食品汚染・残留農薬にもどる
n01203#栃木県のイチゴ生産で、3度目の残留基準違反〜プロチオホスほか検出#19-03
【関連記事】記事t18803、記事t28304
【参考サイト】栃木県;県産いちごの残留農薬検査結果について、点検結果
JAしもつけ:Top Pageとお知らせとお詫び
全農とちぎ:Top Page、いちご残留農薬超過事案を受けたJAグループ栃木の取り組みについて(1/28のお知らせ報告)
茨城県産ホウレンソウのMEP残留基準違反(記事n00902)につづき、1月24日、栃木県産のイチゴで、プロチオホス3ppm(基準値0.3ppm)とフルフェノクスロン0.7ppm(基準値0.5ppm)の残留基準違反がみつかり、回収命令がだされました。
JAしもつけが出荷した「とちおとめ」という品種で、1月15日の収去検査の結果判明したものです。
同県では、2007年に、JAかみつが出荷のイチゴにホスチアゼートが残留基準を超えて
みつかり、調査した結果、粒剤を水に溶かして潅水施用するなど、ホスチアゼート剤の
適用違反がみられました。この時、当グループは、農協ぐるみと思われる違反の是正を
求めたことがあります(記事t18803)。また、2015年には、「道の駅にのみや」で収去されたイチゴのホスチアゼート残留基準違反が明らかになり、出荷先のJAはが野に回収命令を出されています(記事t28304)。
首都圏向けのイチゴ特産地として、栃木県はイチゴ生産に力をいれていますが、度重なる農薬取締法違反や食品衛生法違反は、いままでの対応策が十分でなかったためと思われ、早速、県の担当部署に問い合わせました。その結果をまとめたものを以下に示します。
★残留基準超えのイチゴは適用違反
収去検査は、15検体について実施され、そのうち1検体から、上記の残留基準違反のイチゴが見つかりました。当該生産者は1名で。ハウスでの慣行栽培が行われいました。
プロチオホス(アリスタライフサイエンス製トクチオン乳剤は、1000倍に希釈で、収穫75日前まに使用すべきところ、800倍希釈で収穫2日前に散布、フルフェノクスロン(BASFアグロ製カスケード乳剤(収穫前日まで使用可)は、4000倍とされている希釈倍率を誤ったそうです。いずれも、当該生産者は、農薬使用履歴を記載しており、農薬管理指導士の認定を受けていないが、イチゴ部会の講習会に参加していたとのことです。このような、違反使用をしたことについて、本人は『ハダニ被害拡大の焦りから、ラベル等をよく確認せず使用したため』ということでした。
JAしもつけに出荷した問題のイチゴ数量は1063kg、回収量は125kg、消費量は不明であるものの、消費者から、健康被害の訴え等はなかっとということです。
★残留基準違反の再発防止〜残るは罰則適用
栃木県は、1月24日〜1月31日に、JAグループ1661戸、個別出荷者203戸、合計1864戸の農薬使用状況を調査しました。農薬使用履歴について栽培履歴が正しく記載されているか否かのの問には、答えず、使用時期で2戸、使用回数で3戸の指導があったとのことです。この違反者のイチゴ各1検体の残留農薬調査では、基準超えはなかったそうです。
また、2015年以後、同県では、イチゴに限らず、農薬の不適切な使用事例、残留基準違反事例はないと答えています。
これらを踏まえ、再発防止のための対策として、「農薬適正使用の指導の徹底」をあげていますが、その内実はわかりません。そこで、いくつか質問をしてみました。
【講習会や研修会について】
農薬適正使用に係る研修会の開催、農薬使用履歴記帳の現地指指導をメディアや資料配付による広報等で実施してきたとのことで、一例として、県の指導配布資料が示されました。不適正使用は懲役や罰則が科せられるというのに、実態が指導のみでは、いくら徹底するといっても、効果が上がらないように見受けられます。過去の事例を含め、イチゴ3件の事例では、「健康被害の訴えがないこと、また、いずれの事案も県の指導に従って、迅速に対応した」ため、県は、指導にとどめたとのことです。
イチゴ栽培者や団体についての研修会や講習会での指導の実態については、『出荷組織ごとに研修会や講習会を開催しており、具体的な参加者数などは把握していません。』
はたして、全員参加しているのかをただしても、『講習会、研修会は栽培時期に合わせて実施しており、全員参加するよう呼びかけています。』との答えでした。
また、県が指定する農薬管理指導士は、2019年1月末現在、998名であり、JA営農指導員等の農薬管理指導士はいちご生産者に対して農薬の適正使用を指導しているというものの、指導回数は把握していないそうです。
【GAPや減農薬栽培について】
GAP(農業生産工程管理)については、栃木県の規範には農薬の使用や農薬による環境負荷の低減対策があり、適正な農薬使用が求められているものの、減農薬というわけでありません。イチゴについては、1経営団体があるが、イチゴの生産量は不明。また、天敵農薬の使用、炭酸ガスによる防除など化学農薬に頼らないIPMの取組を推進しているが、減農薬栽培、有機栽培の生産者及び生産量については把握していません、とのことでした。
栃木県知事は 1月29日の記者会見で、『私が就任してから、農薬の不正使用については3回目になります。鹿沼、そして芳賀郡ですか真岡、今回の壬生ということになりまして、時間がたつと忘れてしまうということなんだというのをあらためて感じました。-中略-事例を挙げて、過去にこういうことがあったということを伝えて注意喚起をしていくことが重要だと思いますので、今後はそのような対応をしてまいりたいと思います』と、発言しています。
生産する側のJA全農栃木県本部も『すべてのイチゴ生産者に対して、農薬使用基準の順守を再度、徹底します。すべてのイチゴ生産者の「とちぎGAPの第三者確認」の取得に向けた、検討をすすめます。』と述べています。
このようなやり方では、4度目の防止が出来ると思えません。農薬取締法違反を軽くみないで、みずから、罰則を受けるよう司法当局に届出てもらいたいものです。
作成:2019-03-30