルギー産のココア粉(カカオ豆の原産国はベルー)にも2,4−Dの違反がありました。
赤トウガラシ類の5件の違反は、中国産が3件で、BHC(0.08ppm)、クロルプロファム(0.04ppm)、プロピコナゾール(0.02ppm) 。ベトナム産にはいイソプロチオラン(0.29ppm)とプロピコナゾール(0.05ppm)が複合残留していました。
ピスタチオナッツ3件はイラン産でイミダクロプリド(0.07-0.35ppm)、活けアサリ3件は中国産でプロメトリン違反(0.02-0.06ppm)でした。
前半期に6件あったゴマのイミダクロプリド違反(0.02〜0.03ppm、うちブルキナファッソ産が5件)はなくなり、エチオピア産の2,4−D1件(0.58ppm)のみでした。
【生産国別の違反】
表(b)の生産国別違反では、中国産が10件がワースト一位で、ピーマンや香辛料を含む赤トウガラシ類、活アサリなどがありました。一時期多かったタマネギのチアメトキサムは2件と減少したままです。
ベネズエラの8件はすべてカカオ豆で2,4−Dで。うち1件はシペルメトリンとの複合トリアゾホス残留でした。ガーナの6件も、すべてカカオ豆でした。
イランの3件は前述のようにピスタチオナッツでしたが、インドの3件は香辛料で。トウガラシのトリアゾホス(0.04ppm)、イプロベンホス(0.08ppm)、イミダクロプリド(0.10ppm)でした。
件数は1件づつですが、ハンガリー産のハチミツ加工品にはクマホス(0.02ppm)、イタリア産のうるち精米にはピリミホスメチル(0.37ppm)が違反検出されていました。
前の半期に5件あったエクアドルとブルキナファッソは、それぞれ、1件と0件に減りりました。
【農薬別の違反】
表(c)の農薬別違反件数では、ワーストワンは2,4−Dの18件(うち12件はカカオ豆(0.02-0.07ppm))で、前の半期より6件多いでした。ついで、イミダクロプリド4件、プロメトリン3件、さらに、前の半期で3件あったクロルピリホスとチアメトキサムの2件と、ジフェノコナゾールとビフェントリンはゼロとなりました。
全違反の検出範囲は0.02ppm(中国産活アサリのプロメトリンやベネズエラ産カカオ豆の2,4−Dほか)〜0.58ppm(エチオピア産ゴマの2,4−D0.58ppm)で、ほかに0.25ppm以上が4件でした。
【違反の原因と措置】
食品の違反原因については、16件について記載があり、内訳は、周辺からのドリフトが10件、事前確認や検査不十分が3件、除草剤汚染3件はアサリでした。ほかに、保管中の農薬使用、他国向け製品の誤出荷、くん蒸剤汚染などが1件づつありました。
違反食品の措置では、全量保管し、廃棄・積み戻しを指示したケースが21件、積戻し14件、廃棄9件などでした。前の半期に3件あった全量販売済みはありませんでした。
表 2017年11月〜18年4月の内容別違反件数 ( )は前の半期の違反数
(a)食品別 (b)生産国別 (c)農薬別
カカオ豆 16(11) 中国 10(12) 2,4-D 18(12)
トウガラシ 5(1) ベネズエラ 8(2) イミダクロプリド 4(6)
ピスタチオナッツ3(0) ガーナ 6(1) プロメトリン 3(0)
活アサリ 3(0) イラン 3(0) クロルピリホス 2(3)
タマネギ 2(3) インド 3(0) チアメトキサム 2(3)
その他14作物 各1 イタリア 2(0) トリアゾホス 2(2)
その他11国 各1 プロピコナゾール 2(1)
その他12農薬 各1
★オーストラリア産大麦(はだか麦)の違反事例〜加工品も回収へ
【参考サイト】伊藤忠:豪州産大麦から残留農薬基準を超える農薬成分が検出された件について
農水省:米麦の残留農薬等の調査結果、輸入米麦の残留農薬等の分析結果(平成29年度前期)、ほか
豪州産輸入大麦に関する食品衛生法違反事案について(4月3日)
農水省は、4月3日、オーストラリア産の大麦に殺菌剤アゾキシストロビンが残留基準0.5ppmを超え、2.5ppm検出されたことを発表しました。大麦は、2017年7月以後、伊藤忠商事社が輸入し、西田精麦社が販売していたもので、後者が加工した大麦フレーク加工品の提供を受けた食品メーカーの自主検査の結果、基準違反があったことが判明、伊藤忠社が、3月26日、農水省に報告しました。
加工食品には、残留基準がありませんが、原料となる作物に基準違反があれば、食品衛生法違反で回収されることになります。
日本では、大麦へのアゾキシストロビンの適用はありませんが、オーストラリア産の大麦について、現地で栽培時に使用されたか、防かび目的で、ポストハーベスト剤として使用されたかはっきりしません。農水省は、伊藤忠社に下記の調査報告を提出するよう指示していますが、原因等は明確になっていません。
・流通先への連絡、商品の流通の差止め・回収・公表等を適切に行い、その状況を報告する
・産地段階でのサーベイランス検査を14年以上行っており、アゾキシストロビンが
検出されたことはない(定量限界0.02 ppm)ことから、原因究明と再発防止策報告する
その後、当該大麦加工品を用いた以下の食品メーカーが、HPでお詫びと回収の告知をしています。
・日本ルナ社:Top Page、商品の自主回収につきまして
「TOPCUP アサイーヨーグルトボウル」と「TOPCUP グリーンスムージーヨーグルト」
・新日本配合薬品:Top Page
バーリーマックス×九州産大麦若葉(バーリーマックス青汁)についてのお詫びと自主回収に関するお知らせ
・九州薬品工業:Top Page
「バーリーマックス×九州産大麦若葉(バーリーマックス青汁)」についてのお知らせ
・西田精麦 :Top Page
弊社商品についてのお詫びと自主回収に係るお願い
・バブルスター :Top Page
商品についてのお詫びと自主回収のお知らせ
・小川生薬:Top Page
ホワイト「チアシード入りスーパー大麦バーリーマックス」「スーパー大麦バーリーマックスフレーク」についてのお詫びとお知らせ
・日清シスコ:Top Page
シリアル商品についてのお詫びと自主回収のお知らせ
【その他の違反事例】
上記に加え、今年に入ってから、4月までに、以下の違反による回収がありました。
・2月25日、エム・シー・フーズ社は、スリランカ産の紅茶ティーバッグに、除草剤MCPAが一律基準を超える0.17ppmが検出されたとして、4種の製品の回収を発表しました。
・2月27日、神戸物産は、インドネシア産の冷凍オクラに残留基準を超える農薬が検出されたとして、回収しましたが、農薬名は公表しませんでした。
・3月12日、ヤマガタ食品が輸入し、イオン株式会社が販売した冷凍食品「トップバリュ 4種の野菜と豚肉使用 春巻き」にホキシム0.03ppmが検出され、回収されました。
*** 囲み記事:伊藤忠輸入のオーストラリア産大麦に残留していたアゾキシストロビン ***
【関連記事】記事t25104
【参考サイト】農水省:アゾキシストロビンについて
食品安全委員会:農薬評価書
厚労省:残留基準設定資料、食品添加物用資料
日本では、1998年4月に農薬登録され、商品名アミスターとして知られています(2016年の成分出荷量は年間約69トン)。現在の登録製剤は単剤10、複合剤13で、コメ、コムギ、豆類、ブドウなどに適用があり、イモチ病や紋枯れ病対策で水田空中散布にも使われます。
2012年6月、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会は残留基準緩和案を提示しました。アメリカではポストハーベスト用防黴剤としても使用されており、同国から、基準の緩和とともに、食品添加物の指定を求められました。その後のパブコメ意見で、わたしたちは、原案に反対しましたが(2012年9月のパブコメ、記事t25104参照)、受け入れられませんでした。
2013年3月に、食品添加物・防カビ剤に指定され、使用基準は、かんきつ類(みかんを除く)に限り、0.010mg/kgで、これに応じて、柑橘類の残留基準は5倍緩和され、10ppmとなりました。(現在の残留基準)
【毒性など】食品安全委員会は、ADIを 0.18 mg/kg 体重/日と設定しています。その結果、TMDI(理論最大一日摂取量)の対ADI比は、幼小児で75.2%であり、安全目安の80%に近く、ホウレンソウ、その他野菜、タマネギなどからの寄与率が高く、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナなど子供が好む果実がこれにつづいています。
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作成:2018-09-30