食品汚染・残留農薬にもどる
n00904#厚労省の輸入食品監視調査結果2018年5月〜10月の残留農薬基準違反#18-12
【関連記事】記事n00604(2017年11月-2018年4月)
【参考サイト】厚労省:輸入食品監視業務の頁にある違反事例
食品中の残留農薬等検査結果(国産・輸入別、食品別の残留データあり)
2016年概要。2015年概要(詳細)、2014年概要(詳細)、2013年概要(詳細)
記事n00604に続き、厚労省管轄の検疫所での輸入食品検疫検査で、残留農薬が基準を超えて検出された事例について、2018年5月〜10月の半年分をまとめました。
なお、本調査はあくまで、日本の残留基準に適合するかどうかを判定した結果であって、残留していても、基準が高い場合は、違反とはなりません。残留分析結果そのものを公表している機関は少ないですが、東京都健康安全研究センター調査が参考になります(記事n00104など>。厚労省は上記のように、自治体等の調査を年度ごとにのまとめた報告をしています。
また、一律基準の多くは0.01ppmですので、これより低い残留値は、違反になりませんが、ADIが低い農薬では、フィプロニルのように残留基準が0.005ppmとなっているものもあります。
★違反件数は60件
残留基準又は一律基準違反数は前の半期より15件増加し、60件(うち、食品添加物使用基準違反3件、一律基準0.01ppm違反は36件)で、月平均10件でした。多かった月は、7月14件、6月13件、8月11件でした。
この半年間に、17カ国、25品目の輸入食品(冷凍や加工食品も含む)から20種の農薬の食品衛生法違反がありました。
違反を摘発した検疫機関は12で、そのうち、横浜検疫所が一番多く17件、神戸が11件、東京と福岡が6件でした。違反が判明したのは命令検査が26、モニタリング検査が22、自主検査が12件ありました。下表に、食品別、生産国別、農薬別の件数を違反の多い順に示します。
【食品別の違反】
表(a)の食品別違反で、ワースト1位はカカオ豆で前半期2件増の18件、2位は、タマネギが4件増の6件でした。
カカオ豆は、2,4−Dが12件の違反で一番多く、ついでクロルピリホス3件、フェンバレレート2件、シペルメトリン1件あり、生産国ではガーナが増え10件、ベネズエラとエクアドルが、それぞれ5件と3件でした。
2位は中国産タマネギのチアメトキサム6件、3位も中国産で、アサリのプロメトリン5件の違反でした。前者は一時期減っていたのですが、また、復活の兆しでしょうか。後者の違反も増加しています。4位はイラン産のピスタチオナッツ4件でイミダクロプリドの違反でした。
【生産国別の違反】
表(b)の生産国別違反では、中国産が前半期の2.5倍の25件でワースト1位、チアメトキサム違反が10件と目立ちます。前述のタマネギのほか、ショウガも多いです。ハロキシホップ違反は、冷凍野菜(菜の花、エダマメ、オクラ、ブロッコリー、ピーマン)やソバに違反がみられました。
2位のガーナは、前半期にくらべ4件増え、ベネズエラは3件減りましたが、いずれもカカオ豆の違反でした。エクアドルの3件もカカオ豆です。
イランの4件は前述のようにピスタチオナッツで、前半期より1件増えましたが、インド産の香辛料での違反は減りました。
そのほか、1件づづの違反でしたが、ケニアとコロンビア産コーヒー豆にはそれぞれ2,4−Dとクロルピリホス、チリ、アルゼンチンと南アフリカの柑橘類には食品添加物・防黴剤のイマザリル、フィリピン産のバナナにはフィプロニル、オーストラア産ソラマメには日本では登録のないフルキンコナゾールの基準超えがありました。
【農薬別の違反】
表(c)の農薬別違反件数では、ワーストワンは前の半期から5件減少したものの2,4−Dの13件(カカオ豆12件で0.02-6.5ppm、コーヒー豆1件で0.02ppm)でした。ついで、チアメトキサムが7件増えた9件(すべて中国産で0.02-0.19ppm、うちタマネギ7件)、クロルピリホスが4件増えた6件(0.02-0.19ppm、うちガーナ産カカオ豆3件)でした。さらに、いずれも5件のプロメトリン(中国産アサリ:0.02-0.11ppm)とハロキシホップ(中国産野菜類0.02-0.07ppm)がつづきました。
防黴剤イマザリルの違反は3件(0.0054-0.0066g/kg)でした。また、検出値が大きかったのは、ガーナ産カカオ豆の2,4−D6.5ppm、中国産シソのチアクロプリド2ppm、ペルー産の乾燥紫トウモロコシのメタミドホス1.6ppmでした。
フィリピン産のバナナにフィプロニルが残留基準0.005ppmを超え0.006pmm検出されたケースは、ANAフーズ(株)が輸入したもので、その後、ヒロインターナショナル、丸紅、富士フルーツが輸入したものにも最大0.010ppmの違反がみつかり、一部、国内での流通が確認されています。厚労省は、11月28日に、フィリピン産バナナの全ロットの検査命令をだしました。
【違反の原因と措置】
食品の違反原因については、34件に記載がありませんでした。原因として一番多いのがドリフト6件、土壌に残留していた農薬由来が4件がありました。藁や乾燥防止用の雑草からの汚染、機器故障による散布過多。収穫期の散布なども散見されました。
違反食品の措置では、全量保管し、廃棄・積み戻しを指示したケースが38件、積戻し11件、廃棄7件などでした。一部消費済み、残余廃棄の2件は、アメリカ産ラズベリーのエトキサゾール違反とチリ産レモンのイマザリル違反でした。
表 2018年5月〜18年10月の内容別違反件数 ( )は前の半期の違反数
(a)食品別 (b)生産国別 (c)農薬別
カカオ豆 18(16) 中国 25(10) 2,4-D 13(18)
タマネギ 6(2) ガーナ 10(6) チアメトキサム 9(2)
アサリ 5(3) ベネズエラ 5(8) クロルピリホス 6(2)
ピスタチオナッツ4(3) イラン 4(3) プロメトリン 5(3)
トウガラシ 3(5) エクアドル 3(1) ハロキシホップ 5(1)
ショウガ 3(0) ペルー 2(2) イミダクロプリド 4(4)
コーヒー豆 2(1) インド 1(3) イマザリル 3(0)
レモン 2(0) フェンバレレート 2(1)
その他17作物 各1 その他10国 各1 メタミドホス 2(0)
トリアゾホス 1(2)
プロピコナゾール 1(2)
その他9 農薬 各1
作成:2018-12-30