残留農薬・食品汚染にもどる

n01402#東京都健康安全研究センターの2016年度農作物残留農薬調査報告(5)輸入農作物中の残留農薬 (その4)熱帯果実、その他の果実#19-05
【関連記事】記事n01002(2016年度国産品)、記事n01102(2016年度輸入野菜類など)、記事n01202(2016年度輸入柑橘類)、記事n01302(イチゴ、ベリー類)、記事n00104(2015年度輸入熱帯果実ほか)
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報の頁 68号(2017)
        輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成28年度−果実類)

 東京都健康安全研究センターの年報68号から輸入果実類の残留農薬について、本号では、熱帯果実その他の果実11種82検体の検出状況を紹介します。296種の農薬が分析対象になりましたが、下表2、3に示したように、38検体から47種の農薬が見出され、検出率は46%、延べ検出数は126あり、痕跡(10ppb未満)〜430ppb(ベトナム産のライチでシペルメトリン)が検出されました。
 果実における農薬の種類別内訳は、柑橘類イチゴ、ベリー類と今号の熱帯果実ほかを合わせて、表1のようで、残留基準や一律基準を超えたものはありませんでした。
 表1  検出された農薬の種類別数
   有機リン系殺虫剤      10種   含窒素系及びその他の殺虫剤    8種  
      カ−バメート系殺虫剤    2種     含窒素系及びその他の殺菌剤  24種
   ピレスロイド系殺虫剤     7種   含窒素系及びその他の除草剤    3種
     有機塩素系農薬            5種    * 果実類20種157検体中、18種107検体に検出
★検出数が多いのは、クロルピリホス12検体、イミダクロプリド9検体
 全果をみると、一番検出数が多かったのは、有機リン剤のクロルピリホスで12検体(うちバナナ9、最大残留値はベトナム産ライチ260ppb)、ついで、ネオニコチノイド系のイミダクロプリド9検体(うちメロン4、最大残留値は中国産ライチ30ppb)、ピレスロイド系ビフェントリン7検体(すべてバナナで、最大残留値はフィリピン産20ppb)、殺菌剤のアゾキシストロビン6検体(うちマンゴー4、最大残留値フィリピン産バナナで320ppb)と殺虫剤ボスカリドが6検体(うちブドウ5、最大残留値チリ産130ppb)、フェンプロパトリン5検体(うちメロン2、最大残留値中国産ライチで160ppb)でした。
 バナナ,マンゴー及びパパイヤ、メロンでは、表中の()で示したように、果肉からイミダクロプリド、チアメトキサム、TBZなどが検出されたケースもありました。

★熱帯果実では、バナナの検出率100%、ベトナム産ライチには14農薬複合残留
 表2の熱帯果実では、バナナが、エクアドル産とフィリピン産各5検体すべてに、農薬が検出され.中でも,クロルピリホスは9検体で、最大30ppbでした。ビフェントリンも両国産7検体から最大20ppb、ほかに、アゾキシストロビン*,ボスカリド,イマザリル*,TBZ*も残留しており、うち、*印は、果肉にも移行していました。
 マンゴーは、18作物中8作物(44%)から、8種類の農薬が痕跡〜190ppb検出されました。このうち、ベトナム産の冷凍マンゴー果肉でアセフェートが、タイ産では全果でフィプロニルが10ppb検出されました。前者では、アセフェートの使用履歴がなく、近接地域からの飛散によると考えられました。後者では、可食部である果肉からは検出されず、フィプロニルが摂取された可能性は低いとされています。
 ライチはベトナム産1と中国産2検体が分析されましたが、ベトナム産にはペルメトリン430ppbとジフェノコナゾール270ppb、クロルピリホス260ppbのほか全部で14種の農薬が複合残留しており、中国産には、シペルメトリンとフェンプロパトリンが同一検体に160ppb検出されたほか、他の農薬の残留が確認されています。
                      
    表2 熱帯果実中の残留農薬検出状況                   表3 その他の果実中の残留農薬検出状況
           ()は果肉、その他は全果の残留値
作物名  産地       検出数    農薬名          最大値  検出率     作物名   産地       検出数   農薬名            最大値  検出率
            /検体数                    ppb   %                       /検体数                     ppb   %
バナナ   エクアドル  1(1)/5(5)   TBZ          30(Tr)   20        キウイ   ニュージーランド1/ 1    イプロジオン            40
                     1(1)/5(5)   イマザリル        90(Tr)   20        キウイ   その他の国      0/15    全農薬(除イプロジオン)  ND
                       4 / 5     クロルピリホス      10       80        チェリー アメリカ        1/ 1    PMP                 140
                       4 / 5     ビフェントリン      Tr       80                         1/ 1    TPN                  30
バナナ   フィリピン  1(1)/5(5)   アゾキシストロビン  320(Tr)   20                     1/ 1    イミダクロプリド        20
                       5 / 5     クロルピリホス       30    100                        1/ 1    シハロトリン            Tr
                       3 / 5     ビフェントリン       20     60                     1/ 1    チアメトキサム     10
              1 / 5     ボスカリド           Tr     20                      1/ 1    テブコナゾール          30
パパイア アメリカ    1(1)/3(3)   イミダクロプリド     Tr(Tr)  33                     1/ 1    トリフロキシストロビン  40
                       1 / 3     ブプロフェジン       Tr     33                      1/ 1    フェンブコナゾール      Tr
マンゴー 台湾         (1)/ (1)  イプロジオン         Tr                                1/ 1    フェンプロパトリン      20
                      (1)/ (1)  イミダクロプリド     20                 ブドウ  アメリカ       1/ 2    イミダクロプリド        Tr     50
マンゴー タイ          1 / 1     アゾキシストロビン   70                               1/ 2    エトキサゾール          10     50
                       1 / 1     クロルピリホス       20                               1/ 2    キノキシフェン          Tr     50
                       1 / 1     フィプロニル         10                                1/ 2    クロチアニジン          40     50
                       1 / 1     プロクロラズ         20                                2/ 2    シプロジニル            30    100
                      1 / 1     プロクロラズ代謝物*  20                               1/ 2    ピラクロストロビン      30     50
マンゴー フィリピン    1 / 1     アゾキシストロビン  190                               1/ 2    フェンプロパトリン      70     50
マンゴー ベトナム     (2)/(3)    アセフェート           (10)   67                       1/ 2    ボスカリド             110     50
マンゴー ペルー       (1)/ (1)   TBZ                 (Tr)                            1/ 2    ミクロブタニル          Tr     50
マンゴー メキシコ      2 / 4     アゾキシストロビン   30       50        ブドウ    オーストラリア1/ 2    プロチオホス           120     50
                     1(1)/4(4)   イミダクロプリド     Tr(Tr)   25                      1/ 2    メトキシフェノジド      30     50
ライチ   中国          1 / 2     イミダクロプリド     30       50        ブドウ    チリ          1/ 4    アセタミプリド          Tr     25
                       1 / 2     オキサジキシル       Tr       50                          1/ 4    イプロジオン           100     25
                       1 / 2     クロルピリホス       30       50                          1/ 4    キノキシフェン          Tr     25
                       1 / 2     シハロトリン         10       50                         1/ 4    ジフェノコナゾール      Tr     25
                       2 / 2     シペルメトリン      160      100                         1/ 4    シプロジニル            Tr     25
                       1 / 2     トリアゾホス         10       50                         1/ 4    テトラコナゾール        Tr     25
                       1 / 2     ピラクロストロビン   20       50                        1/ 4    トリフルミゾール        Tr     25
                       1 / 2     フェンプロパトリン  160       50                          1/ 4    トリフロキシストロビン  Tr     25
                       1 / 2    プロクロラズ         Tr       50                        1/ 4    ピペロニルブトキシド    Tr     25
                       1 / 2     プロクロラズ代謝物*  30       50                         1/ 4    ピラクロストロビン      20     25
ライチ   ベトナム      1 / 1    PAP               20                                  1/ 4    ピリメタニル           150     25
                       1 / 1    アゾキシストロビン   60                                 4/ 4    ボスカリド             130    100
                       1 / 1    キナルホス           80                                   1/ 4    ミクロブタニル          Tr     25
                       1 / 1    クロルピリホス      260                 プルーン  トルコ         1/ 1    シペルメトリン          Tr
                       1 / 1    シハロトリン         30                 メロン    アメリカ    1(1)/3(3)  イミダクロプリド       Tr(Tr)  33                        1 / 1    ジフェノコナゾール  270                                      1(1)/3(3)  チアメトキサム         10(10)  33 
                       1 / 1    シペルメトリン      430                             1(1)/3(3)  メタラキシル           Tr(Tr)  33
                       1 / 1    トリシクラゾール     30                 メロン    メキシコ       1/ 5    アセタミプリド          10     20
                       1 / 1    フィプロニル         20                              3(3)/5(5)  イミダクロプリド       20(20)  60
                       1 / 1    プロピコナゾール     90                            1(1)/5(5)  チアメトキサム         Tr(Tr)  20
                       1 / 1    プロフェノホス       Tr                                2/ 5    フェンプロパトリン      20     40
                       1 / 1    ヘキサコナゾール     Tr                             1(1)/5(5)  ペルメトリン           Tr(10)  20
                       1 / 1    ペルメトリン         20                 リンゴ   ニュージーランド1/ 1    キャプタン              60
                       1 / 1    ミクロブタニル       Tr              * 2,4,6-トリクロロフェノール
★その他の果実〜アメリカ産チェリーには、9農薬が複合残留
 表3にはその他の果実の残留状況をしめしました。キウイがの検体数が16と多かったですが、ニュージーランド産の1検体にイプロジオンが検出された以外、残留農薬は、検出限界以下でした。
 アメリカ産チェリー(おうとう)は1検体しか分析されませんでしたが、シハロトリン,フェンプロパトリン,イミダクロプリド,PMP、チアメトキサム、TPN,フェンブコナゾール,テブコナゾール,トリフロキシストロビンの9種の農薬が痕跡〜150ppb検出されました。
 ブドウは、チリ産4検体、アメリカとオーストラリア産各2検体から6検体に19農薬が検出され(検出率75%)、8農薬が複合残留していたものものもありました。
 メロンでは,8検体中、5検体に5農薬が痕跡〜20ppb検出され、可食部に移行していた農薬は、イミダクロプリド、チアメトキサム、ペルメトリン、メタラキシルでした。
作成:2019-05-30