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n01303#2017年度の農薬種類別出荷量〜依然として、ネオニコチノイドの4倍超えの有機リン剤がいまだ使われる#19-04
【関連記事】記事n00304(2016年までの農薬別出荷量推移)
【参考サイト】環境リスク研究センター:化学物質・農薬データベース
       環境省:PRTRインフォメーション広場にある平成29年度届出外排出量推計結果のうち
              殺虫剤に係る需要分野別・対象化学物質別の排出量推計結果農薬に係る排出量推計結果


★有機リンやネオニコは微減傾向
 環境リスク研究センターの化学物質・農薬データベースは、2月にリニュアルされ、いままでと、表示形態はかわりましたが、化学物質名から検索すると、暴露の項に、従来どおりの全国及びと都道府県別成分出荷量を知ることが出来ます。
 4月になって、データベースが更新され、2017年度の成分別出荷量が追加されました。
 本号では、農薬別の出荷量がどのようになっているかを、主に神経毒性のある代表的な農薬について報告します。

 左図は、有機リン23種、有機カーバメート殺虫剤13種、
 ピレスロイド15種、ネオニコチノイド7種、
 IGR(昆虫成長制御剤)12種について、各成分合計出荷量の
 2011-16年の推移です。
 有機リンの減少傾向はつづいていますが、いままで、減少していたカーバメートは2017年には増加しています。ピレスロイドは漸減しており、ネオニコとIGRの出荷量が頭打ち傾向にあります。

 2017年度の出荷量等は、原体成分別に上位にある農薬を下記の表にまとめました。
 原体輸出があるものは輸出量を示しました。農薬成分のうち、化管法(PRTR法)に指定されているものは、農薬以外の用途(家庭用、防疫用、不快害虫用、シロアリ用など)に使用されているものの排出推計量を示しました。
 空欄になっている個所は、輸出がなかったり、化管法の指定物質でないため統計がないものです。出荷量には、国産原体だけでなく、輸入原体も使用されている農薬もあります。
    表 主な農薬成分のの2017年度の原体出荷量と輸出量
     (単位:トン。出典:出荷量は農薬DB、輸出量は農薬要覧2017。( )は2016年度。)
      * 化管法の指定物質で、農薬用途以外の殺虫剤(家庭用、防疫用、不快害虫用、シロアリ防除用)
      # EUでは使用されていないが、日本で登録されている農薬

        成分名         農薬出荷量         農薬原体輸出量    化管法指定の殺虫剤*
    有機リン系
     DDVP         日本でもEUでも農薬登録失効           49.502(66.145)
     DMTP#          115.44 (114.24)
     MEP#           366.36 (379.124)   649.1 (1037.4)  18.584(17.434)
     MPP#         -0.011 ( 10.218)             6.506(7.014)
     ダイアジノン#       339.57 (329.954)                0.230(0.264)
     アセフェート#       278.04 (274.937)
     マラチオン          105.63 (103.25 )
     23成分合計        1797.64 (1873.933)
    ネオニコチノイド系
     アセタミプリド       50.268 (57.064)     546.1 (402.0)
     イミダクロプリド#    64.318 (61.241)
     クロチアニジン#      75.907 (78.234)     199.0 (375.7)
     ジノテフラン#       156.84 (156.804)     244.5 (202.6)
     チアクロプリド       14.385 (13.679)
     チアメトキサム#      48.355 (47.876)
     7成分合計           416.324 (420.637)
    カーバメート系殺虫剤
     BPMC#            35.13 (29.576)       45.0 ( 34.0)   5.156 (23.004)
     NAC#             49.79 (49.15)                  11.359 (12.198)
     ベンフラカルブ#      36.05 (40.327)      545.0 (200.7)
     メソミル            98.529 ( 19.789)
       8成分合計        310.495 (223.237)
    ピレスロイド系
     エトフェンプロックス 76.747 (80.506)     303.4 (268.8)   3.272 (3.774)
     シペルメトリン#      11.55  (12.972)
     シラフルオフェン#    20.385 (19.267)
     テトラメトリン(フタルスリン)農薬は登録失効         34.506 (30.413) 
     フェンバレレート#     7.92 ( 8.6)        6.6 ( 6.4)
     ペルメトリン#       12.86 (13.237)                 5.888(8.564)
     15成分合計         149.043 (155.278)
    IGR系
     テブフェノジド       9.447 ( 9.9)         44.6 ( 41.6)
     ブプロフェジン      60.065 (60.079)      544.4 (356.5))
     12成分合計        94.518 (94.919)
    フェニルピラゾール系
     フィプロニル#      15.449 (17.629)                 3.272(2.924)
     エチプロール#      35.069 (34.093)
    グリホサート系4成分5667.29 (5440.589)
    クロルピクリン#   6526.2 (6507.43)

★国内出荷第一位は有機リンMEP〜輸出量が前年から390トン減少したが
 神経毒性が問題となる有機リン23種の合計出荷量は、前年から約75トン減少、うちプロチオホスが75.3→50.0トンに、トルクロホンが94.5→75.6トン、クロルピリホスが85.2→69.4トンに減りました。MPPは前年10トンがマイナス値になっているので、間もなく登録失効する気配です。
 MEP(フェニトロチオン)は379→366トンとわずかな減少にとどまったものの、329トン→339トンに増えたダイアジノンに一位の座に肉迫されました。歓迎すべきは、1000トンを超えていたMEPの輸出量が390トン減少し、649トンとなったことです。でも、有機リンの雄住友化学の稼ぎ頭である状況はかわりません。

 ダイアジノン、アセフェート、DMTP(メチダチオン)、マラチオンは前年とあまり変わらぬ、微増です。有機リンの総出荷量は、1800トン弱で、第二位のネオニコチノイドの4.3倍程度となっています。
 化管法統計で調べると、これらの中で、家庭で使用される農薬として多いのは、アセフェート58.6トンとMEP63.7トンでした。
 このほか、農薬以外の、家庭用殺虫剤などの使用が多いのは、DDVP49.5トンとMPP6.5トンです。前者は、すでに農薬登録が失効していますが、ゴキブリ駆除などの防疫用殺虫剤に使われています。

★頭打ちのネオニコチノイドは国内416トンだが、輸出は990トン
【参考サイト】有機農業ニュースクリップ:Top Page とネオニコ系農薬出荷量が減少傾向(2018.04.12 No.910)
       食品安全委員会情報:EU、ブプロフェジンの適用作物を非食用作物のみに制限

 ネオニコは、この10年余り、出荷量が頭打ちになったものの、7成分合わせて年間420トン出荷されています。また、日本で原体が生産されているアセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフランの3成分の合計輸出量は、990トンあります。海外で、ミツバチ被害を起こすだけでなく、ネオニコ耐性のある水稲害虫が日本のやってくることになります。
 EUでは、2013年から、使用規制が実施されていたイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3成分が、ミツバチへの影響が明確になり、2018年末に、加盟国全域で、屋外使用について全面禁止となっていますが、日本では、あらたなネオニコ(フルピラジフロン、スルホキサフロル、トリフルメゾピリム)の登録や既存のネオニコの適用拡大(それも残留基準の緩和を伴った)がつづいています。さらに、農薬用途だけでなく、家庭用殺虫剤やシロアリ防除剤としての身の回りでの使用量は、明確ではありません。わたしたちは、化管法の指定物質するよう求めていますが、所管省は重い腰をあげないままです。
 有機カーバメートはそれまで、減少していましたが、2017年に8成分で310.4トンに増えました。これは、メソミルが 19.8→98.5トンとなった影響が大きいです。
 ピレスロイド系は減少傾向、IGR系殺虫剤は頭打ち傾向にあり、前者は15成分で年間149.0、後者は12成分95トン前後で推移しています。神経毒性や魚毒性があるピレスの中で使用量が多いのは三井化学が開発したエトフェンプロックスで、年間76.7トンと輸出用303.4トンが生産されています。また、農薬失効したテトラメトリン(フタルスリ)が34.5トンが家庭用殺虫剤として出荷されています。
 IGRでは、日本農薬が製造している殺虫剤ブプロフェジンの出荷量が年間 60トンに加え、輸出はその9倍近くの544.4トンですが、EUでは、2017年に食用作物への適用登録が失効しています。ブプロフェジンが残留した作物から、調理・加工時の加熱により有害なアニリンが発生することが懸念されたからです。
 フェニルピラゾール系の2種は、水稲育苗箱に使われ赤トンボの減少の原因となるフィプロニル前年微減で15.4トン、カメムシ駆除の空中散布などで、ミツバチに被害を与えエチプロールは前年微増で35.0トンでした。  その他、住民の中毒が一番多い土壌くん蒸剤クロルピクリンは、相変わらず6500トン台です。さらに、IRACの発がん性ランク2Aのたグリホサート(記事t28401)は農薬としてだけでなく、空き地、駐車場、運動施設、道路、鉄道などでも使われていますが、非農耕地用には、登録が不要で。出荷量が不明なだけでなく、周辺への周知もなく、散布されています(記事n01301参照)。

 なお、再評価制度にかける農薬の優先度については、現在、検討中で、農薬の再評価の頁で公表されており、優先度基準をもとに、5つに区分された農薬リストが一覧できます。すでに、再評価されたEU諸国では、表2に#印をつけたように、有機リン剤やネオニコチノイド、クロルピクリンほかが使われなくなっています(日本で登録があるが、EUでは使用できない農薬は記事t31601参照)。
 一方、そんな悠長な行政の動きにたいして、小樽・子どもの環境を考える親の会は、グリホサートやネオニコ使用禁止のネット署名を展開しています。
作成:2019-04-30