残留農薬・食品汚染にもどる
n01102#東京都健康安全研究センターの2016年度農作物残留農薬調査報告(2)輸入農作物中の残留農薬 (その1)野菜、豆類、穀類など#19-02
【関連記事】記事n01002(2016年度国産品)、記事t31804(2015年度輸入野菜など)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 68号(2017)
輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成28年度−野菜類及びその他−)
東京都健康安全研究センターが実施した2016年4月から17年3月にかけての輸入農作物(都内入手)の残留農薬調査結果を、センター年報68号から紹介します。今号は野菜及びその他(豆類、穀類、キノコ類)についてです。
残留分析の対象となった作物は39種193検体で、分析農薬は代謝分解物を含め有機リン系92、カーバメート系26、有機塩素系39、ピレスロイド系16、ネオニコチノイド系その他の含窒素系ほか123、合計296成分でした。
★残留農薬検出率は40%
その結果,22種77検体から、45種の農薬(有機リン系5種,有機塩素系6種,カルバメート系3,ピレスロイド系5種,含窒素系及びその他の農薬26種)が検出率40%でTr(10ppb未満)〜450ppb検出されました。
野菜等に検出された農薬の種類別の検出状況は表1のようでした。
表2には野菜類と穀類で、何らかの農薬が検出されたものを産地別に示しました。食品衛生法違反だったのは、一律基準を超えた、ベルギー産チコリのメタラキシル20ppbだけでした。
表1 野菜類等の分析対象となった農薬の種類別の検出状況
(出典:長谷川 恵美ほか 東京都健康安全研究センター年報68巻p-195,2017)
農薬の種類 分析対象 検出された 検出範囲 検出された 延べ
農薬数 農薬の種類 ppb 作物の種類 検出数
有機リン系農薬 92 5 Tr〜80 5 9
最大残留値はタイ産オクラのオメトエート
有機塩素系農薬 39 6 Tr〜200 3 11
最大残留値は中国産サヤエンドウのイプロジオン
カーバメート系農薬 26 3 20〜70 5 9
最大残留値はタイ産サヤインゲンのメソミル
ピレスロイド系農薬 16 5 Tr〜40 6 9
最大残留値はフィリピン産オクラのペルメトリン
ネオニコチノイド系農薬* 10 8 Tr〜230 15 64
*代謝物を含む 最大残留値は韓国産パブリカのジノテフラン
その他の含窒素系農薬ほか112 18 Tr〜450 15 39
最大残留値は韓国産パプリカのボスカリド
【野菜】野菜27品種173検体が調査され、18種73検体から、検出率42%で、45農薬()が(殺虫剤24,殺菌剤20,共力剤1)がTr〜450ppb(韓国産パプリカのボスカリド)検出されました。
5検体以上検出された農薬は、殺虫剤では、アセタミプリド(4作物6検体),クロチアニジン(3作物5検体),ジノテフラン(3作物5検体),イミダクロプリド(10作物30検体)、チアメトキサム(8作物13検体),殺菌剤では、アゾキシストロビン(6作物7検体)、ボスカリド(4作物5検体)で、ネオニコチノイド系がめだちました。
作物別では、パブリカが、さながら、農薬のオンパレードで。18検体のうち、67%の12に表2のような農薬が残留していました。ネオニコチノイド系殺虫剤6種類のほか、有機塩素系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤や殺菌剤も5種見出されています。
5検体以上から農薬が検出され,同じ検体における農薬の検出率が50%以上であったものは,オクラ(12検体中12で100%),カボチャ(12検体8で67%),サヤインゲン(5検体中5で100%)でした。オクラでは、有機リン系殺虫剤オメトエートやピレスロイド系殺虫剤2種、ネオニコチノイド系殺虫剤4種や殺菌剤アゾキシストロビンが見出されました。
カボチャでは、ピレスロイド系殺虫剤ビフェントリンや殺菌剤5種、ネオニコチノイド系殺虫剤4種が検出され、例年どおり、メキシコ産のものが目立ちましたが、ニュージーランド産は殺菌剤テブコナゾールが1検体のみみつかりました。サヤインゲンでは、オマーン産とタイ産から、有機リン系殺虫剤2種,有機塩素系殺菌剤イプロジオン、カーバメート系殺虫剤メソミルやネオニコチノイド系イミダクロプリド、殺菌剤アゾキシストロビンが検出されました。
ほかにも、報告書では、中国産のショウガから,ネオニコチノイド系チアメトキサムが一律基準値と同値で、検出されているため、今後、注目するとされています。
【豆類、キノコ、穀類】豆類4種類のうち、ササゲと緑豆から複数農薬がみつかりましたが、後者はミャンマー産で、有機リン3種が検出されました。
2種のキノコ類はすべて不検出。穀類では6種のうち、麦芽とキノアから、2農薬と共力剤ピペロニルブオキシドが検出されました。
【複合残留状況】表では、検出数/検体数=1/1の記載の作物に複数の農薬名があるのは、すべて、複合汚染であることがわかりますが、その他については複合残留状況ははっきりしません。
報告では、1検体中に2種以上の農薬が検出されたケースは、73検体中35(48%)ありました。その内訳は、下記のようです。
・7農薬検出:韓国産パプリカ1検体,
・6農薬検出:韓国産パプリカ1検体、台湾産サヤエンドウ1検体
・4農薬検出;アメリカ産セロリ1検体、メキシコ産カボチャ1検体
・2〜3農薬検出;30検体
作物別では、パブリカが顕著で、農薬が検出された12検体の半数は複合残留でした。特に、韓国産には6農薬、7農薬検出されたものが1検体づづありました。
表2 野菜類ほかの分析結果 (検出値単位:ppb)
作物名のあとの( )は検体数、 *:残留基準超え
作物名 生産国 検出数 農薬名と最大検出値
/検体数
【野菜】 アスパラガス(13), カリフラワー(1)、ソラマメ(1)、菜の花(2)、ニンジン(4),
レンコン(2)、ベビーコーン(7)、コーン(2)、エシャロット(1)は検出限界以下
赤チコリ アメリカ 3/ 6 イミダクロプリド:30
アメリカ 2/ 6 ボスカリド:10
アメリカ 2/ 6 チアメトキサム:20
エダマメ 台湾 1/ 1 アセタミプリド:20、アゾキシストロビン:Tr、シハロトリン:Tr 同時検出0
オクラ タイ 3/ 5 イミダクロプリド:30
2/ 5 アセタミプリド:40
1/ 5 オメトエート:80
オクラ 中国 1/ 2 イミダクロプリド:60
1/ 2 アセタミプリド:50
2/ 2 チアメトキサム:10
オクラ フィリピン 4/ 5 イミダクロプリド:60
1/ 5 アゾキシストロビン:30
1/ 5 シフルトリン:10
1/ 5 オメトエート:Tr
1/ 5 ペルメトリン:40
1/ 5 ジノテフラン:50
カボチャ メキシコ 1/ 7 アセタミプリド:Tr
1/ 7 アゾキシベンゼン:Tr
1/ 7 ビフェントリン:Tr
1/ 7 ボスカリド:Tr
1/ 7 ジノテフラン:Tr
6/ 7 イミダクロプリド:50
1/ 7 メタラキシル:20
3/ 7 ミクロブタニル:20
1/ 7 チアメトキサム:10
カボチャ ニュージーランド1/ 4 テブコナゾール:Tr
ゴボウ 中国 2/ 6 p,p'-DDE:Tr
コマツナ 中国 1/ 1 イミダクロプリド:Tr
サトイモ 中国 2/ 9 チアメトキサム:10
2/ 9 イミダクロプリド:Tr
サヤインゲン オマーン 1/ 1 アゾキシストロビン:30、イプロジオン:40同時検出
サヤインゲン タイ 1/ 4 オメトエート:Tr
1/ 4 ジメトエート:40
1/ 4 イミダクロプリド:Tr
3/ 4 メソミル:70
サヤエンドウ 中国 1/ 3 イプロジオン:200
1/ 3 TPN:80
1/ 3 トリアジメノール:Tr
1/ 3 トリフルミゾール:Tr
サヤエンドウ 台湾 1/ 1 イプロジオン:10、ジフェノコナゾール:10、プロクロラズ:Tr、
ピリメタニル:20、テブコナゾール:10同時検出
ショウガ 中国 2/21 イミダクロプリド:30
1/21 テブコナゾール:30
2/21 チアメトキサム:10
セロリ アメリカ 1/ 1 アセタミプリド:Tr、ペルメトリン:Tr。ボスカリド:Tr、メトキシフェノジド:20同時検出
タマネギ 中国 1/ 6 チアメトキサム:Tr
1/ 6 プロシミドン:Tr
チコリ ベルギー 1/ 4 イプロジオン:Tr
1/ 4 *メタラキシル:20
トマト アメリカ 1/ 1 クロルフェナピル:100、ピペロニルブトキシド:90同時検出
ネギ ベルギー 1/ 1 テブコナゾ−ル:10
ネギ 中国 1/ 3 アゾキシストロビン:Tr
2/ 3 クロチアニジン:Tr
1/ 3 エンドスルファンサルフェート:50
1/ 3 チアクロプリドアミド:40
ネギ ニュージーランド 1/ 1 クロルピリホス:10、フェンアミドン:10同時検出
パプリカ オランダ 4/ 8 インドキサカルブ:20
1/ 8 ピリダリル:90
パプリカ ニュージーランド 2/ 3 イミダクロプリド:60
1/ 3 メタラキシル:50
パプリカ 韓国 2/ 6 アゾキシストロビン:Tr
1/ 6 ボスカリド:450
2/ 6 クロルフェナピル:140
2/ 6 クロチアニジン:20
3/ 6 ジノテフラン:230
3/ 6 フロニカミド:30
1/ 6 イミダクロプリド:110
1/ 6 クレソキシム-メチル:160
1/ 6 ピリダリル:70
1/ 6 テトラコナゾール:10
1/ 6 チアクロプリド:60
1/ 6 チアメトキサム:90
ブロッコリー エクアドル 2/ 4 シハロトリン:Tr
1/ 4 チアメトキサム:Tr
ブロッコリー アメリカ 1/ 7 シプロジニル:10
1/ 7 フルジオキソニル:10
1/ 7 ピラクロストロビン:20
1/ 7 チアメトキサム:Tr
ホウレンソウ 中国 1/ 3 クロチアニジン:Tr
1/ 3 シハロトリン:30
1/ 3 シペルメトリン:20
3/ 3 イミダクロプリド:30
【豆類】 ひよこ豆(1)、えんどう豆(2)は検出限界以下
ササゲ アメリカ 1/ 1 イミダクロプリド:Tr、メトキシフェノジド:50同時検出
緑豆 ミャンマー 1/ 1 クロルピリホス:Tr、アセフェート:Tr、メタミドホス50同時検出
【穀類】 キビ(1),ハトムギ(1),ヒエ(1)、アマランス(1) は検出限界以下
キノア ペルー 1/ 1 クロルピリホス:Tr
バクガ イギリス 1/ 1 シプロジニル:Tr
1/ 1 ピペロニルブトキシド:40
【キノコ】 エリンギ(1) , シイタケ(4)は検出限界以下
作成:2019-02-28