環境汚染にもどる

n01105#2017年のミツバチの農薬被害状況33件があきらかに〜原因農薬はすべて不明#19-02
【関連記事】記事n01101記事n00401)
【参考サイト】農水省:2017年度農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況にあるミツバチ被害詳細

 記事n01101で紹介した農水省の2017年の農薬事故被害事例で、  ミツバチ被害状況33件が報告されました。同年の被害は、昨年7月に、都道府県別の被害件数と対策情報が公表されただけで(北海道がトップで13件、ついで、栃木4、秋田3件でした(記事n00401)、発生時期も被害状況も記載がありませんでした。今回の報告で、これらが、明らかになったわけです。その結果を表にしめしました。
 ふたつの報告を重ねあわせられないのが残念ですが、ともかく、わかることは、ミツバチ巣箱の被害数が、被害巣箱数で70箱以上だったのは9件(このうち70箱が5月中旬と8月下旬の各1件)、1箱あたりの被害頭数が1万以上だったのは6件あり、何十万頭の蜂が失われたところもありました。
 被害原因の農薬はいずれも特定されておらず、周辺ほ場とか周辺農地等で農薬散布がされていたとかかれているのが19個所、水田・水稲・カメムシ農薬使用と思われる個所9あったほか、下記のような記載もみられました。
 ・8月上旬@の被害
   周辺では水稲(開花期〜穂揃期)、大豆(生育期)が栽培されていた/被害発生時期には
   水稲のカメムシ防除が行われていた。
 ・8月中旬@の被害
   周辺の農作物栽培状況:水稲(開花期)、トウモロコシ(生育期)、ブロッコリー(定植前後)/
   農薬の散布状況:斑点米カメムシ類の空中散布 については、昨年から巣箱設置の2km圏内で防除は未実施。 

 ・8月中旬Aの被害
   羽化したばかりの蜂が飛べずに這い出す状況が続き、 働き蜂の数が減り続けている/
   周辺では水稲(登熟期〜収穫期)、野菜(生育 期〜収穫期)が栽培されていた/
   周辺では水稲、野菜ともに個人防除を実施。 
 ミツバチ被害防止対策としては、昨年までの農水省の対策(農薬使用者と養蜂家の間の情報共有/農薬散布地域からの巣箱の退避/巣門の閉鎖/粒剤を使用)の域をでるものはありませんでした。ただ、養蜂者への農薬散布情報の提供に関するするものが多くみられ、JAや空散業者⇒養蜂組合や養蜂家ルートの強化が求められています。

 これに対して、養蜂業者の団体である一般社団法人日本養蜂協会の動きを紹介しておきます。
 本年度に「農薬による蜜蜂への影響調査事業」を計画し、応募の結果、金沢大学山田敏郎名誉教授*へ依頼がなされたとのことです。
 また、同協会では、会員から、『農薬散布されたところの蜂の被害が一向に減らない』『農薬散布時に蜜蜂を移動させても、ドリフトが原因で被害にあう人がいる』『、中山間地は山の際まで田んぼがあるので、逃げるところがない 』『農薬の空中散布について、散布日が決まっていても雇われ散布者の不適切な使用により被害にあう』『農水省は、退避する場所を確保しやすいように、都道府県等に対して文書を出してほしい』などの意見もでています。
 *山田敏郎さんの論文;Influence of dinotefuran and clothianidin on a bee colony    臨床環境21:10〜23,2012
表 2017年の時期別ミツバチ被害状況 (被害数/箱は、1巣箱あたりの被害頭数)

   発生時期  被害箱数  被害数/箱  発生時期  被害箱数  被害数/箱  発生時期  被害箱数  被害数/箱

    5月中旬     2 (#)    1000        8月上旬    20 (5)   10000        8月中旬@   7 (1)     2000 
    5月中旬    70 (4)    2000        8月中旬    50 (#)   15000        8月中旬     8 (#)     1000
    5月中旬     2 (#)    5000        8月中旬    50 (#)    3000        8月中旬A 54 (30)    1000
    5月下旬     7 (3)    6000        8月中旬     7 (#)    1000        8月下旬    70 (28)   10000
    6月下旬     2 (#)    1000        8月中旬     5 (#)    1000        8月下旬    60 (18)   10000
    7月中旬    36 (5)    1000        8月中旬    16 (#)     300        8月下旬    25 (25)     500
    7月下旬     9 (1)   1000-5000    8月中旬    10 (#)    1000        9月上旬     8 (4)     200-1000 
    7月下旬    19 (1)    1100        8月中旬     4 (2)    1000        9月上旬     1 (#)     1000
    8月上旬@   2 (#)     200        8月中旬   54 (32)  20000        9月上旬    30 (#)      500
    8月上旬    50 (5)   10000        8月中旬    44 (15)   7000        9月下旬    50 (15)    5000
    8月上旬    16 (#)    3000        8月中旬    30 (8)  1000-2000     9月下旬    47 (#)     1000
  *( )は最大規模の被害がでた巣箱数で、#はすべての巣箱が同等被害であることを示す。

作成:2019-02-28