残留農薬・食品汚染にもどる
n01302#東京都健康安全研究センターの2016年度農作物残留農薬調査報告(4)輸入農作物中の残留農薬 (その3)イチゴ、ベリー類#19-04
【関連記事】記事n01002(2016年度国産品)、記事n01102(2016年度輸入野菜類など)、記事n01202(2016年度輸入柑橘類)、記事t31904(2015年度輸入イチゴなど)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 68号(2017)
輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成28年度−果実類)
東京都健康安全研究センターの年報68号から輸入果実類の残留農薬について、本号では、4種類29検体のイチゴ・ベリー類の検出状況を紹介します。296種の農薬が分析対象になりましたが、表2に示したように、23検体から27種の農薬が見出され、検出率は79%、総検出検体数は135あり、痕跡(10ppb未満)〜1000ppb(アメリカ産ブルーベリーのイプロジオン)が検出されました。農薬の種類別内訳は、表1のようで、残留基準や一律基準を超えたものはありませんでした。
表1 検出された農薬の種類別数
有機リン系殺虫剤 3種 含窒素系及びその他の殺菌剤 10種
ピレスロイド系殺虫剤 4種 含窒素系及びその他の除草剤 2種
含窒素系及びその他の殺虫剤 5種 有機塩素系農薬 3種
★アメリカ産のイチゴ・ベリー類は残留がいっぱい
ポーランド産ブラックベリー、トルコ産及びチリ産のイチゴ以外の検体から何らかの農薬が検出され、作物種類別では、ブルーベリー13検体(検出率100%)、ラズベリー5検体(71%)、イチゴ5検体(63%)でした。
農薬別の検出数を多い順にみると、シプロジニル、フルジオキソニル、ボスカリドが各14検体、マラチオンが12検体、イミダクロプリドとキャプタンが10検体でした。
シプロジニルは、最大検出値が300ppb(検出率70%のアメリカ産のブル−ベリー)でした。
フルジオキソニルは 最大検出値が420ppb(セルビア産のラズベリー)で、アメリカ産ブルーベリーの検出率は80%でした。
ボスカリドは、最大検出値が770ppb(検出率70%のアメリカ産のブルーベリー)で、同国産のラズベリーでも370ppbと高値でした。
有機リン剤のマラチオンは、最大検出値が140ppb(カナダ産のラズベリー)で、アメリカ産のブルーベリーの検出率は70%でした。
ネオニコチノイド系のイミダクロプリドは、最大検出値が200ppb(検出率60%のアメリカ産のブルーベリー)でした。
塩素系のキャプタンは、最大検出値が840ppb(検出率60%のアメリカ産のブルーベリー)でした。
このほか、有機リン系では、クロルピリホス,ホスメット(PMP)が検出され、ネオニコチノイド系では、フロニカミド,チアメトキサムがいずれもアメリカ産のイチゴから,アセタミプリド,クロチアニジンはいずれもアメリカ産のブルーベリーから検出されました。
ピレスロイド系では、シペルメトリンがアメリカ産ブルーベリー7作物及びラズベリー1作物の計検体(28%)から痕跡〜240ppb検出されたほか、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパトリンが残留していました。
【複合汚染】複数の農薬が検出されて目立つのは、多くは1検体しか分析されていませんが、アメリカ産イチゴが12種の農薬、カナダ産ラズベリーが8農薬、セルビア産ラズベリーが6農薬、カナダ産ブルーベリーが6又は5農薬、チリ産ブルーベリーが5農薬と、酷い複合汚染です。検体数が10と多いアメリカ産ブルーベリーには、18種の農薬が検出されており、延べ検出数は76ですから、4農薬以上の複合残留であることは、確実です。
このような、農薬カクテルを口にしていて大丈夫かと心配になります。
研究者は『農薬の複数残留も多く見られ,最大12種類検出された事例もあった.近年,欧州において複数の農薬の残留について注目されている.これまでは個々の農薬規制を対象としていることから,特定の農薬の基準値超過を避けるため複数の農薬が使われる事例も想定されている.そのため,現在,複数農薬に対する累積暴露の影響を評価するための方法論についてとりまとめており,規制状況の変更も想定される14).このような状況も踏まえ,現在実施しているように幅広い農薬を対象とした監視に努めていく必要がある』としています。
表2 輸入イチゴとベリー類における農薬の検出状況
作物名 生産国 検出数 最大値 検出率
/検体数 農薬名 ppb %
イチゴ 中国 1 / 4 イプロジオン 20 25
1 / 4 ピリメタニル Tr 25
2 / 4 プロシミドン 10 50
イチゴ ポーランド 1 / 1 クロルピリホス Tr
1 / 1 シプロジニル 10
1 / 1 フルジオキソニル Tr
1 / 1 ペンディメタリン Tr
イチゴ アメリカ 1 / 1 アゾキシストロビン 40
1 / 1 キノキシフェン Tr
1 / 1 キャプタン 60
1 / 1 シプロジニル 30
1 / 1 チアメトキサム 20
1 / 1 テトラコナゾール Tr
1 / 1 トリフルミゾール Tr
1 / 1 ピリメタニル 110
1 / 1 フルジオキソニル 10
1 / 1 フロニカミド 40
1 / 1 ボスカリド Tr
1 / 1 マラチオン 40
ブルーベリー カナダ 2 / 2 イミダクロプリド tr 100
2 / 2 キャプタン 60 100
2 / 2 シプロジニル 20 100
2 / 2 ビフェントリン 50 100
1 / 2 フルジオキソニル 20 50
2 / 2 ボスカリド 120 100
2 / 2 マラチオン 20 100
ブルーベリー チリ 1 / 1 PMP 190
1 / 1 イミダクロプリド 20
1 / 1 キャプタン 40
1 / 1 シプロジニル 20
1 / 1 フルジオキソニル Tr
ブルーベリー アメリカ 2 /10 PMP 60 20
1 /10 TPN 10 10
1 /10 アセタミプリド 30 10
5 /10 アゾキシストロビン 270 50
5 /10 イプロジオン 1000 50
6 /10 イミダクロプリド 200 60
6 /10 キャプタン 840 60
1 /10 クロチアニジン 10 10
3 /10 ジクロベニル Tr 30
7 /10 シプロジニル 300 70
7 /10 シペルメトリン 240 70
2 /10 ビフェントリン 290 20
4 /10 ピラクロストロビン 120 40
1 /10 フェンバレレート Tr 10
3 /10 フェンプロパトリン 470 30
8 /10 フルジオキソニル 50 80
7 /10 ボスカリド 770 70
7 /10 マラチオン 40 70
ラズベリー アメリカ 1 / 2 シペルメトリン 20 50
2 / 2 ピラクロストロビン 50 100
2 / 2 ボスカリド 370 100
1 / 2 マラチオン Tr 50
1 / 2 ミクロブタニル 40 50
ラズベリー カナダ 1 / 1 イプロジオン 30
1 / 1 イミダクロプリド 10
1 / 1 シプロジニル 10
1 / 1 ビフェントリン 50
1 / 1 ピラクロストロビン 30
1 / 1 フルジオキソニル 10
1 / 1 ボスカリド 170
1 / 1 マラチオン 140
ラズベリー セルビア 1 / 1 アゾキシストロビン 60
1 / 1 シプロジニル 290
1 / 1 フルジオキソニル 420
1 / 1 ピラクロストロビン Tr
1 / 1 ピリメタニル 10
1 / 1 ボスカリド 60
ラズベリー チリ 1 / 3 プロシミドン Tr 33.3
作成:2019-04-30