農薬の毒性・健康被害にもどる

n01301#2019年度農薬危害防止運動実施要綱〜除草剤使用項目が追加、無人航空機は大幅削除#19-04
【関連記事】記事n00101(2018年度防止運動通知)、記事n00302(2017年度無人航空機事故)、記事n00401(2017年度ミツバチ被害)、記事n01101(2017年度農薬事故)、
【参考サイト】農水省;「2019年度 農薬危害防止運動」の実施について通知全文と実施要綱ポスター

 農水省、厚労省、環境省の3局長による本年度の「農薬危害防止運動の実施について」の通知は、4月23日にを公表されました。前文につづく、「実施要綱は」例年通りの内容が多いですが、何個所か、追加・改定されていました。以下に、前年との主な違いを紹介します。

★実施要綱の構成がかわっても、内容のマンネリ化はかわらず
、  前年までの項目に、第5 運動のテーマ及び重点指導項目 が新設されました。
  『今般の改正農薬取締法では、「農薬使用者は、農薬の使用に当たっ
  ては、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように
  努める( 一部抜粋) 」ことが新たに規定されたところであり、国や都
  道府県においても、必要な知識の普及、農薬の使用に関する情報提供
  等に努め、農薬使用者の自発的な知識・理解の向上や農薬の適正使用
  を図っていく必要がある』
 と、なっていますが、これは新農取法で、新設された第二十七条(農薬の使用に関する理解等)を踏まえたものです。  このあとに、本年度は新たに運動のテーマ「農薬を知る。理解する。適正に使う。」を設けることとする。として、下記4項目が挙がっています。
  @ 土壌くん蒸剤を使用した後の適切な管理の徹底
  A 住宅地等で農薬を使用する際の周辺への配慮の徹底
  B 誤飲を防ぐため、農薬の容器の移し替えについて注意喚起
  C 農薬ラベルによる使用基準の確認の徹底

 あれ、事故が多発している無人航空機による空中散布の項がないなと首をかしげましたが、さらに、第六 実施事項をみると、昨年12月に改定農薬取締法が施行され、農薬使用者や環境生物の被害防止策が強化されるのではとの期待は、見事裏切られ、例年と変わらぬどころか、次節のように無人航空機空中散布のように、後退した項目もありました。

★無人航空機空中散布の指導が消えた
 実施要綱の第六のトップにある 1 は、「農薬及びその取扱いに関する正しい知識の普及啓発及び運動の総括」ですが、2-(1)農薬使用時の事故防止対策の周知をみると、「ア 農薬使用に当たっての防護装備着用の徹底」から、「ウ 土壌くん蒸剤の使用に当たっての安全確保の徹底」、「エ 住宅地等における農薬使用に当たっての必要な措置の徹底」までは、前年と全く同じ記述です。この項に対応する事例には、2017年6月の土壌くん蒸剤クロルピクリンの使用で蒸散した刺激性ガスが近隣住民に7人に被害を与えた例は、とりあげられていませんし、前年通知にあった加須市の小学校での授業中の児童らの被曝事故(記事t31402)がみられるだけです。  さらに、「オ 航空防除における農薬散布に当たっての留意事項の遵守の徹底」については、前年にあった「自動操縦」についての記述も含め、無人航空機の事故防止の具体的対策すらも削除されています(削除内容は囲み記事1参照)。農水省は、内閣府の規制改革推進会議の意向に沿い、現行の無人航空機技術指導指針を廃止し、新たなガイドラインを作成するとしていますが(記事n01104参照)、まだ、出来ていないので、なんの指導もできませんでは、済まされません。無人航空機事故を減らそうという意図はないのか、無人航空機空中散布は、一層の無法地帯となっていいのかと、言いたくなります。私たちは、農薬対策室に、実施要綱についての緊急質問を送りました。

5月9日:ドローン空中散布の新ガイドラインパブコメ開始〜6月7日締切。  概要安全ガイドライン(案)で、7月1日から実施が目指されています。
 なお、2018年度の空中散布状況も明らかになっています(全国実施状況都道府県別有人ヘリ都道府県別無人航空機)。


★無登録の非農薬系除草剤の植栽地での使用禁止はあたりまえのことだが
 第六の「3 農薬の適正使用等についての指導等」では、残留基準超えの防止に関して、適用外作物への散布がなされないよう、作物名や作物群についての指導が追加された以外は、前年度の内容が踏襲されました。
 「4 農薬の適正販売についての指導等」では、昨年の沖縄県での除草剤等の違法な使用(記事n00803参照)が念頭にあったためか、「(6)農薬として使用できない除草剤の販売に対する指導」が新たに追加されました。  この項の冒頭には、『農薬取締法に基づく登録を受けていない農薬を農作物等の病害虫又は雑草の防除のために使用することは禁止されており、農薬に該当しない除草剤を農作物等の栽培・管理に使用することはできない。』とありますが、これは、15年以上も前の2003年農取法にある条文にありながら、無視され続けてきたことの表れであり、この間、わたしたちが、植栽以外で使用される除草剤も、農取法に準じて、取締るよう求め続けてきたのに、何も応えてこなかったことを覆い隠すものです。なにしろ、農取法の第二条(定義)に「除草剤」という語句が入ったのは昨年の改定がはじめてで、それまでは、「その他の薬剤」となっていたのです。
 要綱は、行政担当部署の販売者に対する指導にかかわるもので、以下のように記述されています。
 『農薬に該当しない除草剤の容器・包装や販売所における「非農耕地専用」という表示が、
  当該除草剤の購入者に、農耕地でなければ使用できる( 例:公園、緑地等であれば植栽管理に
  用いることができる)との誤解を与える事例が確認されている。このため、農薬に該当しない
  除草剤の販売に当たっては、国から関係者に対し、特に、以下の事項 について周知していることに留意すること。』
 として、下記項目が、関連通知とともに、あげられています。
  『ア 容器又は包装に、農薬として使用することができない旨を表示すること。
  イ 販売所ごとに、公衆の見やすい場所にも、農薬として使用することができない旨
    を表示すること。
  ウ 農薬と誤解して購入されないよう、商品の陳列に十分注意すること。
  エ 農耕地以外の場所であっても、農作物等の栽培・管理に使用することができない旨の
    周知に努めること。
  オ インターネットで販売する場合には、対面での説明ができないことに鑑み、販売サイトにおいて
    農薬として使用できない旨を記載するなど、分かりやすい情報提供に努めること。』 
  実施要綱がでる一ヶ月前3月28日に、除草剤販売業者や関係団体に対し、農水省、厚労省、経済産業省、環境省の担当部署課長名で通知「農薬として使用することができない除草剤の販売等について」が、発出されています。
 この通知のあて先は、囲み記事2のような農薬販売者と関係団体であって、線路除草で、作物被害を与えた鉄道事業者のような使用者あてになっていません。
 2003年2月に発出されていた同類通知「非農耕地専用と称する除草剤の販売等について」は「非農耕地」という表記が誤解を与えるとして、改廃されたのですが、新通知には。
 【誤解を与えやすい表示の例】として、『こちらの商品は、非農耕地専用の除草剤です。農耕地には使用できません。』ではダメだとか
 ・レジや売り場で、農薬に該当しない除草剤を農作物や樹木・芝・花き等の植物の栽 培・管理に使用しないよう購入者に説明。などが、求められいます。

 しかし、なによりも問題なのは、通知は、無登録の非農薬系除草剤を植物栽培(食用作物だけでなく、観賞用の目的で栽培している庭園樹、盆栽、花卉、公園の植栽、街路樹、ゴルフ場の芝のほか、山林樹木)を挙げ、使用者に当該個所に使用出来ないことを説明するように、販売者に求めているにすぎません。すなはち、植栽地に使用されないよう販売しなさいという指導であって、身の回りで、登録除草剤や無登録の非農薬系除草剤を使うなという趣旨ではありません。たとえば、毒劇物指定がなく、化審法規制もないグリホサート系除草剤は、製造・販売は規制がなされていないのです。それどころか、無登録の非農薬系除草剤は農薬でないから、通知「住宅地等における農薬使用について」の対象外だと主張し、行政指導を否定する使用者もいます。

★グリホサート系除草剤は、販売上の注意だけでなく、使用規制が必要
 グリホサートを成分とする登録農薬は4月1日現在、107件製剤(うち複合剤は45あり、2008年以後の登録が35件)あります。このほかに、なんの法規制もない無登録の非農薬系除草剤があるわけです。グリホサート系農薬の出荷状況は記事n01303示してあります。わたしたちは、グリホサート系の除草剤の販売・使用規制を求めていますが(直近では、農薬危害防止運動などについての要望と質問 の【意見3】)、小樽・子どもの環境を考える親の会では、昨年11月から、ネット署名「グリホサート製品とネオニコチノイド系農薬製品の 販売を中止してください」を展開しています。囲み記事3を参照してください。

★ミツバチ被害の防止対策は1項目ふえたが
 第六の「5 有用生物や水質への影響低減のための関係者の連携」では、蜜蜂被害に関する対策がほとんどで、改定農取法にある「生活環境動植物」の条項がまだ、明確でないためか、いままでどおりの「水産動植物」が被害防止の対象になっているにすぎませんし、蜜蜂対策の指導に追加されたのは、巣門閉鎖に関することだけです。
また、別記1「農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項」、別記2「農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策」、別記3「毒劇物たる農薬の適正販売強化対策」も前年どおりで、このところ眼につくメソミルによる野鳥やペットの毒殺の事例()の記述がありません(記事n01204参照)。

 なお、わたしたちは、農水省が通知を発出する前に、2019年度農薬危害防止運動などについての要望と質問を送付していますが、回答については、次号以降で紹介します。

*** 囲み記事1:実施要綱から消えた無人航空機空中散布の指導事項 *** 

  さらに、下記通知等を遵守徹底すること。
 有人ヘリコプター:
 ・「農林水産航空事業の実施について」( 平成13年10月25日付け13生産第4543号
                         農林水産事務次官依命通知)
 ・「農林水産航空事業実施ガイドライン」( 平成16年4月20日付け16消安第484号
                       農林水産省消費・安全局長通知)
 無人航空機:
 ・「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」( 平成27年12月3日付け2
   7消安第4545号農林水産省消費・安全局長通知。以下「指導指針」という。)
 ・「空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可
 ・承認の取扱いについて」( 平成27年12月3日付け国空航第734号国空機第1007号・
       27消安第4546号国土交通省航空局長、農林水産省消費・安全局長通知)

  特に無人航空機を用いて農薬を散布する場合は、安全かつ適正な農薬散布の実施の
  ため、以下の事項に留意すること。
  @ 架線等の危険箇所の把握、オペレーター及びナビゲーターの配置、飛行経路の
   選定並びに自動操縦の可否等について、実施計画策定時において十分に検討すること。
  A 散布ほ場及びその周辺の地図を作成し、オペレーターとナビゲーターが連携して
   散布ほ場の下見を行うことにより、危険箇所及び飛行経路を明確に地図に示すなど、
   事前確認を強化・徹底すること。
  B 散布中は散布区域内及び周辺に人が立ち入らないように常に注意すること。また、
   風速が3 m / 秒を超える場合には、農薬散布を実施しないことを徹底するとともに、
   超えない場合であっても、風向きを考慮した散布を行うよう努めること。
  C 特に機体の軽い小型の無人航空機( いわゆるドローン等)は、飛行させるための
   下降気流が小さく、風の影響を受けやすいため、これを利用して農薬散布を実施する
   場合には、風向きを十分考慮した散布を行うよう努めること。
  D 自動操縦による空中散布については、設定した飛行経路による空中散布が安全かつ
   適正に実施できない周辺環境の変化があった場合には、飛行経路の再設定や遠隔操作への
   切替え等の安全対策を速やかに講ずること。
  E 万が一、事故等が発生した場合には、農林水産省に事故発生の情報を報告するなど、
   指導指針に基づき適切に対応すること。その際、人の死傷、第三者の物件の損傷等の
   特に重大な事故が発生した場合には、直ちに地方航空局保安部運用課にも事故の情報を
   報告すること。
*** 囲み記事2: 通知「農薬として使用することができない除草剤の販売等について」より *** 

 3月28日の通知にあるあて先は以下です
  株式会社大創産業代表取締役社長
  株式会社セリア代表取締役社長
  株式会社キャンドゥ代表取締役社長
  株式会社ワッツ代表取締役
  全国農業協同組合連合会肥料農薬部長 ※1
  全国農業協同組合中央会会長
  全国農薬協同組合理事長
  一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会会長
  日本チェーンストア協会会長
  全国商店街振興組合連合会理事長
  一般社団法人日本化学工業協会会長
  一般社団法人日本化学品輸出入協会会長
  全国化学工業薬品団体連合会会長
  日本チェーンドラッグストア協会会長
  一般社団法人全国スーパーマーケット協会会長
*** 囲み記事3: 小樽・子どもの環境を考える親の会のHPブログより ***

 change.orgの署名サイト:グリホサート製品とネオニコチノイド系農薬製品の 販売を中止してください!

 要望書提出:ネオニコチノイド系農薬とグリホサート商品販売中止を求める(2018/09/22)と回答(2018/11/15)

作成:2019-04-30、更新;2019-05-10