環境汚染にもどる
n00802#JR九州の線路除草剤ドリフトで農作物被害〜形骸化する農薬危害防止運動#18-11
農水省・環境省・厚労省による農薬危害防止運動は、概ね6月から8月の3ヶ月が全国で実施されましたが、福岡県では、農薬安全使用運動として、実施要綱が発表されていました。
ところが、運動期間中の8月上旬に、JR九州が、福岡県内の鹿児島線沿線で、線路除草のために散布した除草剤で、沿線農作物に被害が発生したとの報道がなされました(新聞記事情報の頁参照)。
類似の線路除草剤による農作物の被害は、いままでにもおこっており、わたしたちも、
以下のように、機関誌「てんとう虫情報」でとりあげてきました。
2004年:JR東日本、線路の除草剤散布で農作物に被害
JR東日本、こんどは水郡線沿線で線路除草剤による農作物被害
2012年:線路用地にまくのは、農薬取締法対象外〜滋賀県 近江鉄道沿線で、除草剤による農作物被害
このような事故の防止のため、今回の農薬危被害の背景を明確にしておくことも重要
と考え、福岡県の農政部署、JR九州、被害を受けたJAみなみ筑後に問い合わせを出しました。現在、JR九州からは回答はなく、JAは、JRと話し合い中というこどで、文書回答はもらえませんでした。
下記に、県農林水産部食の安全・地産地消課からの回答を示します。
危害防止運動は、形骸化しており、実施要綱は、JRには周知されていなかった疑いを強く感じました。
**** 10月5日の問い合わせと10月19日の福岡県からの回答
【1】今回の鹿児島本線の沿線周辺での農作物等の被害について、
被害発生は、8月に入って発覚したと認識しています。下記について、教えてください。
(1-1)被害発生と思われるJR九州が除草剤散布した日時以後、被害報告、原因追求、農薬分析、
JR九州散布の除草剤が原因とわかるまでの経緯など、経過を日時を追って、教えてください。
(答)8月20〜23日 地元JAは、2戸の農家から大豆の葉に障害が発生しているとの報告を受け、現地を確認。
8月29日 地元JAは、除草剤の影響も考えられたことから、農薬分析機関に依頼。
9月10日 分析機関に依頼した水稲の植物体(玄米ではない)から、散布された除草剤成分が検出。大豆では不検出。
(1-2)農薬危被害事故を起こしたJR九州からは、本件について、いつ、どのような説明が貴県にありましたか。
また、事故判明後、貴県は同社に対して、どのような調査や指導をされましたか。日時を追ってお示しください。
(答)JR九州からは説明は受けておりません。なお、発生状況等の詳細については、現在調査中です。
(1-3)JR九州が、貴県内で、今夏、除草剤を散布した路線はどこですか。
当該路線ごとに散布日時(散布時刻もお願いします)とその時の気象条件(降雨状況や風速)、線路キロ数を教えてください。
そのうち、作物被害を受けた路線周辺の駅名や地名、線路キロ数、できれば、地図で範囲をお示しください。
また、被害範囲の長さは、線路でどのくらいのキロ数で、線路からどのくらいの距離の間ですか。
(答)=(1-2)と同じ。
<コメント>被害を受けたのは、福岡県みやま市にあるJAみなみ筑後管内の農家で、鹿児島本線瀬高駅近郊の圃場だということです。
(1-4)JR九州は、どのような線路除草剤を使用し、誰が、どのような方法で散布していましたか。路線毎に教えてください。
除草剤については、登録農薬の場合は、成分と登録番号を、無登録農薬の場合は成分と製剤名を教えてください。
製剤ごとの希釈倍率や総使用量はどのようでしたか。
周辺への飛散防止対策として、どのような手法がとられていましたか。にも触れてください。
(答)使用された除草剤は、「ダブルクラッチ液剤」及び「アーセナル」
・ダブルクラッチ液剤 登録番号:22552、成分:グリホサートカリウム塩+MDBA カリウム塩
・アーセナル 登録番号:16699、成分:イマザピル 使用方法など詳細については、現在調査中。
<コメント>グリホサートは商品名「ラウンドアップ」として知られており、MDBAは別名ジカンバ。
JR九州は深夜に、レールを走る作業車を用いて散布していました。
(1-5)貴県において被害を与えた除草剤、被害を受けた農作物の種類と被害状況(収穫が減少した作物、
販売できなかった作物別にお願いします)、被害面積はどのような規模であったか、地域ごとに教えてください。
また、有機JAS規格のある農作物や無農薬栽培を行っている農家の今後の栽培に影響はでていませんか。
出た場合は、どう対処されますか。
被害場所/被害作物の種類/被害件数又は数量/被害面積を一覧もお示しくだされば幸いです。
(答)使用された除草剤は、(1-4)の回答のとおりです。
有機JAS農作物や無農薬栽培などへの影響については、JAや生産者からの報告は受けておりません。
(1-6)JR九州の線路除草剤散布により、周辺住民の健康被害の報告や環境・生態系への影響の報告がありますか。
(答)特に報告は受けておりません。
(1-7)JR九州は、上記散布に際し、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」第二条(表示事項の遵守)
及び第九条 (帳簿の記載)を遵守していましたか。
(答)=(1-2)と同じ
(1-8)各沿線の除草剤散布地域と線路周辺の土地使用状況(住宅、道路、水田、畑、山林など)、及び
被害を受けた地域を図で、お示しの上、農薬飛散の恐れのある周辺農地及び住宅地域へ、散布周知がなされて
いたかを教えてください。
散布地域周辺の水田や畑、その他栽培植物に除草剤が浮遊・飛散し、薬害を生ずることは充分予測されます。
また、散布地域周辺の民家や道路へも、除草剤が浮遊・飛散し、人の健康に影響を与える恐れがあり、
農水省・環境省は通知「住宅地等における農薬散布について」で、できるだけ、農薬を散布しないよう、
万一散布する場合は、周辺に周知するよう指導されています。
JR九州は、除草剤散布にあたり、周辺農家や散布地域周辺の住民や通行人・通行車輌にどのような周知を
していましたか。もし、配布文書があれば、お示しください。
(答)=(1-2)と同じ
(1-9)貴県は、今回除草剤被害を受けた農作物中の農薬の残留分析を実施されたり、散布路線周辺の環境調査をされ
ましたか。されておれば、作物又は検体のの種類/採取月日/採取場所/検体数/分析対象農薬/検出数/検出範囲
/検出限界を一覧でお示しください。
(答)県は、残留農薬分析は実施しておりません。また、線路周辺の環境調査は実施しておりません。
(1-10)本件で、貴県は、事後に、JR九州になにかアクションをとられましたか。
また、再発防止のため、JR九州に対策を求められていますか。具体的な内容を教えてください。
(答)調査結果を踏まえ、JR九州への対応を検討します。
【2】農薬危害防止運動との関連について
今回の農作物被害は、貴県の平成30年度農薬安全使用運動のさなかにおこりました。実施要領で
『 散布時における近隣作物や住宅地等周辺への飛散防止の徹底』を掲げて指導をされていることからも、
貴県の指導責任も問われることと存知ます。
(2-1)当該運動の通知は、JR九州及び他の鉄道会社宛にいつ、とのような発信をされていますか。
貴課以外の他部署からへの通知発信も含めて、教えてください。
(答)JR九州及び他の鉄道会社への通知は行っておりません。
(2-2)JR九州や他の鉄道会社が、線路除草剤を散布する場合について、飛散被害防止のために、
貴県は具体的にどのような指導をされていますか。文書があれば、お示しください。
(答)(答)JR九州及び他の鉄道会社への指導は、これまで行っておりません。
<コメント>国交省は 平成16年9月13日、各地方運輸局鉄道部長あてに、国鉄施第59号を発出ていました。
(2-3)貴県は、農薬指導士認定事業として、農薬使用者の研修及び試験を実施しておられますが、
JR九州や他の鉄道会社の関係者が研修や試験を受けたのは、いままでに、何人くらいですか。
(答)農薬指導士の研修や試験に参加された方の中に、JR九州や他の鉄道会社の関係者が
含まれるかどうかは、把握しておりません。
【3】その他
(3-1)作物被害が発生した原因について
(3-1-1)前年までの除草剤散布で、今回のような大規模な被害報道はありませんでしたが、
今年の散布で、前年と異なる点をお調べのうえ、教えてください。
(答)=(1-2)と同じ
(3-1-2)今年発生した除草剤事故原因はどのようにお考えですか。
下のようなケースについて、教えてください。
また、その他に、原因として検討されている点がありましたら、お聞かせください。
(a)葉に付着することにより植物枯死した。
(b)散布後の降雨により、水田に成分が流入して、枯死にいたった。
(c)散布者が濃度等の調合や散布量を誤った。
(d)散布圧が高すぎたり、飛散防止用のノズルを使用しなかったため、遠方
にドリフトした。
(答)=(1-2)と同じ
(3-2)被害を受けた生産農家への補償についてどうお考えですか。
(答)生産農家及びJAとJR九州がよく話し合いいただきたいと考えおります。
(3-3)再発防止のための対策等をお聞かせください。
(3-3-1)今回の事故で、貴県はJR九州や他の鉄道会社に対し、どのような調査や指導をされましたか。
(答)(1-2)及び(1-10)の回答のとおりです。
(3-3-2)今後の具体的対策をお示しください。
(答)(3-3-1)の回答のとおりです。
(3-3-3)鉄道除草で、出来る限り除草剤にたよらない方法をとられることを望みますが、
貴県はいかがお考えですか。
(答)農薬以外の方法も含めて総合的に検討して、選択することが望ましいと考えます。
作成:2018-11-30